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僕は中三の春に、誘拐にあったらしい。
あったらしいなんて他人行儀な…なんて思うかもしれないが、しょうがない。
僕は記憶の大部分を消去されていて、自分のことすら分からない。
覚えていることと言えば
僕は誘拐されたということ
僕の母が人質になってること
僕はヒーローになりたかったこと
僕には雄英生の幼馴染がいるということ。
名前はここにいる敵から呼ばれたことがある。
僕の名前はイズクらしい。
そして僕には個性がある。
怖いけど、すごい個性。
無理やり埋め込まれた個性。
個性『hope』望み。
僕が心の底から望んだ能力を、自分に付与できる。
《空が飛びたい》ならば翼。
《敵を倒す力がほしい》ならば人並み外れた筋肉を。
《傷を直したい》ならば傷を癒す光を。
怖いけど、すごい個性。
だけど個性を使うと全身が痛い。
それはもう..激痛なんて言葉では足りないぐらい痛くなる。
なぜって?
無理やり埋め込まれた個性は僕の体に合わないからだ。
けど僕は個性を使う。
なぜだかは分からない。
怖いのに、怖くないんだ。
━━━━━━━━━━━━相澤side
今日のUSJでの訓練にオールマイトが来れないらしい。
活動限界までヒーロー活動を続けたとか。
なんて非合理的なのだろうか。
相澤「…」
生徒達はオールマイトがいなくても、13号に熱中してる。
臨機応変なのはいい事だ。
にしても注意事項がどんどん増えていくな..。
瞬間、中央広場に黒い影が。
相澤「全員まとまって動くな!!!」
上鳴「えっなになに?!」
切島「入試みたいな、もう始まってますパターン?」
違う
これは絶対。
相澤「本物の敵だ!!!」
そして俺は駆け出した。
この人数を1人で相手取るのは不可能だ。
だが合理的。
俺は生徒を安心させなければならないからだ。
麗日「13号先生!!!」
麗日の叫び声が聞こえた。
13号がやられたらしい。
やばい状況だ、生徒を守る先生が足りない。
「イズク..、?」
誰の声だか分からんが、クラスの誰かが誰かをこう呼んだ。
うちのクラスに《イズク》なんてものは居ない。
ならば敵に知り合いでもいたのか..。
この人数だ、近所のジジイがいたって可能性は十分にある。
爆豪「イズクッ!!!」
さっきの声の正体は爆豪らしい。
珍しく動揺をさらけ出して叫んでいる。
大事な相手だったのか?
そんなこと、考えている暇はないか..
なんせ相手が多すぎる。
一人一人は弱い。
だが多い。
厄介でめんどくさいパターンだ。
「「キャーー!!」」
「「なんだこれ?!」」
生徒達の方から声がする。
そういえば前方の敵が1人かけている。
しまった
俺のミスだ。
振り返れば、俺の生徒のほとんどが、姿を消していた。
━━━━━━━━━━━━ 峰田side
黒い霧に包まれたオイラは、いつの間にか水の中に沈んでた。
蛙水「っ大丈夫?峰田ちゃん」
峰田「蛙水〜〜〜っ!」
蛙水はオイラを拾い、あたりを見渡しながら傍に浮いていた船の上に乗った。
水中には、敵が大勢いる。
蛙水「どうやら私たちだけのようね」
やばいやばいやばい
戦力は蛙水だけ、もちろんオイラは戦力外。
蛙水だけでこの数の敵を倒す?無理だ。
蛙水「ケロ..大変なことになってしまったわね」
峰田「こんな状況でなんでそんなに冷静でいられるんだよ!」
蛙水「こんな状況だからこそよ、峰田ちゃん」
オイラは意味がわかんなかった。
なんで敵に囲まれて冷静でいられるのか。
死ぬかもしれねぇのに。
峰田「死にたくねぇよ、オイラはヒーローになればモテると思ってヒーロー目指してんのによォ!!」
蛙水「不純ね」
峰田「死ぬかもなんて思わなかったんだよ !」
オイラは死にたくなんかない
なんで敵と戦わなきゃなんねぇんだ。
オイラは学生。
誰がどう考えてもまだ庇護対象だろう。
?「っ大丈夫ですか?!」
突然の声に、オイラと蛙水は驚いた。
だってそうだろ?
まるでNo.2ヒーロー、ホークスのような真っ赤な翼を持ったやつが来たら、誰でも驚く。
蛙水「っあなた、敵よね」
そうだ、こいつは雄英関係者じゃない。
クラスメイトでも、先生でもないんだから。
?「うん、敵だよ」
峰田「だァァァ!!こっち来んなよ!敵!」
怖い、頭がそれでいっぱいになる。
なあ、神様。
なんでこんな敵に翼なんなやったんだよ?
