お前の肺に入る煙は 、お前を覆うようだった 。
🚬 ー ー ー
家 入 硝 子
イエイリ ショウコ
🚬 ー ー ー
告白された 。
2回目の 。
私から背ける目は本気で 、胸が顔が熱くなる 。
これはきっと夏だから 。
朱色の瞳と重なり合う 。
好き 。 好き 。大好き 。
だから 。
今からコイツを振る 。
🚬 ー ー ー
暑い夏にむさ苦しい男3人 。
馬鹿みたいに又じゃんけんして 、 五条が負けたと思えば散々煽り散らかしていた好矢が負けた 。
「 しょーこー、アイス何がいいー 」
勝ってご満悦の五条が聞いてくる 。
「 あ〜 、さっぱりしてて良い感じので 」
少しジメジメしたら暑さだからさっぱりを頼んだのに 。
「 え ?!何それ俺そんなアイスしらないよ 」
好矢は 、私の所まで近寄ってきて 。
「 一緒に行こ 硝子 」
差し伸べられた手を少し気分が良かったので私の手と重ねた 。
🚬 ー ー ー
「 あっっつつ 」
外は思ったよりじめついていて 、歩いていると今にも倒れそうだった 。
「 悟達みたいに2人乗りする?自転車 」
「 え? 出来んの? 」
「 うん 」
学校からチャリをパクって、荷台に乗る 。少しギシッと音が鳴り慌てる私に 、
「 これ古いからね 、まあ 硝子は軽いし平気だよ 」
「 ちゃんと掴まれよ! 」
長い下り坂を2人乗りして涼しい風を浴びていて 、青春なんて言葉が頭に浮かぶ 。
普段は人を治して、呪霊払って 、教室に帰っても人はいない 。そんな日々の繰り返しだったのに 。
今日は何だか胸の高鳴りが早い 。
気がつけば 、コンビニに着いていて時間の早に驚いていた 。
「 五条確か、練乳イチゴアイスって言ってたよな クソ高いけど 」
五条要求の品は360円 。
「 はぁ?!悟自分で買わないからって 」
「 まぁ、負けたんだししゃーない 」
財布から金を取り出しているだけなのに 、顔がニヤついているのは何かの病気だろうか 。
「 帰りの事考えてなかった 」
爽快な下り坂は今は地獄の上り坂 。
「 平気だよ、硝子ならちょちょいと届ける 」
そう言って荷台をポンポンとする好矢は 、教室で見る姿とは別に見えた 。
「 おぉ、好矢早い 」
アイスを籠に入れ、好矢の腰に手を回す 。
「 まぁ、俺男だし 」
「 知ってるよ 」
ガゴンッ
小さな小石に車輪が躓き倒れる 。
「 ご 、ごめん!大丈夫?! 」
顔を真っ赤にさせて言う好矢 。
「 へーきへーき 、ってやば 五条のアイス蓋取れてる 」
目の前には落ちた赤のいちご 。
「 … 」
お互い黙って顔を見て
「 ぷっははは 」
世界で1番笑いあった 。
「 “ 澪月 ”がちゃんと前見ないから 」
私が呼んだ名前に目を点にさせ、そっぽを向く 。
「 ? 」
「 まっ、押して帰るか 」
🚬 ー ー ー
「 五条 ! 買ってきたぞ 」
ソファで夏油とゲームをしている五条に声をかける 。
「 お!さんきゅー 」
犬のように駆け寄ってきて 、袋を渡す 。
ウキウキでスプーンを取り、袋から出した瞬間 。
「 しょーこ!!!!! りょーがぁぁぁあ!! 」
叫び声 。
「 やっばバレた 逃げろ 」
「 ちょっと俺の事置いてくな! 」
2人で寮を出て走った時にはもう 、
好きの気持ちに気がついていた 。
🚬 ー ー ー
「 真逆 !硝子と任務とは 」
初めて行く澪月との任務 。
「 任務っていうかお使いだけどな 」
でも少しでも 、傍に居れる口実がある 。
「 あ ! 澪月! 」
可愛らしい女の子5人が寄ってくる 。
私とは違う可愛い制服 。
私とは違う巻いた長い髪 。
私とは違う高い声 。
私には見せない笑顔 。
「 あ! 美莉亜ちゃん ! 久しぶりー! 」
「 澪月最近見かけなくて寂しかった! 」
ポンポン殴る女の子 。
私にはそんなこと出来ない 。
「 あはは 、寂しん坊なんだ可愛いね 」
私には言わない可愛いを 、こんなにあっさり貰えるなんて 。
羨ましい 。
「 澪月その子達と話すなら私先に買い物してくるから 」
この場が嫌で逃げ出すなんて格好悪い 。
