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人ならざる者…バルドさんは何になったんだろ…(続きも楽しみです!
──死は、終わりではなかった。
海底の闇の奥深く。
バルドの巨体は沈み続け、やがて辿り着いたのは、光の届かぬ未知の領域だった。
そこには”何か”がいた。
何百年、何千年も前から沈み続けた死体の山。
無数の鎧が錆び、白骨が散らばり、誰のものとも知れぬ剣や槍が突き刺さる墓場のような場所。
──その中心に、”それ”はいた。
巨大な影。
蠢く無数の触手。
「……人間……?」
水の流れとは無関係に、バルドの死体が静かに浮き上がる。
「お前は……まだ、生きていたいか?」
死体に問いかける、異形の声。
バルドは答えなかった。
──いや、答えられなかった。
だが、彼の心に残っていたのはただ一つ。
「……主……」
あの少女。船の上でスカウトした、絵筆を握る少女。
彼女はまだ生きている。
それを思った瞬間──
「ならば、蘇れ。」
──バルドの胸の奥で、何かが弾けた。
鋼の鎧が砕け、剥がれ落ちる。
皮膚が裂け、血と海水が混ざり合う。
砕けた骨が、異形の肉と絡み合い、新たな形へと変貌する。
人の形を捨て、彼は新たな姿を得た。
全身を覆うのは、黒き鱗。
かつての戦斧は、刃の形を変え、骨と金属が混じった異形の武器と化した。
そして──
バルドの瞳が開いた。
「──地上へ戻る。」
低く、重い声。
深海の王は、ただ静かにそれを見送った。
次の瞬間、海が裂けた。
ドォォォォン!!
海面が爆発し、黒き影が飛び出す。
──バルドが、帰ってきた。
人ならざる者として。
戦場に、再び立つために。