チャイムが高校生活最後だと告げる。
友達と集合写真を撮っている人。
卒業証書の入った筒を持って泣いている人。
今日で終わってしまったのかと、悲しさと寂しさが押し寄せる。
年を重ねるにつれ、時間の流れが速くなっていく感じがして。
それと同時に将来への不安が募って。
雪が解けて地面が見え始める3月は、毎年そう悩んでいた。
あとどれくらい、友達と高校生を楽しめるのか。
本当に大人になってしまうのか。
子供の頃は憧れていた「大人」という枠。
蓋を開けてみたら、皆必死に生きてて。
ほんのちょっと、生きていくことが怖くなった。
そんな時に
「大丈夫だ」 「なんとかなる」 って
彼は笑いかけてくれた。
その笑顔が俺をどれだけ救ったか、本人は自覚してなさそうだけど。
そんな所が、とても愛らしいと思った。
「ハル!」
『ん?』
「帰んねーの?」
『んー…』
「泣いてる人、多かったな」
『やっぱ最後だし。溢れてくるものがあるんだろーな』
「そりゃそうか」
『…ユウも泣いてたよな?』
「なっ、!泣いてない…」
『人間って、嘘つくとき右上見んだってよ』
「見てねえ!」
『それじゃ、此処で』
「卒業おめでとう、ハル」
『そっちもな』
「…俺もさ」
『うん』
「溢れてきた感情に、身委ねるわ」
『ははっ、……聞くよ』
「ハルのこと、好きだったよ」
「今まで一緒に居てくれて、ありがとう」
「楽しかった…!」
『…そのきもち』
『俺がもらっていいんだよね?』
『………泣くなって、ユウ…』
「……だって」
「諦めようと思ってさっ…切り出したのに」
『はは…』
『ほんと、…バカだな!俺達。』
喧嘩して、悩んで、泣いて、笑いあって。
この数年間、想う相手がひとりいるだけで
こんなに苦労するとは思わなかった。
将来のこととか、性別とか。
悩みの種がなくなることは多分、無いけど。
解決とまでいかなくてもいいから、
互いが互いを、安心させられるような。
時にはぶつかり合って、ごめんねって謝れるような。
そういう愛の形は、諦めなくたっていいんじゃないか。
『…これからも』
『墓場までも!』
『ずっとよろしく!』
今年卒業の皆様、少し早いですがおめでとうございます!
同級生に、先輩に、後輩に。
卒業生でも、在校生であっても。
自分の気持ちを誰かに伝えるための背中を押せたらなと思いながら、
この物語を投稿しました。
別れの季節でありながら、出会いの季節でもあります。
告白したとして
それが終わりになるかもしれないし、始まりになるかもしれない。
今見てくれている人の行動が、幸せのための一歩になりますように。
心から、そう願っています!