?「怖い思いさせてごめんね、学生なのに」
峰田「なら襲撃なんかかけんなよ!」
蛙水「そうね、謝るぐらいなら辞めて欲しいわ」
?「..そうだよね」
そう言いながら、男はフードを脱いだ。
そうしたら、オイラ達と同年代ぐらいの若い男の子だったことがわかった。
イズク「僕の名前はイズク。君たちを助けに来た」
緑色のふわふわとした髪。
頬に散らばるソバカス。
幼い童顔。
蛙水「助けに来たって、どういうことかしら」
イズク「僕は敵だけど、敵の味方じゃない」
峰田「余計に意味分かんねぇよ!」
イズク「・・・脅されてるんだ」
蛙水「脅し?」
イズク「うん、お母さんが人質。」
峰田「ひとっ?!」
イズク「実は君たちにお願いがあるんだ」
蛙水「・・・いいわ、今は聞くだけだけど」
イズク「うん、ありがとう」
峰田「いいのかよ!敵となんか話して!」
ボソッ
蛙水「気づかないの?峰田ちゃん」
ボソッ
峰田「なんだよ!!怖いだけじゃんか!」
ボソッ
蛙水「この人、そうとう強いわよ」
ボソッ
峰田「っ?!」
蛙水「聞くだけなら、いいんじゃないかしら」
ボソッ
イズク「もう、話していいかな」
蛙水「ええ、待たせてしまってごめんなさい」
イズク「いいんだ、敵の話なんか聞いてくれるだけでもありがたいからね。」
峰田「・・・」
イズク「君達のクラスに僕の幼馴染がいるんだ。その人に僕のお母さんのことを教えて欲しい。」
蛙水「人質なのよね?」
イズク「うん、だけど捕らえられてる訳じゃなくて、簡単に殺せるよって感じなんだ 」
蛙水「つまり保護してほしいってこと?」
イズク「うん、お願いできるかな..」
蛙水「・・・分かったわ、引き受ける」
峰田「聞くだけじゃねぇのかよ!?」
蛙水「私達はヒーロー志望。このお願いは聞くべきよ」
イズク「っ..本当に、ありがとう」
蛙水「いいのよ、その幼馴染は爆豪ちゃんでいいのかしら?」
ああ、確かに爆豪が「いずく」って叫んでた。
そっかこいつの名前だったんだよな..
幼馴染なら納得いくけど、あいつ敵の幼馴染だったのか…。
イズク「ばくごう…」
蛙水「あら、ごめんなさい..違ったかしら」
イズク「下の、名前を聞いてもいいな?」
蛙水「爆豪勝己。彼のフルネームよ」
イズク「ばくごうかつき..かつき…。」
するとイズクは天井を見上げて、満足そうに笑った。
イズク「うん、合ってる。彼だ。」
イズクはクスッと笑った。
そしてこっちを見て、真剣な表情を浮かべる。
その変わりようにオイラはギョッとした。
イズク「お礼..って訳でもないけど、ちゃんと君達を助けるよ」
蛙水「ケロッそうしてくれると助かるわ」
するとイズクは手を突き出した。
そして人差し指を天上に向けていう。
イズク「僕の個性、『hope』望み。この個性を使えば大抵の事はできる。 」
蛙水「大抵のこと?」
イズク「うん、ただ僕が触れられる範囲内の話だけどね」
蛙水「さっきの翼もそうなのかしら」
イズク「うん、空を飛びたいと願った。 」
蛙水「すごい個性ね」
イズク「..ありがとう、君達の個性も聞いていいかな?」
峰田「お、教える訳ないだろ?!お前敵なんだろ?!無理だって!!」
無理だ、どう考えてもおかしい。
敵に個性教えて、弱点突かれて殺されたら..
