単発1発目から重いです。
(🎤×🎸)
追い詰められた❤️が💙を巻き込んで崩壊していく話。
お互い恋愛感情はありません。
自死表現があります。
死ネタが苦手な方は回れ右でお願いします。
・nmmn及び腐向け表現注意。
・過激なR-18G表現注意。
・R-18表現は少なめですが注意。
ーー
side mtk
自分を限界まで追い込んでは命を削って曲を書いてきた。
そうでもしなくちゃ人を揺さぶる歌詞だってメロディだって出てこないと思ってた。
人間、失ってからそのモノの大切さに気付くように、 渇望してこそ物事の輝きを知るから。
だからいつものように、 やってたはずだったんだ。
これまではそれで上手くいってたのに。
全く何も出てこない。
時間だけが過ぎていく。
手を動かさなければ。
でも今動かしたところでどうせ無駄な物しか生まれない。
焦燥感に心臓ごと握りつぶされそうだ。
締切だけが着実に近付いてくる。
ーー
それから何時間か経った後。
気が付くと、若井に電話をかけていた。
慌てて画面を強くタップする。
幸い若井が電話に出る前に切れた。
こんな時間、起きている訳ない。
それにメンバーに余計な心配をかけたくない。
若井に誤タップであるという旨を送る。
すぐに既読がつくと同時にメッセージが届く。
「今からそっち行く」
「大丈夫、本当にミスだから気にしないで」
「そう?明日暇だからとりあえず向かってる」
会話が成り立っていないけれど、若井が来てくれるのは嬉しかった。
でもそれ以上に、迷惑をかけてしまう不安が上回る。
僕がもっとちゃんとしなきゃ。
こんな未熟なままじゃ、いつか捨てられてしまう。
ーー
何も解を導きだせぬまま、若井が呼び鈴を鳴らす音に驚いてようやく思考をやめた。
僕の思考回路はイカレちまった、また時間を無駄にするなんて。
鬱屈とした気分で玄関に向かったはいいものの、鍵を開けようとして、手が竦んだ。
今こんな無様な姿の自分を見たら失望するんじゃないか。
こんなにも何も出来ないのかと。
呆然と立ち尽くしていると、玄関のドアがガチャリと音を立てて開けられる。
そうだ、合鍵持ってるんだった。
「…元貴、迎えに来てくれたんだ」
「いや…そんなつもりじゃ」
「ありがとね、入ってもいいかな」
これ以上見ないで欲しい。帰って欲しい。
でもそんなことを言えるほど元気でもなかった。
沈黙を肯定と受けとったようだった。
「取り敢えず、俺リビングいるから。
何かあったらいつでも呼んでね」
そのままスタスタと靴を脱いでリビングへと向かう若井。
取り残された僕は作業部屋へと向かった。
しかし相変わらず何も進まない。
俺のプライドだけが何とか俺を縛り付けている。
逃げ出したくてたまらない。
あぁ、いっそ全てを破壊してしまえたらいいのに。
ふと、若井の存在を思い出した。
部屋を出て、リビングに向かうと若井はスマホをいじりながらソファに座っていた。
俺の気配に気付いて顔を上げてこちらを向く。
「元貴、どした?なにか飲む?」
首を振って要らないと伝える。
「分かった。今日はずっとここにいるから、何でも言って?」
若井の唇が目につく。
きっとどんな言葉でも拾って返してくれる。
そんな親友を壊す方法がひとつだけある。
「……舐めて」
あはは、言っちゃった。
もう取り返しがつかない。
「…えっ?」
「僕の舐めろって言ってんの。
何でもしてくれるんでしょ」
自分でも最低な願いだと思う。
僕は若井が恋愛的に好きなわけじゃない。
男が好きなわけでもない。
僕の存在を否定して欲しかった。
僕はいかに惨めで愚かで凡庸な男なんだと。
何かを成すことなんて到底出来ないのだと。
言いふらして欲しかった。
親友を犯そうとするキチガイであると。
あいつはもう狂ってしまったんだと。
曲を作れなくてもしかたがないと、諦めて欲しかった。
「…元貴のソレ、フェラするって事であってる?」
「うん。疲れすぎて収まんなくてさ」
ほら、早く僕を絶望させてよ。
「…いいよ。ベッド行こっか」
僕の手を引いて若井は歩く。
