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更新ありがとうございます!続きめちゃくちゃ気になります!
⚠︎prologueの注意書きを読み、理解した上でお楽しみ下さい
「射抜いたものは」♡合計1000超えました
いつも♡して下さっている方、本当にありがとうございます
射抜いたものは 第五話
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kr side
暗殺者の男を抱えたknを急かしつつ、医務室へ向かう。
正直、nkがこいつを助けたいと言い出した時は、ついに頭が沸いたのかと思った。
ただ、nkは真剣だった。絶対曲げないという強い意思に、俺は折れざるを得なかった。
brが言った、「nkがこう考えるようになったのは、僕達のせいでもある」、本当にその通りだと思う。
元々正義感の強かったnkだが、あの一件があってから、「助けたいと思ったらすぐ助ける」と心に決めたらしい。
そんなnkだからこそ、俺もいつも救われている。
そんなnkだからこそ、俺達は彼について行く。
nkの「助けたい」という言葉に、俺は全力で答える。
kr「…よし、ついた」
kn「ん、そこ寝かせればいい?」
kr「うん。…拘束は、俺がするから」
治療用のベッドに彼を横たえ、控えめな大の字の形に手首と足首を固定する。
彼の呼吸は幾分かマシになっていたが、顔色は悪いままだ。
kn「nk、鳩尾のあたり蹴ったって言ってたよね?」
kr「ああ。…こいつも災難だな」
nkは、いざという時に手加減ができない。しかも、蹴りが物凄く強い。
彼も動けてはいたが、痣くらいは出来ているだろう。
あの蹴りを食らってなお暴れていたという事は、彼は痛みに慣れているのだろうか。
…痛みに慣れている?
あの距離で心臓を外すくらい戦闘に慣れていない奴が、どうして痛みに慣れているのだろうか。
訓練、だとしても、あの蹴りの痛みを訓練で経験するなんて早々ないだろう。
もしかして─────。
kn「kr?どうした?」
kr「…あ、ごめん。ボーッとしてた」
kn「ふーん、考え事?」
kr「いや、別に。…早く治療終わらせるか」
kn「…そうだね」
そう言って、彼の服に手を掛けるkn。
俺は、備品の中から包帯やら湿布やらを物色しに棚へ向かった。
ジィィ、と彼の上着のチャックが開く音がする。
俺が背伸びをして包帯を取ろうとしていると、
kn「─────え、っ!?」
knが声を上げた。
突然の声にびっくりして、俺はバランスを崩した。
kr「お…っと、どうした?kn」
kn「ちょ、kr…これ見て」
そう言って、彼を指差すkn。
先程まで隠されていた、彼の上半身が露わになっていた。
透き通るような白い肌に、細身な体躯、彼の努力を物語る筋肉。
─────そして、夥しい数の傷跡と痣。
kr「…は、!?これ、どういう事だよ!?」
思わず、声を荒らげる。
kn「nk、そんな何回も傷つけたりしないよな…?別の誰かがやったってことか?」
kr「それに、古い奴も比較的新しい奴もある。nkが蹴った時のは…多分、これだけだろう」
kn「一旦、nkに報告するか…」
そう言って、knはインカムに手を掛ける。
kn「……nk?nk、聞こえてる?」
nk『ん、聞こえてるよ、kn。何か分かったの?』
kn「あのさ、nkって、一回しか彼に攻撃してないよな?」
nk『…?うん。そうだけど』
kr「…彼の体、さっき見たんだけど、すげえ量の傷と痣があるんだ」
nk『え、!?それって…!』
悲痛な声を上げるnkに、俺とknは思わず言い淀む。
kn「…多分だけど、この子、日常的に…暴力、振られてたのかもしれない」
kr「…服で隠れる位置にしてあるって事は、陰湿な物だったんだろうな」
それを聞いたnkが、ぐ、と悔しそうな声を漏らす。
nk『…なるほどね、合点がいったよ。彼がさっき怯えてたのは、それのせいかもね』