「 なんで着いてくんの 」
それでも着いてくるコイツが好きだ 。
「 えぇ!澪月行っちゃうの?! 」
高い声が道に響く 。
「 うん!俺今硝子と買い物中だから 」
馬鹿正直で、馬鹿みたいに私に優しくて、私にだけ赤く染める顔が 、
大好き 。
「 さっき嫉妬してたでしょ 」
意地悪く質問してくる澪月 。
「 してない 」
嘘をつけば 、ニヤついて 、
「 ふーん 。 まぁ、そんな所が硝子は可愛いよ 」
「 は ”? 」
「 アンタ女子全員に言ってるの? 」
質問してみると
「 んーん、こんなに心の籠った可愛いは 、硝子にしか言ってないよ 」
特別扱い 。なーんて勘違いをしてしまいそう。
今日だけは勘違いしたままでいたい 。
🚬 ーーー
店に入ったって、澪月の所には女の子 。私は唯物を見つけて、カゴに入れるだけ 。
「 あ ! 実弥ちゃん髪切った?可愛い」
「 俺も真理ちゃんのこと好きだよ笑」
やっぱり皆に言っていて 、
私だけへの言葉って勘違いしていたんだ。
自惚れてたんだ 。私は特別だって 。
今日だけは勘違いをしていたくても、そんな事言える状況じゃなくて 。自分の心の気持ちに恥ずかしさを感じる 。
「 しょーこ行こ 」
「 先帰ってて、私買い忘れたものあるから」
勝手に勘違いして、勝手にキレて、それは好きになって貰えない 。
「 私だけに言えばいいのに」
口から出た言葉に自分で驚く 。好きなのは気づいてた。けどこんなに好きなのは自覚がなかった 。自分の震えた声に 、震えた手 、歪む視界 。
どうか私を追いかけてこないで
そんな思いも虚しく消え、私の肩に重りが乗る 。
「 ねぇ何で泣いてんの? 」
その瞳は怒っていて 、私だって怒りたいし、嫌いになりたいのに 。優しく掴まれた肩から熱が広がってゆく 。
「 泣いてない 」
可愛くないと自覚しながらも返事をする 。
澪月は頭を掻き 、口を開く
「 硝子、やっぱり今言うね」
真剣な眼差しは私の胸を射抜いて 。
「 俺 、硝子が好き 」
澪月の放った 、たった2文字で舞い上がりそうになる 。
3秒間の沈黙の後、私は震えながら口を開く
「 ごめん 、澪月の事そんな目で見たことない 」
嘘 、ウソ 、うそ 。
本当は今にでも抱きついて伝えたい 。けど、私以外にも可愛い子はいて、私なんか性格悪いし煙草臭い 。澪月には似合わない 。
ねぇ、だから、いい人はもっといるから周りみてよ 。
泣かないでよ 。
「 そっか!ごめんな困らせて。でも俺諦めるつもりないから、いつも通り接してよ」
「 う、、うん 」
いつも通り 。いつも通りの接し方なんか覚えてない 。
澪月が五条達と馬鹿やってたら 、可愛いって顔がふにゃけるし。
澪月が任務に行ったらソワソワして不安になるし。
澪月が女の子を褒めたら胸が苦しくなるし 。
澪月が私を褒めたら体温が上がるし 。
澪月が体術の練習をしていたら、好きだって思ってしまう 。
いつも通りがわからない 。
「 しょーこ?!どうしたの 」
澪月と別れ 、寮に帰る道 。
いつの間にか雨が降っていて 、雨の中びしょ濡れになった私に傘を差し出したのは、生憎あんたじゃなくて 。
「 五条 」
いつもは馬鹿やってるくせに、心配してくれる 。あぁ、今はこの優しさに甘えたい 。
ギュッ
「 ッッ う わ あぁぁ ゙ …._ 」
「 し ょ 、硝子?!何で泣いてんの?!」
驚く五条なんかほったらかして、唯 、唯 、大きな腕に収まっていた 。
「落ち着いたかー? 」
「しょうこが こんなに泣いてんの初めて見たよ 」
涙も小降りになりゆっくりと口を開く 。
「 私ッ、さ 、 さ い て い ッ ”な ん だ … 」
嗚咽混じりに言葉を発する 。
正反対に爆笑している五条を見て少し冷静になる 。
「 しょーこって普段は俺らのこと馬鹿にするけど、実際馬鹿だよな 笑」
「 しょーこが最低じゃないって俺ら知ってるから!つーか 、最低だったら人の事思って泣かねぇだろ 」
「 は ? 」
慰めかは分からないが五条が言った素敵な言葉は耳には入ってこず、入ってきたのは、「 人の事を思って 」。
