学校帰り、私は1人で通学路を歩いていた。
いつも一緒に帰る友達は習い事で先に帰ってしまった。
私は習い事とかは全くせず、おまけに帰宅部だ。
今日も今日とて帰宅部らしく家に帰宅しましょう…と思っていた。
「家帰ったら早くログインボーナス受け取らないと…」
独り言を呟きながら歩く通学路は静かで寂しい。
いつもなら友達と2人でワイワイお喋りして帰るが、今日は誰もいない。
ため息をつきながら下を向き、周りから見たらただの陰キャのように見える、そんな雰囲気を出しながら1人寂しく歩く。
寂しいのをかき消す為に私は通学路を見て想像をする。そうすれば静かな通学路も楽しくなるだろうと思い、顔を上げる。
「ここで急に車が飛び出して…跳ねられて…異世界に…なんちゃって…」「上から隕石が…」「地面から手が…」
アニメの見すぎだろうか、通学路の何を見ても非現実的な事が想像出来てしまう。時間が経つと、ずっと想像をしていた自分がバカバカしく思うようになり、結局下を向いて歩く。
その時、家の塀の上から猫が飛び降り、私の目の前に現れる。
「あ…猫…」
私はその猫が気になり、近付いた。
猫に触れられる距離まで近付いた時、またアニメの見すぎのせいだろうか、1つ想像をする。
「実は猫が私をここに誘って…なんてね」
私は前を見た。すると目の前に走っている車が現れた。私はすぐに死を悟った。その瞬間、プツンと意識が途切れ、眠ったような感覚になる。多分死んだんだろうなと思いつつ目を開けた。
目の前には草原が広がり、離れた場所には綺麗な花が沢山生えた小さな山があった。ここが天国か…と私はすぐに思った。私は立ち上がり、近くにあった泉に近付く。水面に私の顔が映る。すると私の耳がありえないくらい横に長くなっていた。私は一瞬戸惑ったが、こういう状況と似たアニメを見たことがあるぞと、私はこんな時でも思ってしまった。
「あ…なるほど…これが転生かぁ…」
私は独り言を呟く。本当に私が転生したのならば、何に転生したのだろうか。私は泉の水面に映る私を見つめる。体が小さく、横に細長い耳。私は転生系アニメを思い出す。特徴が当てはまるのはエルフだ。
「まじで…?私エルフ!?」
私の正体がわかったあとも私は泉に映る私を見つめる。
「転生する前に比べて…私可愛い…」
私は私に一目惚れしてしまった。すぐに我に返り、考え事をする。この世界がどんな世界かはまだわからないが、大体のことなら私わかるんじゃないか?ワンチャン私主人公になれるのでは!と心の中で思い、私はガッツポーズをする。
「私が見たアニメだと…そろそろ…」
案の定、私の頭の中に知らない人の声が響く。
「お主を待っておったぞ…」
そっち系の神かぁ…
「お主は車に轢かれてこの世界にエルフとして転生したんじゃ…」
長ったるい説明が続くんだよね…ここから色々質問とかした方が雰囲気には合いそうだよね…でも質問することないんだよね…
転生系のアニメを何周もしたことを今だけ後悔し、神の説明が終わるのを待つ。
しばらくすると神による説明が終わり、質問タイム的な時間になった。説明が終わった瞬間、私は神に聞いた。
「私はどういう系なんですか?」
突然の謎の質問に神は困惑する。その様子を感じとった私は急いで言い直した。
「転生してすぐに最強なのか…徐々に強くなってく感じなのか…どっちなんですか?」
神はすぐには答えることは出来なかったが、しばらくするとゆっくり話し始めた。
「えっと…多分徐々に強くなる感じかな…?」
じゃあどうやったら強くなっていく感じなんだろ…魔法を集めていくのかな…色々してレベル上げていく感じなのかな…などと思っていると神は私の心を読んだかのように説明し始めた。
「えっと…この世界にはダンジョンがあるから…それを攻略したら魔法をゲットして…えっと…さっき説明したと思うんだけど?」
私が神による説明を全く聞いてなかったのがバレてしまった。すぐに聞いていた感じに振る舞わないと…ワンチャン神に見放されるかもしれないからね…と1人で心の中で思う。
「あ…く…詳しく教えて欲しいかなぁって…どんな魔法があるのか…どんなダンジョンがあるのか〜とか…ね?」
「それも説明したと思うんだけど…」
こうなったら私はどうすればいいんだろうか。どうやって巻き返せばいいのだろうか…とその時、1つのアニメが思い浮かぶ。
「えっと…どのダンジョンからがおすすめですか?私強くなりたいですよ!」
苦笑いだったけどいい感じに私をカバー出来たと思った。
「そんなに異世界で本気になるなんて…普通なら元の世界に帰りたいとか言うのだけれど…君はこの世界に本気で…」
神には私の言葉がぶっ刺さったらしい。とりあえず神に見放されることは無くなったと、安堵のため息をつく。
その後私は神に色んなダンジョンをおすすめされたけど全く聞いてなかった。
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