いつも見慣れていたはずの親友の背中が
全く知らない人に見えた。
ーー
僕はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
若井は随分と手慣れた様子で僕の事を脱がしていく。
男ともヤったことあんのかな。
若井の手がピタリと止まった。
いつの間にか疑問を口に出してしまっていた。
「…無いよ。元貴が初めて」
少しだけ優越感があった。
でもすぐにまた焦燥感にかき消されていく。
こんなことしてる暇ないのに。
僕の下半身が露出されて、僕のソレだけが硬く上を向いている。
こんなクソみたいな状況に興奮するなんて、吐き気がする。
「元貴、舐めていい?」
「…いいよ」
若井は先端に優しく挨拶代わりのキスをして、大きな口をゆっくりと開けては、躊躇うことなく一気に咥え込んだ。
じゅぽりと鳴り響く、親友が鳴らす淫らな音。
初めてとは思えない舌使いに思わず喉を鳴らす。
このテクニックで沢山の女を落としてきたんだろうか。
何だか、自分がセフレの1人に成り下がったような気がして気分が沈んでいく。
所詮、若井に欲情した獣のうちの一匹に過ぎないのだと。
「元貴だから、してるんだよ」
僕の感情の機微さえも見落とさない若井。
今はそれが、リップサービスに思えて仕方がない。
これ以上考えたって、もう意味なんて無い。
僕は高まる欲求に身を任せ、若井の喉の奥を目掛けて吐精した。
たっぷり吐き出した後、若井の口から引き抜くと、 若井がごくりと喉を鳴らして余すことなく飲み込んだ。
「え、飲んだの…?」
「…もったいないかなって。酷い味する」
そういって舌をべーっと出してみせて笑う若井。
何で親友に口淫させられたのに、そんなに平気そうにしているんだ。
もっと、壊れてくれなきゃ。
僕の事を突き放してもらわなきゃ。
いきなり口を噤んだ僕を不思議そうに見つめる若井の後頭部を強く引き寄せて無理やり口付けをする。
舌を絡めれば、まだ残ってる僕の精の味がする。
僕を引き戻そうとする、罪の味。
ゆっくりと顔を離して、若井を見つめる。
少し上気した若井の肌。
「僕の全部、受け止めてくれる?」
一瞬だけ目が揺れて、すぐにいつもの優しい目に戻る。
「もちろん。元貴が望むなら」
ーー
気が付くと、僕も若井も一糸まとわぬ姿で向き合っていた。
前戯も無しに僕は若井を穿った。
僕の親友は絶叫したいに違いないのに、必死に唇を噛んでは耐え忍んでいた。
何度も何度も打ち付けるように腰を動かす度に肌のぶつかる音がする。
親友同士で情事に勤しむ僕らを嘲笑うようで、心が冷えていった。
誰の体液かも分からぬような状況で僕らはひたすらぐちゃぐちゃに交わった。
快楽に溺れて、互いを求めては鳴くケダモノ。
その場の熱に酔っ払って僕らは愛を叫び合った。
たとえどんなに突き放そうと、若井ならきっと受け入れてくれると、どこかで期待してたんだ。
でも貪欲な僕はそれだけじゃ足りなかった。
若井からの愛が喉から手が出るほど欲しくて堪らなかった。
行為を彩る嘘だったとしても必死に食らいついた。
この愛の極地が、仮初に過ぎないことは知らないフリをする。
こんなに近くにいるのに、心はどうしてあんなに離れてるんだろう。
僕はそれでも、満たされていた。
ーー
僕らは抱きしめ合って、ベッドの上。
若井はすっかり力尽きてすうすうと寝息を立てている。
熱が少し収まって、ぶるりと震える。
何だか今なら書けそうな気がする。
脱ぎ捨てた衣服を着て、寒そうにしている若井にも着させる。
あちこち悲鳴をあげる身体に鞭をうって、作業部屋へ向かい、待機していたpcを叩き起す。
今までの苦戦が嘘のように、あっさりと出来上がった。
僕は恐らく脳のどこかが覚醒したような、全能感に包まれていた。
何だ、早く若井を頼っていれば良かった。
僕1人では何も出来ないんだから。
いやここまで苦しみきったからこそ出来上がったんだ。
始めからこうしていても、きっと同じものは書けまい。
散々時間を無駄にしておいて何を都合よく考えてる?
