コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【世一視点】
閉じた瞼越しに光を感じて目を覚ます。だが、いつもは横から感じる日本人からすると少し高めの温もりが感じられない。ついでに言うとウザったい程に鼻に入るあの薔薇の香水も匂わない。
不思議に思いながらもボーッとしていると自分の手が目に入った。
「え……ちっっっさ!!」
確かにドイツ人と比べれば小さいが、日本人平均は超える自分の体。しかもスポーツ選手であるため当然可愛らしいお手てでは無い。
だが体を見てみるとどうだろう??
鍛え抜かれた腹筋は全て無くなっており、おまけに身長は140cmあるかないか位になっている。
「まさか…」
嫌な予感がしてぐるりと部屋を見渡すと、最近ご無沙汰になっている実家の自分の部屋ではないか。暫く呆然としていると
「よっちゃーん!朝ご飯できたわよ〜!」
一週間に4回ほど電話越しに聞いている声よりも若々しい母の声が下から聞こえてきた。
慌てて見慣れた階段を下りリビングの扉を勢いよくあける。
「今って西暦何年?!?!」
「あら?20○✕年だけど…急にどうしたの?」
おいおい、俺10歳じゃん…と心の中で嘆いたが何も起こらない。
「よくわからないけど…取り敢えずご飯食べましょ?」
「うん…」
最初こそは驚きを隠せなかったが、自身は適応能力の天才である。この現状を悲観するどころか幼い頃からサッカーのプロを目指した本格的なトレーニングができるということしか頭に思い浮かばず、朝食を早々に食べ上げ、ランニングをはじめたのである。
「ッ〜〜…」
この10歳の体は中々にフィジカルがクソである。
それでもいち早く元の身体に戻したいため、現時点での自分に合った距離を走ろうとまた足を動かし始めた。
−−−−−−−−−
俺は遂に17歳になった。
記憶があること以外特に何も変わらず、ブルーロックからの招待状も届き、今日は第二フェーズである新・英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)が開始する日だ。俺は一寸の迷いもなくドイツを選択し、場所を移した。前回と同じくノアに「ゴールで待つ」と言われ競争がスタートする。プロの頃の記憶を持ち合わせているため簡単にクリアしていくことができる。なんだこれ、楽しすぎる。
最後のタスクをこなそうとする前には既にカイザーが1位でゴールしていた。
俺はボールの位置を調節し蹴る―――フリをした。
すると外野からボールが飛んできて何にも干渉せず地面に転げ落ちる。俺はそれを見届けてから手元のボールを蹴り、今度こそ的に当てた。
「流石に“二回目は”引っかからなかったか世一ぃ〜」
美しく響くテノールが何年かぶりに耳を打つ。
その音はアイツにも記憶があるということを判断させるのには十分過ぎる要素を含んでいた。
「ふっっざけんなよクソカイザー!また邪魔しようとしたな?!」
「おっと…俺の可愛い子猫ちゃんは今回は下の名前で呼んでくれないのか(笑)??」
「誰が子猫だ死ねカス」
「本当に世一クンは俺のこと好きねぇ〜www」
「んだとこのピーーー(自主規制)」
暫く言い合いをしていたが次第には怒声は笑い声に変わっていた。
「お前っwwわざわざ再現しようとしなくていいってwww」
「お前は最後に見た顔と殆ど変わらないな」
「日本人は老けないというのは本当なのか?」
という風に初対面であるはずの二人が大爆笑をしながらドイツ語で会話をしていたら、ブルーロックのメンバーは勿論、BMメンバーも『我らが皇帝様は遂にイカれたか?』と心配した表情を浮かべている。
大爆笑の渦を割って入ることができたのはBMの魔術師、アレクシス・ネスのみであった。
「なぜこの日本人がドイツ語を喋っているのか理解出来ませんが取り敢えずイヤホン配りますね」
この鶴の一声ならぬネスの一声には思わずBMメンバーは拍手をした。
全員がイヤホンをつけ終わる頃にやっと二人の笑い声が収まりノアにより順位が発表された。
その後、当然カイザーと世一は呼び出しを食らった。
「カイザーには日本渡航履歴は無いし潔世一にも当然ドイツへの渡航履歴は無い。どうやって知り合った?」
二人は顔を合わせ笑い合い、
「「前(回の)世(界)です!」」
数時間後、普段は鉄の仮面を被っているように真顔のノエル・ノアは頭を抱え、滅多に飲まない胃薬を飲んだ。