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Dr.STONE 夢小説
復活後の椎名は、すぐにその能力を発揮した。
「なるほどな〜、歯車の噛み合わせ、こうすればもっと効率上がるんじゃねぇ?」
カセキが目を丸くして椎名の組んだ装置を見つめる。
「むほぉぉぉ!! この若ぇの、ヤベぇぞ!? 手ぇが勝手に動いてるレベルで、職人ワザじゃあ!!」
千空も興味津々に後ろから覗き込み、
「こいつぁマジで……当たりだな。翠、お前の友達、見どころしかねぇぞ」
翠は笑って、
「でしょ?」
と、少し誇らしげに答えた。
episode 1 空を駆けるは、あの日からの夢
「…見つけたぞ、ついに。」
試作機の設計図を描き終えた椎名は、カセキの工房で紙を持ち上げ、ぽつりと呟いた。
淡い青の髪がふわりと揺れ、スチームパンク調の作業着が微かに擦れる。拳をぐっと握りしめるその姿に、翠は微笑を浮かべながら隣に座っていた。
「ふふ、ずっと言ってたもんね、空を飛ぶやつ作りたいって。」
「夢だもんなァ。子どもの頃からずっと、空を裂いて飛ぶ、あの音に憧れてた。あんな世界に、あたしの手でたどり着きたい。」
椎名が机の上に設計図を広げると、そこには流線型の簡易グライダーが描かれていた。まだ機械仕掛けではない。風を読み、帆や羽で滑空する、初歩的な“空への足がかり”。
「……でもこれは、あくまで試作よ?重さと素材次第で、失敗したら真っ逆さまだから。」
彼女は笑う。怖さよりも、試せることへの喜びの方が大きかった。
「科学王国の素材なら、きっとできる。ほら、お前が言ってたじゃん?“科学で不可能はぶっ壊せる”って。」
翠が小さく笑い、目を向けた先には、千空の姿があった。いつの間にかやってきた彼は椎名の設計図を一瞥し、鼻を鳴らした。
「ほう。風力グライダーか。いい線いってんじゃねーか、椎名。」
「うぉ、さすが千空。設計見ただけで分かるとか!」
「空を飛ぶってだけなら、今の素材と工具で不可能じゃねぇ。ただし、命綱は必須だ。墜落したらあの世行きだぞ。」
「わーってるよ。……でも、空を飛ぶってのは、それくらい本気でやる価値があるんだって。」
その言葉に、千空がニヤッと口角を上げる。
「気に入った。だったら素材は――竹、帆布、ロープ、補強材用に鉄。滑空距離と角度は実測して割り出す。手伝うぞ。」
「えっ、千空が?」
「宇宙に行くためには、まず空を理解する必要がある。お前のオモチャで、ちょいと実験してやる。」
「ふっふ、なら頼りにさせてもらうよ、“天才科学少年”!」
そのやりとりに、翠は笑った。昔から違う価値観を持っていたふたりだけど、今は同じ空を目指している。夢に向かって、肩を並べて。
「……ねぇ、椎名。何か握ってたでしょ、石化の時。今もそれ、持ってるの?」
翠がそっと尋ねると、椎名はポケットから小さな金属片を取り出した。丸くて、擦れて、でも愛おしそうに光る。
「部品。戦闘機の。石化前に分解して、持ってたやつ。……あたしの“夢の原点”だから。」
翠はそっとその金属を見つめた。
風が吹いた。空が広い。そこに届くために、みんなが動き出している。
グライダー試作機、科学と夢の初飛行計画が、いま始まろうとしていた――。