オイラにはどうすることもできない。
蛙水「イズクちゃんには悪いけど、こればっかりはみ峰田ちゃんに同意見よ 」
イズク「そっか..そうだね、」
するとイズクは何やらブツブツと呟き出した。
イズク「っよし、アバウトな情報しかないけど、作戦ができた」
イズク「峰田くん、そのモギモギを下の水の中に投げてくれるかな
奴らは君の個性を知らない。
だからまだ触らないはずだよ
次に僕が奴らを1箇所に集める。
その時にモギモギも巻き込む。
そしたら人間ダルマの完成さ。
蛙水さんは僕達を連れて中央広場まで行けるかな」
蛙水「聞かなずとも、調べているのね」
イズク「僕、こういうのが得意らしくてね」
蛙水「でも、イズクちゃんが知っているのなら他の敵も知ってるんじゃないかしら」
イズク「ううん、僕だけが知ってる」
なんなんだよこいつら..。
蛙水までおかしくなっちまった。
峰田「蛙水!敵なんかの作戦に耳を貸す気か?!..正気とは思えねぇよ!」
蛙水「峰田ちゃん… 」
イズク「ごめんね、峰田くん。 」
峰田「ッ」
イズク「怖いよね、僕は敵。君は学生。当たり前だよね」
峰田「怖いに決まってんだろうが!」
イズク「今だけ、僕を信じて欲しいんだ」
峰田「信じろ?無理だろ!」
蛙水「峰田ちゃん」
峰田「んだよ蛙水!」
蛙水「彼の手、表情を見てみて」
峰田「手?表情…」
蛙水に言われて、初めてイズクの表情に意識を向けた。
活気に満ちてるのに、悲しそうな顔。
手は震えてる。
もしかして、怖いのか?お前も。
初めから..オイラと同じ気持ちだったのか?
峰田「…わかった、信じればいいんだろ!」
イズク「っありがとう、峰田くん、蛙水さん」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
それからオイラ達は、イズクの立てた作戦どうりに動いた。
すると面白いぐらいにスっと敵を倒すこと、逃げることに成功。
だけど、アイツが放ったパンチ。
それだけが問題だった。
峰田「お前、ボロボロじゃねぇか..」
イズクの腕はパンチの衝撃で見るも無惨なほどにボロボロになっていた。
蛙水「それ、大丈夫には見えないわ」
イズクはまだ無事な左手で、壊れた右腕を握りしめて、オイラの方を向いた。
イズク「ううん、大丈夫だよ。慣れてる」
━━━━━━━━━━━蛙水side
イズクと名乗った、私と同じぐらいの男の子。
初めは敵と知って驚いたけれど、今は怖くは無いの。
蛙水「..後で、治療をさせてちょうだい」
イズク「そうしてくれると助かるかな..」
口ではそう言っているけれど、きっと私の話なんか今の彼には届いていないのよね。
その目を見ていれば、嫌でもわかっちゃうの。
イズク「っ見えた!中央広場!」
イズクちゃんのその言葉を聞いて、先生に会えるって..安心したの。
けど、そこには地獄が広がっていたのよ。
蛙水「相澤先生っ」
峰田「先生!!」
血だらけの相澤先生。
血だらけのイレイザーヘッド。
私たち生徒2人は、思わず飛び出しそうになったわ。
イズク「君たちは絶対、動かないで。」
それだけ言い残すと、イズクちゃんは駆け出した。
私たちもヒーロー志望として飛び出そうとしたけれど、金縛りにでもかかったかのように体が動かなかった。
━━━━━━━━━━━━相澤side
きつい。
今の状況はその一言に尽きる。
生徒が数名、この場に残されているのも痛い。
あまりにこの敵が強すぎる。
相澤「っ..ぁ”“」
筋肉ダルマの敵は厄介だ。
純粋な力では通用しない。
個性を消しても、たいした影響がない。
殉職。
その二文字が頭をよぎる。
途端に、色んな感情が溢れ出てきた。
今年の生徒は豊作だった、きっと全員がいいヒーローになる。
山田より先に逝くのは癪に障るな
白雲は怒るだろうか。
13号は無事なのか?生きていて欲しい。
今朝に見た黒猫、かわいかったな。
大事なことからどうでもいいことまで、これが走馬灯ってやつか。
?「っイレイザー!諦めちゃダメだ!!」
視界がクリアに、広がった。
透き通るような..正義感に溢れたその声。
声の持ち主の方を向こうとするが、自分の体が暖かい光に包まれたことで叶わなかった。
だが不思議なことに、体の痛みが消えていく。
使い物にならなかった左目が見えてる。
?「生徒達があなたに期待してる。」
期待。
そうだ、俺はあいつらをヒーローにしなくてはならない。
こんなとこで死ねない。
相澤「お前、敵じゃなかったのか」
?「僕はイズク、敵だけど..あなたの味方。」
個性もそうだが、こいつ自信から不思議なオーラを感じた。
俺はこれに近しいものを知ってる。
きっとこれは..
