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俺は知っている。
この世界がBLで出来上がっている事を_。
根拠?そんなの沢山ある。学生の頃からやけに顔面偏差値の高い男子達が多く、女子は少しぼやっとした印象……。そして女子がコソコソ「トウトイ」「𓏸𓏸××サイコウ」「オッフ……」「ステキナバラヲアリガトウ」……何言ってんのかさっぱりだけどこんなことを言っていたからである。
そして決定的な証拠を残したのが俺のかつて仲良かった1人の女子、松本である 。
松本が俺に課題を教えてくれてる時の話だ。御手洗借りるね、なんて言って御手洗に行った時、俺はふと松本の鞄に視線をやった。いや、女子の鞄漁るのは良くないって分かってる。分かってるけどうっすい本入ってたら気になるじゃん?参考書かな、とか思って覗いたわけ、俺は。したっけそれが所謂”同人誌”とか言うやつで俺は全てを悟った。この世界にあるシチュエーションがすべてこの本に詰まっていた。気失うかと思った。こんな甘ったるい世界が此処????信じられないんですけど。
…落ち着けキヨ、このBLという世界は”イケメンのみに訪れる世界”なのだ。比較的陰で静かに過ごしてる俺に訪れるものじゃない。それにこれからの生活だって気張っていけばいい。全力でBLから逃れてやるよ__!!!
俺は静かに薄い本を松本の鞄に仕舞った。 その次の日学校に行ってみれば本当にあの本にあった事しか起こってなくてぶっ倒れそうになったのはまた別の話である。
そんなことを思い返していれば今も大して変わんねぇなぁなんて息を吐く。
いつまで経ってもBL世界なのなんなんだよ……。
「溜息なんてついて、どーした?」
「ぁ…先輩……」
「いい加減レトさんって呼んでや。」
「先輩は先輩なんで。」
「冷たいなぁ…、そんな冷たいキヨくんには暖かいお茶でーす。」
「…あざす」
俺はしがない会社員。そしてこちらが会社内でご飯を奢りたい男ランキング殿堂入りのレトルト先輩。5年連続1位を取ったから殿堂入りしたんだと…。それを知った社内の投票者(男女問わず)からは「レトルトさんが居ないなら投票する意味ない」「ぶっちゃけ殿堂入りも納得」「正直に言うとレトルトさんにしか飯奢りたくない」などと寄せられている。来年はこの項目が消え去るか先輩が復活するか…。きっと後者だろうなぁ……。なんて思えばまた重い息を吐く。
「仕事いっぱいやろ?手伝おか?」
「マジすか!!嬉しいっす!」
俺は顔を明るくさせては先輩に書類を押付け席を立った。
「んじゃ!お疲れ様っす!」
「待て待て待て待て。」
「…?何すか?」
「何すか?じゃないよ。誰が全部やると言った?」
「……さぁ?」
「帰って来なさい。」
「ちぇ。」
俺は肩を落としては先輩に言われるがまま席に戻る。すると先輩は隣に座り顔を近距離に持ってくる。
近い近い近い近い近い!!!イケメンの破壊力何!?!?
俺が分かりやすく固まれば先輩は目を細めた。
「緊張してんの?大丈夫大丈夫、怖い事はしないよ。」
なんて言っては肩をぽんと叩かれる。俺は短く息を吐き体の硬直を解かしては書類と向き合った。
そこから先輩の「ドキドキ♡ゼロ距離書類お片付け!」は無事幕を閉じた。
「お疲れキヨくん。」
「はぁーー、助かりました。」
「この後暇?」
……ナンパの常套句来た。
「…先輩は何かあるんすか?」
「なんも無いよ、だから食べに行こうと思ってて。」
「ほう、良いっすね。俺も行っていいすか?」
「ん、いいよ。誘おうと思っててん。」
先輩はにこりと目を細めれば手招きをした。
俺は従順な犬のようにしっぽを振って着いて行った。
__この後に訪れる”酔っ払った勢いであんなこと……!”イベントが発生するとも知らずに…。