広島「ねーねー」
去年の夏休み前、つまり僕らが中2の時だ。突然そんな事を聞いてきた。
岡山「海上…他界…?」
広島「そーそー」
「死んだ人は皆んな海のずうっと、ずうっと遠いところにいるっていう考えらしいよ」
岡山「へー」
「てゆーかなんでそんなこと急に、」
広島「いやー…、もしさ、僕か岡山のどっちかがこの世からいなくなってもこういう考え方すれば案外寂しくないのかな〜って」
僕と広島は付き合っている。つまり恋人同士だ。
僕は広島のことが何よりも1番で、広島も僕のことを大切だと言ってくれる。
岡山「確かにそうすればそういう気持ちは減るかもだけどさ…」
「僕と広島のどっちかが死んじゃうみたいな縁起もない言い方はやめてよ…」
広島「ごめんごめん…w」
岡山「ーーーーー、ーー?」
広島「ーー〜!!ーーーーw」
いつもの他愛もない会話だと思っていた。
実際少し引っかかる様な会話があっただけで広島はいつもの様に笑っている。
恋人同士と言っても僕らはまだ中学生。
去年は夏休みに入ると2人とも実家で生活するのでメールで連絡を取り合うくらいだった。
広島「あ〜、やっぱ岡山と話すの楽しいな〜」
岡山「でも実家に戻るから夏休み中は会えないからね〜…」
広島「じゃあ岡山と話すのはこれで最後か〜…」
「なんだか寂しいな〜…」
岡山「でも連絡は出来るよ…w」
広島「……そっか!そうだよね〜」
岡山「ーーーー、ーーw」
広島「ーーーー!ーー〜っw」
それから僕らは夏休みに入り、実際に会うことは無くなった。だからメールで僕らは連絡を取り合った。
だけど、ある時から広島にメールを送っても返信が返って来なかった。
嫌な妄想が頭をよぎったが、物をあまり大切に出来ない広島の事だ。きっと携帯電話を壊してしまって連絡ができなくなっただろうと嫌な妄想を引き剥がす様にあの時の僕はそう考えた。
…きっと大丈夫
とうとう夏休みが終わり2学期が始まった。
教室を開けようとする手にどんどん手汗がにじんでいく。
広島の事でどんどん頭がいっぱいになる。
ガラララ…
岡山「え…?」
だけどその嫌な妄想が見事に当たってしまった。
広島の机の上に、花瓶に花がそえられている。
教室の雰囲気は最悪と言ってもいいほど暗い。
僕はその時思考が止まった。
たったの数秒だけだったが僕には何十分にも何時間にも感じる様な時間だった。
僕は嫌な考えを振り払うために別の考えを生み出そうとする。
誰かが綺麗だから置いただけ?
誰かがいじめの為に?
何度か酷い考えが出てきたが、それはこれ以上の酷い現実を受け止めたくなかったからだ。
しかしその希望もすぐに打ち砕かれてしまった。
「広島病気で死んじゃったらしいよ…」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。
その中には広島と仲が良かった人たちの泣き声まで聞こえてきた。
あゝ、どうしてこんな事に?
そんな事しか考えられなくてクラスメイトの声も何もかも聞こえなくて、知らない間に授業は終わってしまっていた。
…そうだ。
あの時広島と話していた、海上他界観の話を思い出した。
………僕は考える事をやめた。ただ真っ直ぐ海に向かって走っていく。
ダッダダダ…
岡山「ハァ…ハァ…」
着いた海はどこまでもどこまでも広がっていて僕はこの先に広島がいるんだなと少し魅入っていた。
僕は広島のいる水平線の方をじっと見つめる。そして口いっぱいまで空気を吸い込んで…
岡山「大好きだよー!!!!!」
周りの人がこっちをみてきたがそんな事も気にならず、広島に聞こえるように精一杯大きい声を出す。
その時広島が向こうで笑ってくれているような気がした。
ぐちゃぐちゃに混ざってしまった感情のせいでボロボロと涙が出てくる。
あとで聞いた話だが海上他界観の話をしていた時には既に病気をわずらっていたらしい。
あの時から僕はたまに海の方へ向かうようになった。
今日も僕はあの海へ向かう。
広島から1番近いところに居れる為に。
コメント
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あれ...涙が... エモい...これ小説とかマンガに出来る... 神作すぎる...言葉がでねぇ... ほんとにテラーで1番泣いたかも...
アァァァァァァァァ(´;Д;`)神作すぎるゥゥゥゥゥゥ、、、 切ない、、、
(絶叫)