イズク「….あとは、任せてください」
相澤「俺は動けるぞ」
イズク「あなたは生徒を守ってください」
緑色の瞳が、少し離れた場所に向く。
そこには俺の生徒が2人いた。
相澤「あいつら..!!」
イズク「頼みましたからね」
すると男は空を飛んだ。
さっきまでは存在しなかった、赤い翼を身につけて。
死柄木「オイオイ、その行動の意味がわかってんだろうな?」
イズク「っもちろん、わかってるさ」
死柄木「お前、イカれてんな」
イズク「お前らの頼みの綱は脳無、違うか?」
黒霧「死柄木、まずいですよ」
死柄木「あ”?」
黒霧「彼なら十分に力がある、本気です」
イズクが何やら構えた。
攻撃か?でも個性はあの翼…。
いや、治療..なのかもしれない。
どちらにせよ攻撃できるとは思えなかった。
━━━━━━━━━━━━イズクside
大丈夫。怖くない。
あの二人の生徒さんはイレイザーに任せれば平気だろうし、彼の傷は完治したはず。
うん、もう気にする事はない。
僕は死柄木の目をじっとみた。
彼はやりすぎたのだ。
個性《hope》望み。
心の底から望んだ力を手に入れる個性。
僕が今、1番望んでいるのは…。
《あなたのヒーローとしての大事なことは?》《 そうですね..決めゼリフ、ですかな》
《なぜ?》
《そのセリフが、 私を象徴するからですかね》
「「「「「「スマーーッシュ!!!!」」」」」」
━━━━━━━━━オールマイトside
私が駆けつけた頃には、戦いは終わっていた。
相澤くんや13号が致命傷を食らったと飯田少年から聞き、急ぎ来たのだが..。
オールマイト「相澤くん、無事のようだね」
相澤「….そうですね、俺は無事です」
オールマイト「13号も、無事なのかい?」
すると相澤くんは黙り込んでしまった。
13号に何かあったのだろうか。
相澤「13号は一応、無事です」
それを聞いた瞬間に心がホットした。
もしものことが起こっまた時はどうしようかと本当に肝を冷やした。
オールマイト「君らが無事なら生徒も無事なのだろうね、よく頑張ったよ」
プロヒーローによって先導されて避難してくる生徒達は、どこか成長を感じさせた。
蛙水&峰田「オールマイト先生!!」
突然、相澤くんと私の間に生徒2名割って入ってきた。
その2人の腕の中に、少年が1人。
オールマイト「っ!酷い怪我じゃないか!!」
蛙水「そうなの、お願い..助けて」
あまりに酷い怪我をした少年に驚いた。
緑色のフアフアとしたくせっ毛、顔のソバカス。
身長や目測体重などを考慮しても、まだ高校生ぐらいの子供。
だが、見たことがない。
オールマイト「その子、敵..なのか?」
相澤「違います」
意外な人物の答えに、心臓が1つ大きな音を立てた。
相澤「敵を名乗ってましたが、俺にはヒーロー志望以外の何者にも見えなかった。」
相澤くんは良くも悪くも冷徹。
彼がここまで言うのだ、そうなのだろう。
オールマイト「ならば早く手当を」
緑の少年「ッ..だ…..め..はな…ぇて」
オールマイト「目を覚ましたか!」
すると驚いたことに、緑の少年はボロボロの体から真っ赤の翼を生やして、舞い上がった。
蛙水「イズクちゃん!動いちゃダメ!!」
峰田「死にたいのか?!動くなよぉぉ!!」
少年少女の思いとは裏腹に、緑の少年は敵がいたであろう中央広場へ飛んで行った。
そして中央広場のど真ん中で翼を下ろす。
オールマイト「冗談抜きで死ぬぞ!少年!!」
これはマジだ。
あの怪我の仕方は尋常ではない。
きっと本来は絶対安静の身なのだろう。
緑の少年「…ッ…ッ…」
少年が、微笑んだ。
この長い人生で、それは初めて見る笑顔。
笑っているのに..とても苦しそうで、辛そうな笑顔。
緑の少年「…」
私は見惚れてしまっていたらしい。
それに気づいてから、猛ダッシュで少年の元へと駆け出した。
すると彼の方から小さな爆発音が何度も鳴り響いた。
ベチャ
グロテスクな音が、辺りを包む。
それは緑の少年の方からした。
恐る恐る彼の方を見る。
緑の少年の体は、私が見た時よりもはるかにズタボロだった。
まるで内部から攻撃を受けたように。
血管という血管が爆発音したかのように。
いたるところの皮膚が破れていた。
底から血液が吹き出す。
彼は死ぬのだと、本能で悟った。
そして同時に、この騒動の主犯が分かった。
オールマイト「ALLFORONEっ….!!!!!」
