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ルル(白魔女)と『|黒影を操る狼《ダークウルフ》』は無事だろうか?

いくつもの朱色《しゅいろ》の鳥居《とりい》を掻《か》い潜《くぐ》っている中、俺はそんなことを考えていた。

どこまでも続くその一本道には終わりがないように思われたが、そんな『|永遠に続く一本道《エターナル・ロード》』は突然、終わりを迎えた。

たくさんあったはずの鳥居や今まで走っていたはずの道は、いつのまにか消えていた。

その代わりにあったものといえば立派な社《やしろ》と賽銭箱。それと狛犬《こまいぬ》の代わりに置いてある【狐《きつね》の像】であった。

さて、ここまで来たのはいいが、お金はルル(白魔女)が持ってるから、お参りしようにもできないんだよな。うーん、どうしたものかな……。

俺が首をひねりながら考えていると、シズク(ドッペルゲンガー)が俺の袖《そで》をクイクイと引っ張った。


「おう、シズクか。どうしたんだ? 腹でも減ったのか?」


俺がそう言うと、シズクは首を横に振りながら、こう答えた。


「ここに来た時から誰かに見られてる気がするんだけど、気のせいかな?」


「ん? あー、そういえば確かに誰かの視線を感じるな。けど、いったい誰のだろう?」


「それは分からない。でも、たしかに誰かいるよ」


視線は感じるが敵意は感じない。しかし、このままここで待っているのも退屈《たいくつ》だな。なら、ここは一つ試してみよう。

俺は【狐《きつね》の像】のところに行くと、それを思い切り蹴《け》った。

すると「イタッ!!」という声が聞こえた。俺はそれに構《かま》わず、再び石像を思い切り蹴った。


「だ、誰じゃ! 妾《わらわ》が石像に化けているのをいいことに蹴《け》りを入れてくる輩《やから》は!」


俺がそれを無視して三度《みたび》蹴ろうとした、その時。


「いい加減にせんかー!!」


白い煙《けむり》の中から両拳を天に向けたまま、五メートルくらい回転ジャンプした後《あと》、スタッ! と見事に着地した者《もの》がいた。

その子は紅色《べにいろ》の袴《はかま》と、白衣《びゃくえ》を着ていた。

首には金色《こんじき》の鈴《すず》がついた赤い首輪をつけている。

あと、白い足袋《たび》と草履《ぞうり》を履いている。

『巫女《みこ》装束《しょうぞく》』を身に纏《まと》っている彼女の頭部にある耳はキツネのようにピコン! と立っている。

というか、いかにもふわふわしていそうなシッポを今すぐ触りたい。(身長は百三十前半くらい)

えー、金というよりハチミツを塗《ぬ》った感じの長髪は彼女の腰《こし》まであった。

ちなみに両目は白いハチマキで覆《おお》われているため、見えない。

だが、その点を除けば、どこからどう見ても【狐《きつね》の巫女《みこ》】であった。


「まったく! 人がせっかく気持ちよく寝ていたというのに無理やり起こすとは、いったいどこの愚か者じゃ!」


プンスカ! という文字が出てきそうなくらいの怒りを露《あら》わにしている彼女は、まだこちらには気づいていないようだ。

俺の存在感の薄さが原因か? いや、もしかしたら長年のボッチ生活で習得できるという伝説の『ス○ルスヒッキー』かもしれないな。

……いや、さすがにそれはないな。

これは単に向こうが気づいていないだけであって、俺の影が薄くなっているわけではない。

俺は辺りをキョロキョロと見渡している【キミコ】に話しかけた。(狐の巫女の略)


「おい、そこのキツネの巫女《みこ》。ちょっとお前に用があるんだが、少しいいか?」


こちらを振り向こうとせずに同じ動作を繰り返している彼女は、かなり怒り気味でこう答えた。


「なんじゃ! 今、妾《わらわ》はとても忙しいのじゃ! 後《あと》にせい!」


俺はそれを聞き終わると同時に彼女の耳元でこう囁いた。


「お前を無理やり起こした張本人が、すぐそばにいるというのにか?」


「ふえっ!!」


【キミコ】は数センチ飛び上がると歯をギリギリと擦《す》り合わせながら、こちらを向いた。


「お主《ぬし》か! 妾《わらわ》の眠りを妨《さまた》げた愚か者は! その罪、万死に値する! ここで葬《ほうむ》ってくれるわー!!」


その時、シズク(ドッペルゲンガー)が俺の前に姿を現した。

その後、シズクは両手を広げながら、彼女に対して、こう言った。


「ナオトには指一本触れさせないよ!」


その子は白いハチマキをしているのにもかかわらず、こちらの位置を把握しているようだった。

なぜなら、シズクが話している間、その子はずっとシズクの方を見ていたからだ。

なるほど、目隠しをしていても相手を認識できるほどの実力者なのか。うーん、これは、ちょっとまずいかもしれないな。

しかし、二人の殺《や》る気スイッチが入っていたため、止めようがなかった。


「ナオト! 私の固有魔法の名前は考えてくれた?」


こちらを見ながらそう言う彼女の目は本気だった。あっ、そういえば、まだシズクの固有魔法は見たことなかったな。えっと、確か考えてあったのは……。

タケノコがにょき! と生えるように思い出すと、シズクの固有魔法の名前を本人に伝えた。(固有魔法とは、自分以外の誰かに、その名前をつけてもらえて初めて本来の力を発揮できるモンスターチルドレンの力の一つである)


「シズク!! お前の固有魔法の名前は………………『|紫影製の立方体《シャドーキューブ》』だ!!」


シズクはそのままの体勢で、こちらに笑みを浮かべながら、こう言った。


「ありがとう、ナオト。さっそく、使わせてもらうよ!」


シズクは正面を向くと、右手を前に出した。


「『|紫影製の立方体《シャドーキューブ》』!!」


シズクがそう言うと、紫色の影《かげ》でできた立方体が二人を閉じ込めた。

俺は外に追い出されていたが、中の様子ははっきり見えた。

しかし、俺のことは見えないらしい。その証拠《しょうこ》に【キミコ】が「どこだ! 人間!」と言いながら壁を殴っていたからだ。(ビクともしなかった)

無理はするなよ。シズク。俺はシズクを見守ることにした。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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