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ズンッと大地が揺れ、残る一つの側防塔がガタガタと揺れる。

広く舞い上がった砂煙が、衝撃の強さを物語っていた。


「ふぅ……」


その中から、シルフィさんが砂埃を払いながら現れる。

そこへリズさんが手を振った。


「シルフィ、ここで最後だったようだぞ。残りの4つはエルが破壊したそうだ」


「そうですか……なんだかあっけないですね」


ホントにね。

抵抗らしきものはあったはずなんだけど……うん、特に抵抗はなかった。



「……ところでメイさんは?」


「――呼んだか?」


メイさんはズルズルと大きな袋を引きずりながら現れた。


「その袋は一体……」


中からはガチャガチャと金属同士の触れる音が聞こえる。


「んぁ? これか? 戦利品や」


そう言ってドヤ顔で中に入っていた大量の鉄剣を見せつけてきた。

チラッとメイさんの後方を見ると、塔へ通じる道中に倒れた兵は皆帯剣していない。


……追い剥ぎじゃん。


「なんやその顔、勘違いしたらアカンで? 折れたのを回収してるだけや」


たしかに良く見ると、どれも折れていて使い物にならなそうだ。


これなら……いいのか?

まぁメイさんなら、鉄屑も有効活用してくれそうだし……?


「……ちなみに、メイさんの腕についてるワイヤーっぽいの……それで作れたりします?」


あれはおそらく極細の金属ワイヤーのはず。

飛行魔法があればいらないだろうけど、それはそれ、これはこれ、ロマンアイテムは大事なのだ。


「炉があればまぁ……でもやっぱこれ、返したほうがええ気がしてきたわ」


そう言ってメイさんは折れた剣を袋から取り出し始めた。


「……どうせ捨てられるなら、メイさんが有効活用するのもアリかなぁと思います」


僕の言葉を聞くと、メイさんが悪い顔になった。


「エルのそういうとこ、けっこう好きやで?」


メイさんのそういうとこ、僕はちょっと怖いです。




「とりあえず鐘は全て破壊できたはずだけど……これで鐘の影響はなくなるんですかね?」


今のところ、交易都市内の様子に変化はない。

元々目に見える何かがあったわけじゃないので当たり前といえば当たり前だが。


「鐘は触媒だったのかもしれませんね。そうなると大元になっているものがどこかにあるはずですが……」


というのがシルフィさんの推測だ。

つまりまだ解決はできていない。

それでも、もうあの異様な鐘が鳴ることはないだろう。


でもこれだけ暴れたんだし、大元に関わりのある重要人物が――――


「この賊めがッ! これ以上俺様の領地で好き勝手できると思うなよ!」


……都合良く現れてくれた。


その男は、薄い頭と出っ張ったお腹が特徴的で、怒りを露に眉間に皺を寄せている。


「ほら賊だって、それが原因じゃないですか?」


僕が言った「それ」とは、メイさんが回収した折れた剣のことだ。


「落ちてたもん拾っただけやのに……それに全部取ったわけやないで? ウチでも再起不能っぽいのはちゃんと残しとる」


使えそうなものだけ回収してゴミは置き去りか、良い性格してるなぁ。


しかしメイさんの言葉を聞き、男は頭に触れワナワナと震え出した。


「抜け落ちて…再起不能……? 俺様はまだ希望を捨てていないのに……」


抜け、は言ってないはずだが、男は何かを気にしているようだ。


「まぁこれなんか平凡な鍛冶師じゃ望み薄やけど、ウチなら再利用できるで」


男の存在をまるで意に介さず、メイさんは折れた上にボロボロの剣を取り出した。

これを再利用できるとは頼もしい存在だ。


ちょっと気になり袋の中を覗いてみると、ちょっと装飾が豪華な盾なんかも混じっていた。


「これちょっと装飾が凝ってますね。けっこう良い盾だったり?」


「いや、これはそれっぽく見せかけてるだけやな。ほれ、メッキやし剥げかけとるやろ?」


メッキ……そういうのもあるのか。


「望み薄……ハゲ……? 許さん…許さんぞ……」


男がぶつぶつと何かを言い始める。

急に現れて独り言呟きだすとは、なんとも不気味な人だ。