きっと緑の少年はオールフォーワンによって個性を与えられると同時に、呪縛をかけられたのだろう。
以前にタルタロスの囚人が、「オールフォーワン」の名前を口にした途端に体が内部から破裂したという。
今の緑の少年と、同じ状態だった。
オールマイト「少年!少年!!意識はあるか!!」
返事ながない。
・・・脈も、少しずつ弱まっている。
蛙水「オールマイト、イズクちゃんは助かるのよね?」
とても不安なのだろう。
蛙水少女の手が震えている。
オールマイト「大丈夫、彼は私が救う。」
応急処置を施し、リカバリーガールのいる雄英へ行かなくては。
爆豪「い..ずく….. 」
驚いたことに、爆豪少年がこちらに走ってくる。
それはもう、ダッシュで。
切島「ちょ、爆豪!どうしたんだよ?!」
爆豪「イズク、ダメだ..死ぬんじゃねぇ..!!」
ボロボロと涙を流す彼は、とても痛いしかった。
しかしどこか彼らしくないと感じる。
オールマイト「爆豪少年!一旦離れてくれ、応急処置をしなくては..」
爆豪「イズク、起きろ..目を開けろよ..なぁ!!」
オールマイト「「爆豪少年!!!」」
ようやく私に気づいたらしい。
爆豪少年が、ほんの少しだけ緑の少年から距離をとる。
爆豪「…こいつ、死ぬんか」
絞り出したような、震えた声。
相澤「助ける。こいつは死ぬべきじゃない」
相澤くんにセリフを取られてしまった。
私も全く同意見なのだ。
ミッドナイト「私が処置をします。離れて」
そうして私達は緑の少年から距離をとる。
それから私達は爆豪少年に聞かなくてはならないのだらう。
オールマイト「彼とは、知り合いかい?」
蛙水少女と峰田少年、そして切島少年が身構える。
私が到着するまでに何があったというのだ。
切島「あの、アイツが戦ってるの..俺、爆豪と見てて…」
蛙水「私たちも、見てたわ」
切島「なんつーか、すっげぇ男らしくてさ..けど、アイツは敵と一緒にここに現れた。」
それが私は1番不思議に感じていた。
なぜ彼はここにいるのか。
どうして敵と戦っていたのか。
爆豪「違ぇ。」
爆豪少年が静かに口を開いた。
爆豪「あいつは、緑谷出久。俺らと同じヒーロー志望の中坊だった。」
ヒーロー志望。
中坊。
爆豪少年。
ずっと引っかかっていた。
どこかで見たことのある少年。
私の中で、3つの要素が結びつく。
《無個性でも、あなたみたいな..ヒーローになれますかっ?!》
そうだ、彼だ。
あの日の..彼だ。
爆豪「ヘドロ事件、知らねぇやつはいねぇよな…。」
ヘドロ事件。
私はあの場にいた。
爆豪「あの日、こいつは失踪した。」
失踪。
行方不明。
ああ、彼になんと謝ればいいのだろうか。
あの日、私はヘドロに向かって飛び出した彼を追いかけようとした。
私の発言を撤回すべく。
しかし迫り来るマスコミと、後処理に追われ、結局彼を探すことを諦めたのだ。
蛙水「爆豪、ちょっといいかしら」
突然、蛙水少女が口を開いた。
峰田少年がそれにづつく。
峰田「お前、出久の幼馴染なんだよな」
爆豪少年が頷く。
ここまで大人しい彼は初めて見た。
蛙水「出久ちゃんからあなたに伝えて欲しいと頼まれたことがあるの。」
爆豪「伝言..?」
蛙水「ええ、彼は敵だけど、敵の味方では無いと言っていたわ。」
爆豪「..敵。」
蛙水「それと、出久ちゃんのお母さんが人質になっているから、保護をして欲しいそうよ」
爆豪「..引子さん、」
どうやら爆豪少年はその母親を知っているらしい。
それに人質とは…。
オールフォーワンのことが本当に許せない。
爆豪「相澤先生、頼めるか?」
相澤「ああ、すぐに手配する」
相澤くんが電波の届くであろう外へと足を向けた。
ミッドナイト「外に車がありますよね、この男の子を早く..」
爆豪「出久っ..」
身体中が包帯でグルグルになった幼馴染の手を、爆豪少年が握る。
ミッドナイト「八百万さんには感謝しないとね、包帯が足りなかったのだけど、作ってくれたから。」
八百万「..我々A組のほとんどが、その方の戦いぶりを拝見させて頂いておりましたので。」
避難をしていた学生達が、ぞろぞろと集まってきた。
葉隠「その子、大丈夫なんだよね?」
尾白「緑谷くん..無事を祈ってるよ。」
ミッドナイト「ええ、助けるわ」
ミッドナイトは少年を連れて、車の待つ外へ出ていった。
