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「ごめん!俺っ、帰らないと…!」
咄嗟に立ち上がり勢いよく教室を飛び出した後、早足でヅカヅカと校門を抜けた。
さっきのは、何だったんだろう…… 宇宙人?いやいや有り得ない。そう信じたいのに彼女の瞳を思い出すと何故か否定しきれなくなる。あの目。心の奥を見透かすようでどこか懐かしいそれがあまりにも人間でない何かのような魅力を持っていた事をひしひしと思い出す。
しばらく歩いた後、人気の無い路地裏へとへたり込む。手は汗でビショビショで、ずっと心臓の音が騒がしい。
心を落ち着かせるようにと深く呼吸をする。静けさが戻ってくる。
「よし、帰るか」
そう思い腰を上げた瞬間、足首に何かが絡みついた。ロープ?蛇?確認しようと足元を見ようとした瞬間、俺の足に絡みついた何かに路地裏の奥へと勢いよく引きづられて行った。
「いってぇ……」
もう何が何だか分からない。身体中に痛みが走る中周りを確認してみると、俺の目の前に居たのは
“バケモノ”だった。
身の丈は俺の2倍ほどだろうか。異様に細長い手足は生物というより機械の様な質感で奴の体から伸びている触手の様なソレが俺の足に巻きついていたのだった。途端に得も言えないその感触に全身に鳥肌が立った。
生物と呼ぶには異様すぎるソレはじっと俺を見つめている。そして奴と 目が会った瞬間、俺は動けなくなった。目を逸らせば俺は死ぬ、そう本能的に感じたのだ。
「あの!コレ、落としていきましたよ!」
後ろから聞き覚えのある声が思わず振り向くとそこには宇佐美さんが居た。今日会ったばかりとはいえ知り合いの姿を見た瞬間ほっとしたのも束の間、俺は奴から”目を離してしまった”ことに気が付いた。一瞬で血の気が引くのを感じたその瞬間
気付くと宇佐美さんは俺の目の前に立っていてあのバケモノをただ静かに見ていた。
「はじめまして、ワタシは宇佐美ソラって言います。貴方は何をしに地球へ?」
落ち着いた様子で堂々と奴に話しかける彼女を見て俺は腰を抜かしたまま唖然としていた。
「……チキュウジン、ヲ…クウ」
「それはダメです」
「ナ、ラバ、オマェモ……クウ!!」
バケモノが長い手足をものすごい速さと角度で一斉に彼女の方へと伸ばしていく
「宇佐美さん危ない!! 」
しかし奴の手が彼女を捉えることはなかった。彼女がいた場所にはかすかに不透明な液体らしきものがうごめいていて、それが奴の手足に逆にまとわりつく様にかぶさっていった。
「グォ、ァ”オア、ァ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
(あれは……スライム?)
みるみるうちにそのスライムの様な物体は悶絶する巨大なバケモノを包み込み、奴はその中でじわじわと溶けて消えていった。
そしてグネグネと動き段々と人の形を作っていくとそこには先程までいたはずの宇佐美ソラが立っていた。 彼女は何事も無かったように俺に近づき、手を伸ばしてきた。
「…ッ!!」
思わず身構えるが差し出してきた彼女の手には俺のハンカチがあった。
「コレ、落として行きましたよ。すぐに渡そうかと思ったのですが時間がかかってしまいました。」
そう言って笑った彼女の顔はただの女の子に見えた。
「君は……本当に宇宙人なの?」
「はい」
「…………」
上手く現実が受止め切れない。先程まであんな生現実的な状況で、命の危機に陥っていたというのに今はもう安心すら感じる。彼女の”あの姿”。あれは紛れもなく人間のものでは無い。どうやら彼女の”自称宇宙人”は本当だったようだ。
「龍川さんは…宇宙人のワタシとは友達になりたくありませんか?」
ハッとした。そう言う彼女の顔があまりに切なそうだったから。そして俺と彼女を重ねてしまったから。
「君は、人間を襲ったりしないの?」
彼女が先程俺を助けてくれたのは紛れもない事実だ。しかし彼女があのバケモノ同様人間を襲わないとは確信できない。
「そんなことしません!!ワタシは絶対あなた達を傷つけるようなことは…っ」
食い気味で答える彼女を見て俺は笑いを零すと彼女の持つハンカチを受け取りゆっくりと立ち上がった。
宇宙人がなんだ。俺は今までずっと1人だったんだ。この先人間の友達が作れないんだったら宇宙人でもなんでも友達になってやる。
「宇佐美ソラさん。改めて、俺と友達になってくれないかな?」
「はい!もちろんです!」
先程と同じように差し伸べられた彼女の手を握ろうとした
ぐにゅ
彼女の手が俺が握った瞬間に形が崩れ先程のスライムの様にドロドロと垂れていった。
「う、うわあああああああ!!!!」
「あぁ!すみません!!気を抜いていてつい」
慌てふためく俺と彼女の今後の友情は思ったよりも波乱万丈かもしれない。