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「とうやさん!」
元気な声で名前を呼ばれた
聞き慣れた声
大好きな人の声
声がした方に振り返ると待っていた人が居た
・・・
今日は二人で会う約束をしている
なんてったってバレンタインデーだからね!!
普段より一つ多い荷物は、
サイズに合わない気持ちが詰まっている
・・・
「待ったすか?」
「いえ、今来たとこです」
よくある会話
今来たとか嘘すぎるんだけどね
早歩きで来たんだ
楽しみだったから
そんなこと口には出さないけど
「行きましょ?」と、先陣を切ったのは僕だった
「何か積極的っすね」
「気のせいですよ」
軽くあしらうが、図星だ
勇気を出して行動すると違う欲まで湧いてくる
「寒いですね」
まだ2月で肌寒い
「そうっすねえ」
あーやっぱり鈍感
分かってないなぁ
「、手繋ぎたいです」
「あれぇ、やっぱり積極的だ」
ニヤけてからかってくる
「いつもはツンツンしてるのに」
「いいじゃないですか、たまには」
「お??」
その反応は予想してなかった
お??って何
「今のうちにデレ剣持を拝んどいてくださいよ」
「自覚あったんすね」
不意に手を掴まれる
見上げると目があった
言ったことを思い出して恥ずかしくなる
それに気づいたのか、またニヤッと顔を歪めた
手を繋ぐ
冷たかった手が温かくなっていく
「とやさんの手冷たいっすね」
そんなことを言いながら手が動く
繋いでいた手をさらにお互いを感じるべく、
恋人繋ぎに変えた
指と指が絡み合ってなんだか恥ずかしい
誤魔化すように息を吐いた
・・・
「ただいまー!」
「お邪魔します」
何回目か分からないお邪魔しますが弾んでないか心配だ
「あっ、そういえば」
リビングまで上がると、
僕は思い出したかのように話しかける
「これ。僕からです」
「ハッピーバレンタイン」
平然を装い、小さな紙袋を渡した
「え?とーやさんが?!」
少し間をおいてから反応が返ってきた
心外だな
「要らないなら無理して受け取らなくてもいいですけど?」
そんなこと思ってないが言い返してしまう
「いや、ありがとなとやさん!!」
ありがとうで会話を強制終了させられたが、
受け取ってくれたのでホッとする
「ねぇ、とーやさん」
「へ、?!」
急に呼ばれて変な声を出してしまった
慌てて口を抑える
無意味なんですけどね
「とーやさんからキスしてくれませんか?」
ん?
は?
一瞬だけ何を言われたのか分からなかった
「いや、えっ?」
「いいじゃないっすか〜」
「せっかくなんで!」
せっかくって何だよ
これはほんとにしなきゃいけないパターンか?
「特別ですよ」
「やった~!」
まあ今日くらいはね。何せバレンタインだし
少し背伸びをするとガっくんの顔が正面に見える
きっと照れているのは隠せていないからもう諦めた
軽く唇を重ねる
充分頑張ったろ!!
「これでいいですっ…わっ?!」
急に身体が傾いて口が塞がる
ガクくんの頬から離した手首を取られて、
抵抗なんてできない
抵抗するなんて選択肢もない
徐々に自分の身体から力が抜けていくのを感じる
積極的な自分も明日には居なくなるんだろうから
今日ぐらい
完