残された私たちは少し時間を置いてから、バスに乗って同じく雄英へと向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈
飯田「..不謹慎であることは、重々承知の上で聞く。」
飯田少年は今回の騒動で、プロヒーローに救援を求めに学校まで戻っていたために緑谷少年との面識はない。
それゆえに疑問なのだろう。
飯田「緑谷という人、敵では無いのか?」
蛙水「飯田ちゃん!!」
飯田「、すまないが..俺には君たちの行動が理解しかねる。 」
確かに飯田少年の言い分は最もだろう。
飯田少年からしてみれば
敵と共に現れた、得体の知れない人物。
それだけで情報が完結してしまっている。
爆豪「テメェの言うことも分かるわ。」
飯田「爆豪くん、ならなぜ..」
爆豪「俺らにもにも事情があんだよ」
その爆豪少年の発言を最後に、バスが雄英高校に到着するまで、誰も何も喋らなかった。
━━━━━━リカバリーガールside
バタバタといつにも増してうるさいと思っていたら、ボロボロな男の子を抱えたオールマイトが走ってきて、肝が冷えた。
オールマイト「重症です!どうか手当を..」
リカバリーガール「わかっとるわい!!」
とにかく出血が酷い。
止血を….と思っても身体中から血が吹きでていて、どこから止血するべきか分からない。
リカバリーガール「..すまないね」
こうなれば強硬手段。
私の力加減で、この子の運命が決まる。
リカバリーガール「チユ〜〜〜〜〜」
ある程度の血が止まるまで。
この子の体力が持つぐらいまで。
ーーーことなくして、血が止まった。
リカバリーガール「さて、」
一山超えたところで 状況はあまり変化しない。
なんせ重症中の重症だ。
いたるところで破けている皮膚。
足りない血液。
あれはなんだったか…そうだ呪術廻戦とかいう流行りのアニメ。
あのアニメにでてきた野薔薇という女の子に限りなく近しい状態だ。
もうほとんど使い物にならないであろう手足に眼球。
手足は神経さえ繋げば何とかなるが、眼球はそうはいかない。
丸々変えなければ、もう二度と色を見ることができないだろう。
できることなら..こんな若人に、そんな仕打ちはしたくない。
爆豪「ばあさん」
1年A組17番、爆豪勝己。
彼がこの状況を一変させる。
━━━━━━━━━━イズクside
ここは、どこだろうか。
天国だろうか。
そうだ、僕は死んだのだ。
あの戦いで。
頭がふあふあとしてる。
お母さん、元気かな。
保護はして貰えたのだろうか..。
かっちゃんに任せたのだ、心配ないだろう。
相澤「緑谷。」
僕の視界に、まだ生きているはずのヒーローが映りこんだ。
イズク「..ぁ..““」
相澤「あまり声を出すな、体に響く。」
優しく頭を撫でられた。
何年ぶりだろう。
何年?
あれ、そういえばかっちゃんって誰だ?
相澤「一方的に聞くだけでいい。聞いてくれ」
イレイザーヘッドが僕に向かって喋りかける。
彼の顔を見ようとしたが、体が全く動かなかった。
相澤「お前の本名は、緑谷出久、ヒーロー志望の中坊だったそうだ。」
緑谷出久….僕の名前。
初めて聞いたはずのその名前が、変に体に馴染んだ。
━━━━━━━━━━━緑谷出久side
相澤「お前は中学生の春に誘拐された」
僕は誘拐されたのか、初めて知った。
いや、少し考えればわかる事だ。
なんで今まで気づかなかったんだろ
相澤「そして、洗脳され、個性を埋め込まれた。」
ぞわり、と体が疼いた。
洗脳。
個性。
無個性。
ーーーーやめてっヤダ!!こっちに来るな!!
ーーーー痛い痛い痛い
ーーーーもう、死んでしまいたい
ーーーーしにたい
ドバっと知らなかった僕の記憶と感情が戻っまで来た気がした。
暗い部屋に、手足を固定された。
体を弄り回されて、緑色の液体に体を沈められた。
苦しかった。
怖かった。
逃げ出したかった。
緑谷「..っ…..」
相澤「洗脳の中に、記憶を操作するものもあったそうだ。」
ああ、だから僕には記憶がなかったんだ。
相澤「そこでヒーローとして、雄英教師としてお前に提案を持ってきた。」
提案..?
相澤「雄英にこないか、緑谷出久。」
━━━━━━━━━━━飯田side
あれから1週間の時間が過ぎた。
緑谷という男の子の、これまでを知った。
彼が受けてきた仕打ちを、俺は知らずに敵呼ばわりしてしまっまた。
緑谷くんに謝りたい、が….