そして、男は怒気を含んだ大声を発した――


「絶対に許さんぞ賊共ッ! じわじわと嬲り殺しにしてくれる!」


どうやらかなりお怒りの様子……と思ったが、その表情が気持ち悪い笑みに変わる。


「ふふふっ……泣いても許してあげないからな。出でよ――――カザール四天王!」


そう叫びつつ、男は手を上空へ掲げた。

……掲げ続けた。


「なんだ、四天王というから期待してみれば誰も現れないではないか」


リズさんは何かを期待していたらしい。


でも期待しないほうがいいと思いますよ。

仮に現れたとしても練度が低いようなので……。


「なぜ…誰も来ない……?」


男の顔に焦りが見え始める。

来ない理由を教えてあげたほうがいいだろうか。


「あのぉ……四天王ってもしかしてあの人ですかね?」


僕はリズさんが放り投げた四天王の一人を指差した。

無論気を失っているだけだが、それを見た男は狼狽え始める。


「――なッ!? あれは沈黙のオーネスト……? 俺様が用意した最強の傭兵がやられているだと……?」


沈黙という二つ名があったらしい。

よく喋る人だったけどな……今は文字通り沈黙してるけど。


「な、なら他の3人は……韋駄天アゲハ、動く要塞トロイ、固定砲台ムボウはどこに……?」


「それなら多分僕が……」


そっと手を挙げて答える。

実際に倒したのは一人だけだけど。


「ぐぅッ……なんてことだ、高い金を払ったというのに役立たず共め! こうなったら最後の切り札を使うしかあるまい――――」


最後の切り札出るの早いな……と思いながら眺めていると、男はワインでも入っていそうな木箱を開封し始めた。

その中に入っていた物は――――


「ふふふっ…この領主ハーゲン様に盾突いたことを後悔するがいい」


それは、正に事の元凶とも思える邪神像だった。


「なるほど……おそらくあれが原因ですね」


「ほう……これが何なのか知っておるのか。だが今更許しを請うても無駄だぞ? 邪神の力をとくと見るがいい!」


シルフィさんの言葉に、ハーゲンは不敵な笑みを浮かべていた。


「ちょうどええやん、探す手間省けたで」


「……へっ?」


メイさんの言葉に、ハーゲンは戸惑い始め――――


「これは斬ってしまってもいいのか?」


「ん? えっ…あれ?」


いつの間にかリズさんの手中にあり、慌てふためいた。


「浄化できればそれが良いんですけど、私じゃ時間がかかってしまいますし……」


そう言ってシルフィさんの視線は僕へと向いた。


「浄化とかはわかんないですけど……試してみますね」


僕は神力を纏い、邪神像にそっと触れる。

すると、触れた指先にまた違う神力のようなものを感じた。


僕が纏っているのが白い神力だとすれば、邪神像から感じるのは黒い神力といったところか。

だが不思議と嫌な感じはしない。

むしろ自分の体は受け入れているような……?


一先ずこの黒い神力を引き剝がすイメージで、神力越しに引っ張ってみる。


(おっ、剥がれて……いや、というか吸ってる?)


僕のイメージとは違い、黒い神力を取り込むように邪神像から剝いでいく。

しかしシルフィさんからは、そのようには見えなかったようだ。


「……浄化完了ですね。こんなに早く……」


どうやらちゃんと浄化はできたらしい。

個人的には食べちゃいけないもの食べた気分だ。

しかし僕の体調には特に変化はない……。


じゃあ……とりあえず解決かな?


「ば、バカな…邪神像が……」


ハーゲンは膝から崩れ落ちた。

この都市内の異常はやはりこれと考えていいのだろう。


「こんなのが領主とはにわかに信じられんな」


「調べたら色々出てくるんとちゃうか?」


「そうですね、邪神像の入手ルートも気になりますし」


女性陣3人は見下しながら、ハーゲンに侮蔑の視線を向けていた。


「えっ…あっ……あれ?」


そしてろくに抵抗もできないまま、ロープで捕縛される。

そのまま領主の城までずるずると引きずられることとなった……。

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