まぁ、なんとか締切までに出来上がったんだからいいかもしれないなぁ。
扉を開けて、リビングへと向かう。
締め切ったカーテンを窓ごと開け放つ。
久々に浴びた光は痛いくらいに眩しい。
僕のことを咎めているような気がする。
それにしても陽の光は優しくて暖かい。
相変わらず後ろ向きな思考ばかりしてしまう自分に嫌気がさすけど、でもそれに反論できるくらいには心が晴れつつある。
新しい空気が僕を包んで通り抜けていく。
案外、この世界も悪くないかもなぁ。
今の素直な思いを画面上に吐露すると、途端に大量の賞賛で溢れる。
こんな時間まで反応してくれるなんて熱心だなぁ。
でもきっとそれもすぐに飽きちゃうのかな。
こんなに沢山の人が僕を見てくれてるなんて喜ばしい事だ。
せっかくならリプ返でもしようかな。
でも確執を産むだけ。
後でゆっくり目を通そう。
ぐぅと腹が鳴った。
そういえば何も食べてなかったな。
お詫びに若井に料理でも振る舞おうかな。
あんなに若井が僕のこと大切に思ってるなんて、嬉しかったなぁ。
若井、愛してる…なんてね、冗談。
分かってる。
僕はスマホを持ったままキッチンに向かった。
洗い物がすっかり溜まってて、まずはそれを片さなくちゃ。
うーんでもちょっとは寝たいかも…欠伸が止まらない。
うわぁ包丁汚いなぁ、綺麗にしないと。
疲れが溜まっているからかフラフラする。
危ないから包丁を握りしめたまま座り込んだ。
ぼーっと眺めてて、ふと思ったんだ。
落として怪我してしまわないようにゆっくりと注意を払いながら、力の入るように持ち替える。
何となくだった。
首元にそっと当てて、躊躇うことなく一直線に引き裂いた。
別に好奇心があった訳でもない。
精神のどん底から若井のおかげで這い出た所だった。
切った場所が焼けるように熱い。
あつい、と呟こうにも喉がぐちゃぐちゃになっているから声にならない空気が漏れるだけだった。
意識はどんどんと遠のいていく。
洗剤が少なくなってたから若井と一緒に買いに行こうかな、なんて考えながら、僕は暗闇に落ちていった。
ーー
side wki
鈍い音がしたような気がした。
嫌な予感がして目を覚ますと、隣にいたはずの元貴が見当たらない。
身体中が痛むのを無視して寝室を飛び出す。
リビングに向かうけどどこにも居ない。
ベランダへと続く窓へと誘うように揺れるカーテン。
昨日は閉まっていたはず。
心臓がきゅっと締めつけられながら、どうにか一歩、また一歩外へと踏み出して、柵をしっかり掴みながらおそるおそる地面を見つめるけど、何も見当たらない。
腰が抜けてしまって、ぺたりと冷たい床に座り込む。
不安だった。
自分じゃ元貴の何の力にもならないんじゃないかって。
心を救うなんて無茶なんじゃないかって。
ふと部屋に目を向けると机の上の俺のスマホが光ってる。
震える足で室内に戻り、手に取って確認する。
数分前に元貴からLINEが来ていた。
「朝ごはん何食べたい?」
もし別れを告げるメッセージだったらと怖かった。
素っ気ない短いメッセージだけど、元貴なりに俺の為を思って行動しようとする温かさが伝わってきた。
元貴が今日を生きようとしている。
その事実がなにより嬉しかった。
ものすごく安心した。
昨日一瞬だけ着信があった時、元貴がこのままどこかに行ってしまう予感がしたんだ。
俺に何か伝えたくてトーク画面を開いて、つい電話してしまうなんて俺を頼りたいと言っている証拠に他ならない。
いざ家のドアを開けた時、元貴はすっかり生気を失っていて、一切目が合わなかった。
もし、あの電話に気付いていなかったらと思うとゾッとした。
学生だったあの日、俺は元貴の選んだ道を一生ついて行くと決めたから。
昨日だって元貴がどんな要求をしようと全て飲み込んだ。
例えそれがどんなに俺の心を貪ろうとも、元貴が俺を頼ってくれているからと、奮い立たせた。