正直、もう会えるとは思っていない。
なぜなら、あの怪我を見てしまっまたらだ。
もうすでに..尊い存在になってしまったのかもしれない。
相澤「お前ら、席に着け」
学校らしくない機械的な音を立てて教室の扉が開き、我々A組のクラス担任である相澤先生が入室した。
そしてその後ろに、小さな影が。
相澤「転入生を紹介する。」
ザワッと空気が揺れた。
相澤「緑谷出久くんだ、仲良くな」
緑谷「こ..んにちは、緑谷出久です..。」
緑谷出久。
あの時の男の子。
飯田「..生きていたのか、」
俺の呟きを境に、クラス全体の理性が吹っ飛んだ。
芦戸「え?!うそうそ!?あの子?!」
上鳴「よかった!!生きてた!!」
生きてる..生きて、俺の前にいる。
奇跡だろうか。
緑谷「えっと、僕..色々と皆さんに迷惑をかけてしまって、申し訳ありませんでした..。」
そうして深々と緑谷くんが頭を下げてしまった。
なぜ彼が謝る必要があるんだ。
むしろ彼は正真正銘の被害者だろう。
爆豪「お前、怪我は」
爆豪くんの発言に、僕は気付かされた。
逆に言えば、それまで気づけなかった。
彼は重症をおっていた。
それも俺がもう亡くなっていると思い込むほどに。
しかし目の前にいる彼は無傷だ。
ありえないことが、起きている。
相澤「これはこいつの個性が関係している。」
爆豪「..あ”?」
爆豪くんが、なぜだか分からないが、相澤先生の発言に過激に反応した。
爆豪「何言ってんだ、こいつは無個性だろうが」
蛙水「..、爆豪ちゃん、心の覚悟した方がいいわ」
何かを知っているのだろうか、蛙水くんが爆豪くんの目を見てそういった。
とても真剣な表情をしている。
相澤「..こいつの個性は、人体実験の末に無理やり埋め込まれたものだ。」
人体実験。
個性。
ドラマでした聞いた事のない言葉に、俺は絶句した。
相澤「だが、体が個性に耐えられず激痛という言葉では足りない程の痛みが全身を走る。」
蛙水「っ、なに..それ..」
峰田「なんだよそれ..俺たち聞いてねぇぞ..?」
どうやら共に戦ったという二人にもその情報は伝わっていなかったらしい。
ショックを受けている。
緑谷「..ごめん、言うべきじゃないと思ったんだ」
緑谷くんが申し訳なさそうにそう言った。
顔にも僕が悪いですと書いてあるように見えてくる。
蛙水「出久ちゃん、個性をたくさん使っていたでしょう?」
彼女のここまで震えた声は、俺自身が初めて聞く声だった。
蛙水「私達を助けるために、苦痛に耐えていたの..?」
峰田「あんときに敵扱いしたのは、本当に悪ぃと思ってる!!!けどよ!!!お前は敵じゃなかったんだろ?!なんで教えてくれなかったんだよ?!」
悲鳴だ。
心優しきもの達の悲鳴。
しかし緑谷くんには、あと一歩届かなかったらしい。
緑谷「僕は敵だ。」
俺の勘違いでなければ、彼は今にも泣き出しそうな声をしていた。
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あれから蛙水くんや峰田くんが緑谷くんに対して色々と言っていたが、緑谷くんにはどれも届かなかった。
区切りが着いたのはつい先程。
相澤先生が《こいつの生徒手帳を作らなきゃらならん》と言って、緑谷くんを連れて行ってしまったことで中断された。
蛙水「…」
峰田「んで…分かんねぇんだよ…っ」
彼らの流れをまとめるとこんな感じなのだろう。
敵を名乗る緑谷くんが現れた。
しかし自分らを助けると言った。
初めは警戒をした。
彼の話を聞いて、信じてみようと思った。
自分たちの個性を知っていた彼の作戦にのり、見事に敵陣から脱出した。
ここまでの中でも、個性を幾度となく使っていた。
それに加え、相澤先生を救出すべく、人なみはずれたオールマイトのような超パワーで敵を倒したという。
爆豪「あいつは、敵なんかじゃねぇ」
蛙水「ええ、もちろんよ」
峰田「震えてたんだよ、あいつの手..。けどな、オイラ達を助けようと必死にもがいてたんだよ..!! 」
特によく現場を見ていたであろう2人と、幼馴染だという爆豪くんが先導して言った。
上鳴「てかさ、あいつの目..あんな色だったか?」
