「ただいまー!」
あれ?返事がない…
玄関からリビングへ繋がる廊下を通り、リビングのドアを開ける。
「ただいm…いるじゃん…返事してよ。」
「…」
「あれ?どうしたの??」
普段は紫色の目が赤く染まる。
「お腹空いた…」
「だからって返事がないのは違うでしよ?」
「お…おかえり…」
「はい、ただいま。」
俺はネクタイを外しながら、ソファーに向かう。
「ほらおいで…」
ヨロヨロしながら俺の上に跨り首元に顔を埋める。
「まだ?」
「欲しい?」
「欲しい…かなめの血…欲しい。」
「いいよ」
言い終わる方が早いか分からないスピードで首元に噛み付く。
「今日も可愛いね…しのは。」
出会いはたまたま。
夜遅くに1人で散歩に出た時だった。
いつもとは違う帰り道を通った時に出会ったのだ。
お腹を空かせた可愛い吸血鬼に。
「君は何をしてるの?」
「…」
「どこから来たんだい?」
「…」
「お腹空いてない?」
「…スイタ」
「え?」
今なにか話した…そう思い彼に近づくと急に首元を噛み付かれた。
「ちょ…まつ…離れ…」
吸血鬼の力に抵抗できりる訳もなく、きつく抱きしめられる。
ゴクンゴクン
喉を鳴らしなが俺の血を吸っていく。
(ああ…やばい…このまま、こいつに殺されるのかな…)
なんて脳内で思っていると耳元で急に
「ご…ごめんなさい!!!!!」
腕の力が弱まり彼が離れていく。
「お…俺…お腹すいてたみたいで…きゅ…急に噛み付いちゃってごめんなさい!!!」
どうしよう、どうしようと、慌てている中ひとつ提案をする。
「俺の家、ここから近いからそこで話しない?ここじゃなんだし。
「えぇ??いいんですか…?」
「いいよ〜おいで?」
名前も知らない吸血鬼くん。今日からここが君のおうちだよ?
彼の名前は、「しの」というらしい。
魔王のお家に遊びに行った時に、開く扉を間違えてここに来てしまい、帰り方が分からなくてさまよっていたらしい。
めちゃくちゃファンタジーすぎるだろ….
俺に出会うまでは小動物の血を吸っていたが不味くて食えたものじゃなく。
「人間の血が一番美味しいし、お腹満たされる!!!」とキラキラした目で言っていた。
ぷはぁ…
「おなかいっぱいになった?」
「意地悪…」
「はあ?約束破ったのが悪いでしょ???」
「ヴッ…ハイ」
「帰る手段がないなら、うちにいなよ。」
「え?でも…」
「でも、その代わり条件がある。しの君、君の得意な事は?家事とか出来る?」
「あっ…えっと…一応出来ます。」
「採用。」
俺が帰ってくるまでに家事を全て終わらす。そのお礼で俺の血をあげる。
契約成立。
数日前から、家事の途中で寝てしまい、家事が終わらずに血が貰えなかった。
しんどい中家事をしてくれたんだと思い笑みがこぼれる。
(スピー)
「寝ちゃった…」
お腹がいっぱいで寝ちゃうなんて本当に愛おしいね。
俺の可愛い吸血鬼くん。
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