どりみーを部屋まで送った後、書類を片手に総帥室の扉をノックした。当たり前のように返事が聞こえる前に扉を開けて、ズカズカと部屋の中に入っていくと、不機嫌そうならっだぁの溜息が聞こえた。
「ちょっとー?返事してないんですけど?」
「どりみーがヘンや」
「は?」
「どりみーがおかしい。やっぱりなんかあったんやろ、俺たちの知らんとこで…」
「落ち着いてよきょーさん」
少し呆れ気味な様子にムッと眉を顰めると、疲れた様子のらっだぁは額に手を当てて書類と睨めっこしていた。
それは、ちょうどさっきまでどりみーと話していた書類。
「はぁ…俺はその誰かさんのせいで休めてないんですけどね」
珍しく皮肉めいた言葉。らっだぁの普段と違う様子に俺の頭が警鐘を鳴らしていた。
何か、何かがおかしい。
らっだぁといい、どりみーといい、二人が多少の誤差はあれど同じように崩れ始めている。
「…らっだぁ、お前少し休め」
「え?」
「この辺のやつは俺とレウが分担してやる。こっちはおいよにでもやらせとけばええ」
「ぇ、いや……」
突然の命令に困惑したようすのらっだぁは両手を宙に彷徨わせたまま居心地の悪そうな顔で部屋を出ていこうとしたので、慌てて引き止める。
「な、なに?休むんだけど…」
「まあ待てって。特別ルームを用意したる」
「トクベツ……?」
書類を手に、らっだぁを従えてレウの部屋に突撃する。急な訪問に奇声を上げて怯えるレウの机に書類を載せた。
そうしてレウとらっだぁを従えてコンちゃんの部屋へ。また座ったまま眠っているコンちゃんをレウに背負わせて、今度はどりみーの部屋に向かった。
「…」
カチカチとクリックする音と、資料をめぐる音がする。
カチンとするっていうのは、まさに今湧いて出た感情の事を言うのだろう。
「おぉい、どーりーみぃー?」
「ァ…エト……」
いつもなら悪戯っ子のように笑って「ゴメンナサァイ」と謝るだろうに、今はちっとも俺と目が合わない。
「おっしゃ、行くぞ」
「エ、ワ…!ワッ…!?」
俵を担ぐようにどりみーを持ち上げて、みんなで中庭に向かう。
花壇に咲いた花が明るく上を向くのを見れば、沈んだ気持ちも少しはマシになるかもしれない。
「おら!」
光のドームを作って、その中に全員を転がす。きゃー!とか、わー!とか言いながらも芝生の上に寝転ぶと、らっだぁとどりみーは数分もしないうちにすやすやと眠り始めた。
コンちゃんは逆に目を覚ましたようで、現実と夢の境目でうとうとと気持ちよさそうに微睡んでいた。
「らっだぁ隈すごいけどなんかあったの?」
「ソレなんやけど…聞いてやレウさん。コレ、すっごい真面目な話」
「…聞くよ、なあに?」
小さく首を傾げたレウに俺は今考えている事を伝えた。
二人揃って様子がおかしい事。
最近見かけない顔の民が増えた事。
入国審査員に掛け合ってみても曖昧な返事しか返ってこない事。
「それは…十中八九スパイか何かが入り込んでるね。みどりくんの現状を知った敵対国家が仕掛けてきてるのかも…」
「はぁぁあっ…やっぱそうか……対策せんとなぁ〜。らっだぁの様子も見とかんと…」
「そうだね…じゃあ、みどりくんは俺に任せて。バッチリ休ませるから」
きょーさんはらっだぁをお願いね、と言われて強く頷く。
敵は内側にいる。どうにかしてそれを引っ張り出さない事には二人の状態が回復しなさそうだ。
「ったく、なぁんでコイツら揃って“頼る”の二文字が浮かんでこないんやろうなぁ?」
「きょーさんもそうじゃない?」
「それ言ったらレウさんもやろ」
「コンちゃんもそうだね…」
レウさんと同時に吹き出して、クスクスと肩を揺らした。
「「俺達って似たもの同士!」」
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コメント
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可哀想なんだけど……その可哀想が最高に可愛くてッ!!!!!!もうやばいですほんと…最高ですありがとうございます💓💓