切島「色?」
教室の後ろの方で、つぶやくように会話をした。
上鳴「俺さ、緑谷の瞳、場違いかもだったんだけど..きれーな緑色だな〜って思ったんだよね」
切島「、?でもさっきの緑谷の目って」
上鳴「そう!!赤だったの!!」
赤い目。知り合いの顔がスライドショーのように頭を流れた。
しかし、1人でピタリと映像が止まる。
ココ最近で片目に眼帯をつけているものが1人いた。
赤い目の、眼帯。
他でもない、爆豪だった。
感の良い数人が気づいたようで、チラチラと爆豪くんに視線がむく。
爆豪「..視線がウゼェ..。」
そういい、爆豪くんが眼帯を外した。
すると推理があっていたことを確証付けた。
耳郎「爆豪の目が..緑…」
正確にはオッドアイ。
ギラギラと光を放つ、爆豪らしい褐色の赤。
そして右目に、まるで深海のような深い緑色が光輝いていた。
爆豪「俺の右目は今は使いもんになんねぇ」
爆豪くんはそう言いながら、自身の右手を右目の方にかざし、「これも全く見えてねぇ」と言った。
上鳴「..見えてねぇって…やばいじゃん」
切島「っそうだぜ爆豪!ヒーローに視界での情報は必須!!それを失うってことはッ 」
爆豪「っせぇな、今はっつったろ」
そうして再び眼帯に手を伸ばした。
爆豪「これは出久の目ん玉だ。」
上鳴くんの話を聞いて、そうなんだろうなと確信していた..が、いざ言われると動揺する。
切島くんの言ったように、ヒーローにおいて視界の情報は必須。
五感の中で最も重要だと言ってもいいぐらいだろう。
爆豪「出久の目は左右とも使いもんになんなかった。だから俺の万年視力Aの完璧な眼球をくれてやった。」
上鳴「、そりゃ緑谷が見えなくなるのは可哀想だけどさ..」
爆豪「・・・」
爆豪くんが俯いて、黙ってしまった。
ヒーロー志望として少なからず不安や後悔があるのかもしれない。
爆豪「俺は、出久を虐めとった。」
切島「…は」
教室の空気が一変したと、肌で感じた。
純粋な心配の眼差しは無くなり、困惑や信じられないといったものが多い。
かく言う俺もその1人に過ぎなかった。
しかし切島くんは違ったらしい。
切島「虐めって..嘘だよな..爆豪、」
爆豪「なんで嘘吐かなきゃいけねぇんだよ」
切島くんの顔色がサァッと青くなる。
まるでお化けや幽霊を見たのかのような表情だ。
切島「..っごめん、今の俺おかしいわ。このままだと絶対変な事言から、 頭冷やしてくる。」
爆豪「待て。」
爆豪くんが切島くんの肩を掴んで足を止めた。
爆豪「話は最後まで聞けクソ髪」
切島「っ..なぁ、お前が虐めなんてする訳ないよな..。」
爆豪「中心から話ずらすなや」
切島「………そうだよな、悪ぃ爆豪。」
一息つき、爆豪くんの話が再開した。
爆豪「俺の目は治るっつか治す。手段はこれから考えてくつもりだったが、出久に治さすっつう最短かつ最善の道ができた訳だ。」
蛙水「っ待ってちょうだい、爆豪ちゃん」
爆豪「出久が痛てぇ思いすんなら、違う道でも探せってか?」
蛙水「ええ、確かに最短で、爆豪ちゃんにとっては最前かもしれない。けど出久ちゃんに痛い思いはして欲しくないの。」
爆豪「いいか?これは出久のタメでんあんだよ」
峰田「緑谷のため..?」
爆豪「アイツは”ココ”がいかれてんだわ」
親指で頭を指先した。
爆豪「出久はクソのつく頑固、んでもってさらに面倒なことに正義感の塊ときた。」
梅雨「..、もしかしてヒーロー志望だったの?」
爆豪「ああ、無個性でもヒーローにって毎日毎日うぜぇぐらいにほざいてたわワ。そんでそんな出久は自分の過失でだれかが傷ついたとなれば最悪…」
上鳴「最悪..」
爆豪「死ぬ」
A組「「「死ぬ?!?!」」」
爆豪「テメェらが出久にどんなイメージ抱いてっかは知らねぇが、アイツは人を助けることにしか生きる意味を見つけられねぇバカだ。」
常闇「..本当にヒーロー志望だったのだな」
爆豪「誘拐さえなけりゃ今頃アイツはここにいただろうな」
耳郎「えっ流石に無個性じゃむりなんじゃ..」
爆豪「だからテメェらは出久を知らねぇんだ。アイツなら絶対ェ受かってた。死にものぐるいでな」
、、、、
力尽きた