kr「なるべく、早く治療終わらせるから、brとsmも連れて、医務室に来てほしい。ドアの前で待ってて」
nk『了解。頼んだよ、kr、kn』
kn「…ん。終わったら、この子どうするか話し合わないとね」
nk『…そうだね』
短い電子音を立て、インカムが切れる。
kr「…」
俺達の敵なのに、なんとも言えない気持ちが沸き起こる。
kn「…nkが蹴ったとこ以外も、診てあげた方がいいかもね」
kr「…ああ」
knが蹴られた部分を処置している間に、俺は夥しい数の傷跡に目をやる。
kr「…酷いな」
刃物で切られたような傷、殴られた事を示す痣、縄で締められたような痕、所々に散る青黒い内出血。
どれも、処置がされていない。
傷を消毒して、酷い箇所には包帯を巻く。
魘されているのだろうか、彼の額には脂汗が滲んでいる。
手が傷跡に触れる度、彼は少し顔を歪めた。
knは緊急時の医療担当な為、俺の方が早く治療を終えた。
kr「…手伝おうか?」
kn「いや、もう終わるよ」
kr「分かった。…nk達迎えに行ってくる」
kn「ん、いってらっしゃい」
kr「終わったら、あそこのベッドに寝かせといて。…手足は、ベッドに固定してね」
kn「りょーかい」
医療ベッドから離れ、廊下に繋がるドアを開ける。
nk「あ…kr」
邪魔しないように、静かに待ってくれていたのだろう。nk、br、smが心配そうな面持ちで立っていた。
nk「どう?あの子、大丈夫?」
kr「nkの所は大丈夫。…問題は、他の所かな」
br「…nkから聞いたんだけど、そんなに酷いの?」
kr「brが想像してる5倍くらい、酷いと思う」
その言葉に、3人が複雑そうな表情で黙り込む。
仮にも俺達を殺しにきた奴に、「助けたい」という感情を抱いているのだ。そりゃあ複雑な顔にもなるだろう。
sm「…まあ、見た方が早いんじゃないか?」
kr「そうだな。入っていいよ」
3人を、彼のベッドの場所へ案内する。
knはベッドサイドに立っており、布団を掛けてあげていた。
…ちらりと見えた彼の手首は、ちゃんとベッドに固定されていた。
kr「一応、他の傷も診といた。…まだ、軽い拘束はしてるけど」
br「まあ、起きて暴れられたら、助けるにも助けれないよねえ…」
nk「…傷、見てもいい?」
kr「ん、いいよ。…あんまり、気分のいいものじゃないけれど」
バサッと布団をとって、彼の上着のチャックを開けて服を捲り、上半身を露わにさせる。
sm「…は?」
br「…っえぇ…」
nk「…」
包帯で見えない部分もあるが、そのあまりの惨状に、3人が顔を顰める。
唖然とする皆を横目に、俺は服を元に戻し、布団を掛ける。
まだ目を固く瞑り、魘されている彼の脂汗を拭いてあげながら、nkが口を開いた。
nk「この傷の理由は分かんないけど…この子、絶対帰らせちゃ駄目だよね?」
sm「また、こういう事をされるのは確定だろうな。…なにせ、こいつは任務に“失敗”したんだ」
淡々とした声色で、smが話し出す。
sm「殺しに慣れてないって事は、暗殺を仕事にして稼いでる奴では無い」
sm「恨みを持って個人的に殺しに来たという線も、一般の奴に侵入経路がバレる訳がない。少なくとも、超高性能なハッキングツールが必要だからな」
sm「こいつの身嗜みからしても、そんなのを持てる程裕福じゃないだろう」
sm「短剣も、下に来てる防弾チョッキも、軍事用の物だ。…そして、こんな不慣れな奴1人で白尾国を倒せるなんて本気で思う奴はいないだろう。したがって────」
立板に水のように話していたsmが、一拍置く。
言いにくそうに口をつぐんで、また開く、を繰り返す。
nk「…sm、考えは最後まで言って」
いつになく思い詰めた表情のnkが、 smに先を促す。
smは、少しだけ目を細め、
sm「────こいつの役割は、“捨て駒”、だろうな」
────遠い、忌々しい過去を掘り起こすように。
顔を歪めて、そう吐き捨てた。
to be continued…