どうにか最悪の事態を避けられたのだと、思っていた。
違和感はあった。
リビングの奥にあるキッチンに立っているはずの元貴が見えなかった。
俺が起きた事に気付いて、挨拶のひとつくらいしてきそうなのに。
まぁ、昨日の今日だし、少し照れているのかも。
キッチンの方へ向かい、名前を呼ぶが返事は無い。
再び親友の名を口にしながら、キッチンを覗き込んだ。
「元貴ー…?」
元貴は目を閉じて、食器棚にもたれかかるようにして座り込んでいた。
疲れて寝ちゃったのかな。
「元貴、起きて」
肩をトントンと叩いたけど元貴は目を閉じたまま。
「こんな所で寝たら、風邪ひくよ?」
肩をゆさぶって起こそうとすると、ぐらりと体勢を崩して、床に横たわる元貴。
カシャンと俺の手からこぼれ落ちたスマホが赤く滲む。
軽くなった手が、いや両手が妙にヌルっとする。
ふと自分の手を見ると、赤い。
元貴の、色。
横たわった元貴を包むはおびただしい量の赤。
見渡す限り、元貴の色で染め尽くされていた。
「…ねぇ、狸寝入りしてるんでしょ。
LINE送ってくれてたの見たよ」
悪趣味な冗談だと思った。
こんなドッキリをするなんて最低だなって。
「元貴ー、そろそろ起きないと俺怒るよ」
別に怒るつもりなんて一切無かったけど、今にでも焦った元貴が飛び起きてくれるんじゃないかって待ってた。
待っていたかった。
分かってた。
あの鈍い音は元貴が頭を打った音だって。
だって寝室の扉を開けた瞬間、明らかに鉄の臭いがしていた。
元貴の匂いって、昨日は沢山汗をかいたからすこし男っぽくて、ゾクゾクするような甘い香りのはずなのに。
昨日まで、あんなに近くにいて沢山嗅いだから知っている。
俺を求めて抱きしめてくれた体温だって知ってる。
ついさっき、LINE送ってくれてたのに。
ほんの少し前まで、元貴は確かに生きていたのに。
なんで、こんなに冷たいの…?
立ち続ける力も入らず床に座り込む。
緩んだ俺の後ろから、じんわりと漏れだしていく 昨日の情事の跡。
俺の中の元貴の精だけが、まだ生きている。
どんどんと垂れてしまう液を必死にかき集めては自分の穴に戻そうとする。
しかし、時間が経ってすっかりサラサラになってしまっているソレは嘲笑うかのように零れ落ち、俺の衣服にとけていく。
「…あ、ぁ゛…ッあ…あぁ…」
俺が元貴のことをどこにも行けないように縛っていたら。
俺が寝ずに元貴から目を離さずにいたら。
俺があと数分早く起きていたら。
元貴はまだ生きていたかもしれないのに。
とめどない後悔と自己嫌悪と絶望にかられて、俺は狂ったように叫んでいた。
神様、どうか元貴を生き返らせてください、と。
俺がいくら情けなく泣こうが咽ぼうが、元貴はピクリともしない。
神だろうと悪魔だろうと祈ってやる。
元貴の命が戻るなら、俺はどうなったっていい。
元貴が羽ばたくにはこの世界が狭すぎたのか。
それとも俺がただ無力だっただけなのか。
それでも、元貴が選んだ道を
ずっとついていくって決めたから。
「待っててね元貴、すぐ追いつくから」
元貴が安心してくれるよう、頬を撫でながら出来るだけ穏やかに優しい笑顔で囁く。
元貴の手から包丁を取ろうとしたけどこびり付いた血が固まってしまって中々うまくいかない。
同じ包丁で向かいたかったけど仕方ない。
諦めて新しい包丁を取ろうとして立ち上がろうとした時、ふと電源のついた元貴のスマホが目に入る。
それは俺の画面とよく似ているけど、少し違う。
『曲出来たから、ご飯食べたら一緒に聴いて欲しい』
元貴が送り損ねた最期の言葉。
いつだって言われずとも一緒に聴いてきたのに。
最期の最期まで、元貴は素直じゃない。
「…ひとりにして、ごめんね」
「もうちょっとだけ、待っててね」
重たい身体を何とか動かして、床を這って進む。
向かう先は扉が開いたままの作業部屋。