「 私が何で人を思って泣いてると思ったんだよ 」
少し頭を掻き 、唇を尖らせる 。
「 好き 、なんだろ ? 澪月の事 」
ココで私が嘘をついてもきっとコイツは気づいてる 。
「 うん 」
初めて人に想い人を伝えた日 。
五条は笑って頭を撫でた 。
「 しょーこ俺らの事もっと頼れよ 」
「 俺らは最強だろ? 」
「 ふはっ! だな 」
初めて五条に恋を教えて貰った日 。
🚬 ー ー ー
「 硝子! 明日私たち任務で3日程いないから 、悟を頼むよ 」
夏油が澪月と肩を組んで報告してきた 。
( 私も行きたい )
でも叶わないから
「 えぇ私が五条の面倒見んのかよ 」
精一杯のいつも通りを披露する 。
「 イケメンと一緒なんか最高だろ ! 」
澪月が 、笑いながら五条を指さす 。
違う 。澪月じゃないと嫌 。
澪月なら唯らアイス買いに行くのも、唯、教室に一緒にいるのも、唯、見つめているだけでも 。
楽しいって好きって思えるから 。
「 しょーこー 、止めなかったの? 」
ソファで足をバタバタさせている五条 。
「 私は任務同行させて貰えないんだし、ワガママになる 」
「 なーんかしょーこって、臆病だね 」
お次は仰向けでクッションを抱く五条 。
「 普通だろ 」
「 だって、澪月の事を喋るしょーこって、幸せな顔じゃなくて不安な顔してる 」
初めて知った自分の顔 。
澪月と話た後に鏡を見ると下がらない口角 。火照る顔 。
今もそうかと思ってたのに 。
咄嗟に携帯の画面を開き 、黒い画面に反射した自分を見る 。
目には雫が溜まり、口角は下がっていて 。
「 そりゃ不安にもなるだろ… 。アイツの周り可愛い子だらけで、皆に声かけて、可愛いって 」
「 本当に私の事好きなのかも分からないし、アイツの言葉で一喜一憂してる自分が可愛くなくて 」
「 え、しょーこと澪月って付き合ってるの?」
告白されていた事は話していなかったからキョトンとする五条に、
「 なんでもない 」
を伝える 。
「 あ! いたいた ! 硝子ちょっと手伝って 」
声の主は振り返らなくてもわかる 。
「 おう !澪月 」
私は足早に澪月の元へと駆け寄った 。
🚬 ー ー ー
「 明日の任務なんだけど、硝子にも来て欲しい 。」
顔を隠しながら伝えてくる澪月に私はクエスチョンマークを盛大に浮かべる 。
「 無理よ 、私は皆が怪我した時に直ぐに治療できる場所にいないとだもの 」
事実を伝える 。
本当は一緒がいいけど 。
「 そっか 」
そう言ってまた自分の部屋へと戻っていた 。
🚬 ー ー ー
3日後 、五条とお好み焼きを作る 。
「 今日帰ってくんだよなー 」
「 私たちだ全部食べないように気をつけないとな 」
2人で作るお好み焼きは世界一と言っても過言では無い 。
ガチャ
ドアノブを捻る音と 、
「 いい匂い! 」
の声 。
「 おっかー 」
「 あれ なんか日焼けしたー? 」
少し焼けた肌の2人と 、真っ白な私たち 。
「 お好み焼きじゃん! 」
「 俺特性 ! 」
夏油と五条が仲良く話してる 。
「 硝子ちょっといい? 」
🚬ー ー ー
澪月の部屋 。
殺風景で寂しい部屋 。
「 何 ? 」
「 寂しかった 」
顔を押えてそう言う姿は愛らしく 。
ぎゅ
いつの間にか抱きしめていた 。
「 え? 」
戸惑う澪月なんて放っとく
「 私も寂しかったよバーカ 」
そう伝えれば顔面真っ赤にして泣き出すから 、ぎょっとする 。
「 あのさ、俺 、硝子の事大好き 。硝子が思っているよりずっと好きで愛してる 。 」
「 俺、硝子の事好き 」
その告白に私は口を閉ざし、澪月は目を背ける 。
さっきまで吸っていた煙草の灰が落ちていく 。
大好き大好き大好き 。
だから 、だからね 。
「 ごめんなさい 」
そう言ってキスをする 。
アンタに私は似合わないから 、別の人とお幸せにね 。
END
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