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クラピカがその依頼を受けたのは、
“緋の目が闇市に出回っている”
と言う確かな情報があったからだ。
依頼主は非合法情報屋。だがその情報は、
「幻影旅団の残党が、贋作の緋の目をばらまいている」というものだった。
クラピカはそれを聞き捨てならなかった。
贋作の存在は本物の価値を貶める
何より、死んでいった同胞の尊厳を穢す行為だった。
情報屋が紹介した協力者は、ジグ=アルカナという青年。
念能力者で、ハンター協会に所属しているが、表には出ない調査専門の裏仕事人。
「悪いが、私は命を賭ける相手は選ぶ。お前の素性、洗わせてもらうぞ」
とクラピカは告げる。
「いいさ。逆に、信用されないほうが気楽だ」
ジグは笑いながら答えた。表情の下に、何かを隠している男だった。
標的の情報は、小都市・サレン。
ここで定期的に闇オークションが開かれており、最近出品された「緋の目」は、
第三者が鑑定し”本物”として判定されたという。
クラピカは疑念を抱く。
”第三者の鑑定”などいくらでも工作できる。
そして現地に入った彼らは、すぐにそれが旅団の流した情報であることを察知する。
「出品者」が使っていた偽名、装飾の癖、仕入れルート
いずれも過去に旅団が利用したものと酷似していた。
二人はオークション会場に潜入し、出品される緋の目の出所を追う。
会場には、明らかに“念能力者”と思われる男が監視についていた。
その男が使用していた念能力は「感情の波長」を読み取るもの。
感情の高ぶりを通して、観察者の“嘘”や“興奮”を察知する異質な能力だった。
ジグはあっさり正体を見破られ、オークションの裏へ連れ込まれる。
クラピカはそれを追い、裏取引の部屋に潜入する。
そこで彼が見たのは
ガラスケースに並ぶ”緋の目”そっくりの義眼。
そして、鎖で吊された状態のジグ。
「これは本物じゃない。魂がない」
クラピカはつぶやいた。
念を込めて見れば、オーラの残滓がない。
つまり、これは人の死から生まれていない。
ジグが、微かに笑って言った。
「……あんた、クルタ族なんだな」
クラピカの目が鋭く光る。
「その言葉、軽々しく使うな」
「違う。俺の村にも、かつて“目を狩られた家族”がいた。」
「クルタ族じゃない。だが、似たような被害に遭った者たちは、世界中にいるんだ」
ジグは続ける。
「贋作をばら撒いたのは、旅団の名を騙った模倣犯だ。オレは、それを追ってた」
クラピカは迷いながらも、彼の言葉に嘘がないことを鎖で確かめる。
そして、敵が別にいると察知し、その場に罠を張る。
現れたのは、贋作の目を売り捌いていた元ハンター。
かつて旅団に家族を殺され、自らも緋の目に似せた目を作り出し、
それを売ることで「旅団への復讐」を果たすつもりだったという。
だが、その行為は結果的に、「緋の目の価値を貶める」だけだった。
クラピカはその男に告げた。
「偽物をばら撒けば、本物の意味が消える。本当に悼みたいなら死者を利用するな。」
そして、彼の腕に律する小指の鎖を突き立て、
緋の目を商うことの禁止を強制する制約を刻む。
任務のあと、ジグは静かに言った。
「オレは、正義のつもりで動いてた。でも、君と違って、“その重さ”を知らなかった」
クラピカは答える。
「背負っているものの重さを、自分で決めるな」
その言葉のあと、ふたりの間に心地良い沈黙が流れた。
やがてクラピカは去り、ジグは一人で夜の街を歩いた。
背中に残る鎖の冷たさが、少しだけ誇らしく感じられた。