付きっぱなしのモニターの青白い光が俺を誘う。
元貴がいつも座っていた椅子にしがみつく。
あぁ、元貴の匂いがする。
でも今はやることがある。
制作ソフトを立ち上げ、更新履歴順にファイルを並べ替える。
元貴の生きていた証がずらっと並んでいる。
震える手でマウスを動かし、一番新しいファイルを読み込んで、エクスポートの設定をし、書き出しが終わるのを待つ。
普段ならなんて事ない時間のはずなのに、いつまでも終わらないような感覚がした。
ようやく出来上がったmp3ファイルを、自分のスマホに転送する。
そして足がもつれそうになりながら、再び元貴の前に戻る。
「イヤホン持ってくればよかったね。
ごめんねちょっと音質悪いや」
意を決して元貴の傍に座り、再生ボタンを押す。
流れ始めた音のひとつひとつが、俺の頭を、背中を、心を優しく撫でていく。
ゆっくりと息を吸う音がする。
元貴の歌声をひとつも聴き逃したくないのに歌詞が全然入ってこなかった。
彼の紡ぐ音そのものが愛おしくて切なくて苦しい。
元貴の僅かに聴こえる息遣いに酷く落ち着いて、安堵する。
フィナーレに向かってさらに高まるボルテージ。
確かにその瞬間元貴が生きていたんだと刻まれた電子の波は俺を揺れ動かす。
曲が終わった事に気付かないくらい、俺は酔いしれていた。
静寂が訪れる事に耐えられなくて、何度も再生し続けた。
少しずつ歌詞を聞き取って、噛み砕いて、飲み込む。
あまりにも尊い元貴の思いが俺には眩しい。
再び静寂が訪れる。
スマホの画面を見ると、まだ少し再生時間があることに気がついた。
わずか数秒、注意深く聞かなければ
分からないくらい小さな音量で
「ギター頑張って」
思わず笑ってしまった。
どこまでいっても俺は元貴のバンドメンバーなんだ。
元貴なりに信頼して期待してくれてるって事はよく知ってる。
でもさ、あんな歌詞書いたんだから、愛の言葉のひとつくらい残してくれたっていいのに、って思わずにはいられない。
「…まぁ、元貴、素直じゃないもんね」
そういえば、もう1個元貴のお願いが残ってたから、 この曲は、来世までの宿題にする事にした。
「元貴、まだ作り終わってなかったら、俺にも手伝わさせてね」
俺もしっかりと手で包丁を握りしめる。
あぁ、早く一緒に朝ごはんが食べたい。
まどろみの中で、俺の耳には元貴の歌が響いていた。
ーー
side …
鬱は、治ることのない一生涯の付きまとい。
その性質はバネのようなもの。
少しずつマイナスがゼロに近くなってようやく生活できるようになったと思うと、手を離した途端あっという間に元に戻り。
世界は色を失って、やる気も期待も何も出来ない。
そんな中でどうにか色を取り戻そうともがいて、 すこしだけ、布団から出てみようと思った。
ちょっとだけ、水を飲もうと思った。
もうちょっと、生きてみようと思った。
そして、死のうと思った。
何となくで死という極端な選択をとれるくらいには 僕は追い詰められてたんだろうな。
その瞬間がものすごく絶望してた訳では無かった。
むしろ幸せだったような気がする。
この幸せの最中で死にたいだとか、作品が完成して満足したから死にたいだとか思った訳じゃない。
それまでに途方もなく辛い思いをしてずっと生死を考えてきたからさ。
もう既に思考は済んでたんだ。
そしてその選択がいつの間にか日常に入り込んでたんだ。
それを実行に移すだけの気力が無かっただけ。
若井に救われて、活力をもらった。
そして、何となくその選択肢を思い出しただけ。
ただそれだけだった。
本日の気まぐれ
(完)
ーー
コメント
10件
表現の仕方が本当に美しい、、、 これからも楽しみにしています!
やばい、ほんとに表現力が素晴らしすぎて泣けました
苦しくてどうしようもないけど、どこか綺麗な作品…最高すぎます こんなに素晴らしいものを生み出して下さりありがとうございます。