亀が蒸発した。
小さい亀が蒸発した。
嘘では無い。
透明な氷のように、甲羅が剥がれて、
中身が蒸発した。
今では珍しい、螺旋階段の学校。
俺は高校二年生である。
木組みの床と木組みの天井。
昔の学校なのだろう。
とてもお洒落で、気に入っていた。
俺は、何故か生物室にいて、亀を見ていた 。
大小様々な亀が5匹。
ミドリガメが2匹、クサガメが3匹。
俺は、もう一匹、
オレンジと黒の小さな亀を見つけた。
俺はそいつに意識を引き寄せられた。
何故か目が離せなかった。
必死に泳ぐ姿。
何かが、心の奥に刺さったのだ。
触ってみたくなった。
水槽に指をそーっと入れて、
オレンジと黒の甲羅にそっと触れた。
亀は、首を器用に伸ばして、
俺の指を噛んだ。
痛かったが、
可愛かったからそのまま手に乗せた。
軽くて、
意識しないと落としてしまいそうに暴れる。
先生も居ないし、貰っていこうと思った。
小さな虫を入れるカゴを見つけ、
水道水を少し入れて、亀を入れた。
すると、他の亀が暴れだした。
俺はびっくりしたが、
虫かごを落とすほど、ドジではない。
その時、何となく、人のエゴが邪魔して、
別れの挨拶をさせようとした。
亀をカゴから出して、
他の亀がいる水槽の上に行かせた。
その瞬間、スルッと手から亀が落ちた。
ミドリガメの水槽の中に落ちた。
食われるんじゃないかと慌てて、
水槽の中に手を突っ込んだ。
その瞬間、
中指に1匹のミドリガメが噛みつき、
小さな亀が透明になった。
痛みは感じなかった。
空いたもう片方の腕を水槽の中に突っ込んで、
透明な亀を梳くった。
水槽から上げた瞬間、
小さな亀の甲羅が剥がれて、
中身が蒸発した。
手には、氷のように冷たい甲羅があり、
徐々に溶けている。
クサガメに噛まれ続けた中指が、
赤黒くなり、ドクドクしている。
俺は、その場で固まっていた。
先生が来ない。
人の声もしない。
ただ亀が暴れてる。
手で甲羅が溶けている。
時計の針が3時を指した。
俺は今日、亀が蒸発する事を知った。
俺は今日、自分が熱を出した事を知った。
亀が蒸発した
0ocojo0 The turtle evaporated
コメント
2件
#歌野白鼬物語
私は、過去に42.1度の高熱を出した事があります。その時に見た夢を小説として書いてみました。夢日記は、精神面ではあまり良くないと聞きますが、小説にすると、とても面白いなと、感じました。 皆さんは、熱を出した時にどんな夢を見ますか?