コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
登場人物
主人公【海月 優弦】ウミツキ ユズル
友達【暁 志弦】アカツキ シズル
優弦の関係者【星生 璃舞】セイリュウ リム
(璃舞)「久しぶりだね?優弦。」
「……ッ。」
(璃舞)「昨日は急に帰っちゃったから驚いたよ。」
「……ッッ。」
璃舞の目を見られず、下を向く俺の顔を、覗き込む様に、璃舞は、微笑みながら俺に話しかけて来る。
(璃舞)「優弦?」
「志弦君。遊びに行くって、何処に行くのかな。」
(志弦)「あ、えっと、カラオケぐらいしか、思い浮かばなかったっす!」
(璃舞)「じゃあ、カラオケに行こうか。」
「其れで良い?優弦。」
「……う…ん…ッ。」
落ち着いて息をするので精一杯だが、何とか、返事を返す。今にも、身体がガタガタと震え出しそうだ。また、体の感覚がない。自分の心臓の脈も、音も、大きく感じる。
(璃舞)「それじゃあ、行こっか。」
カラオケに着いた時には、カラオケに行く迄の記憶は、殆ど無かった。
早速、カラオケルームに入り、志弦と璃舞は、飲み物の注文を始める。
(志弦)「優弦は何が飲みたい?」
「み…ッみず…ッッ。」
(志弦)「オッケー!分かった——。」
「優弦、大丈夫か?めちゃくちゃ顔色悪いぞ…?!」
「ハ……ッッハ…ッ…ハァ……ッッ。」
頑張って息を整えようとすればする程、息苦しくなっていく。
落ち着け、落ち着け、落ち着け————!
そんな気持ちとは真逆に、どんどん息が苦しくなる。少しだが、体も、カタカタと震えているのが分かる。心臓の音で、また、周りの音が、聞こえなくなってしまいそうだ。
「ご、め…ッちょ…ッッと……ッ!」
水が来るのを待って居られず、俺は、カラオケルームから飛び出した。トイレへ駆け込み、落ち着こうと、深呼吸をしようとするが、一向に、落ち着く気配が無い。
「ハァ……ッハァ…ッハ…ッッハァ…ッ。」
「ハ…ッッハ……ッッ…ハッ。」
立っていられなくなり、俺は、洗面台の前でしゃがみ込んで居た。
(璃舞)「優弦。大丈夫?」
「………ッ?!」
声がした方に、思わず視線を向けた。
其処には、優しい、嫌な笑みを浮かべた璃舞が立って居た。
(璃舞)「優弦。体調でも悪いの?」
カツ——。カツ——。カツ——————。
一歩一歩、俺の元へと近づいて来る音が、反響している様に感じる。俺は、体の感覚が無い事すらも、分からなくなっていた。其れでも、俺の身体が、コイツは危ないと叫んでいるのは分かった。防衛本能の御蔭か、さっきの蹲っていた体が、嘘の様に、俺の体は立ち上がった。
「…ッ。」
「く、来るな…ッ。」
「俺に、近寄るな…ッッ。」
(璃舞)「え〜?何で?」
璃舞は、俺の言う事なんか聞くはずも無く、嫌な笑みを浮かべながら、其の足を止める気配を見せない。
俺の足も、自然と、後退りを仕始める。逃げ出してしまいたいが、璃舞が、そう簡単に逃がしてくれる筈が無い。それが分かっているから、後退りをする事しか出来ない。
トンッ
背中が、壁に当たった音がした。
到頭、此れ以上逃げられない所迄、追い詰められてしまった。
(璃舞)「ねぇ。優弦。」
「如何して、〝俺〟から遠ざかって行くの?」
璃舞の発する声、一つ一つが、無駄に甘くて、重くて、気持ちが悪い。
(璃舞)「ねぇ。優弦?」
そう言うと、璃舞は、俺の頬に手を伸ばした。
「………ッ?!!」
頬に触れられた瞬間、鳥肌が立ち、ビクッと体が飛び跳ねた。
(璃舞)「優弦、全然俺と話ししてくれないし、悲しいな?」
「志弦君とは楽しそうに話してるのに。」
「……ッ。」
(璃舞)「何時もマスクしてて、顔も見せてくれないし、昨日だって、さっさと帰っちゃうしさぁ。」
「今だって、俺から逃げてたでしょ。」
「ハ……ッ。」
体が、ガクガクと震え始めた。
(璃舞)「俺の目も見てくれない様だし。」
そう言うと、璃舞は、グイッと、俺の顔を上へ向かせた。
「…ッあ……ッ…。」
奥の見えない瞳。だが、璃舞は全て見えている様な。全て、見られている様な。そんな気がして、怖くて、気持ち悪くてならない。
(璃舞)「優弦と志弦君は、随分と、仲が良いみたいだね。」
「なのに、俺とは仲良くしてくれないの?」
「優弦と俺は、友達なんかより、もっとずっと深い関係でしょ?」
「…ハ…ッ…おま、えと…ッッ仲良く……ッ?」
「ンなの…ッする訳ないだろ…ッッ!」
(璃舞)「ふーん。」
「でも、優弦の事を一番知ってるのは俺だし、一番仲良いのも俺だし、其れを自慢したいからさ。」
「志弦君に、俺と優弦の仲良しエピソード話しちゃおっかな?」
「……ッ?!」
「え…ッ…やめ……ッッ!」
(璃舞)「だったらさぁ…。俺は優弦の彼氏なんだから、避けないで、普通に接してよ。」
「お、お前はもう…俺の彼氏じゃ…無い…ッ。」
(璃舞)「はぁ…。」
「分かった。じゃあ、俺の事を彼氏って思わなくて良いから、普通に接して?避けたらダメだよ。」
「ただ、俺は優弦の彼氏辞めたつもり無いからね。」
「……ッ。」
(璃舞)「分かった?優弦。」
璃舞の言う事になんて、絶対に従いたく無い。
「…わ、かった…ッ。」
だが、従わなければ、璃舞は何をするか解らないと言う恐怖が、反抗心よりも勝ってしまった。