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影がうねる。
血が滴る。
二人の間に広がるのは、かつての記憶と、果てなき因縁だった。
「ほう……まだ立っていられるのか?」
アザルの黒い刃が微かに軋む音を立てる。彼の周囲には、影のような何かが漂い、ゆらめいていた。
レイスは荒い息をつきながら、それでも歯を食いしばる。
「……くそったれ……」
彼の指先が震える。血の虎はすでに霧散し、彼の血を操る異能もほとんど無効化されていた。
アザルの異能『忘却の領域』。
それは、彼の周囲の魔術や異能を”忘れさせる”力。
「このままじゃ……勝てねぇ……」
レイスは膝をつきかけた。しかし、ふと胸の奥に微かな熱を感じる。
──いや、まだある。
まだ俺には“血”がある。
「……そっか。」
レイスは不敵に笑った。
「お前が忘れさせるなら……俺が“思い出させて”やるよ。」
彼は己の胸を拳で殴りつけ、血を無理やり噴き出させた。
「血よ、俺の記憶を呼び戻せ。」
その瞬間──アザルの顔に、一瞬の驚きが走る。
「何……?」
レイスの全身から溢れる血が、形を成し始めた。
「“忘却”が支配するなら……“刻印”で上書きすればいい。」
レイスの血が空中に紋章を描き、やがて赤い剣となって現れる。
「“記憶の刃”──こいつは、俺が”忘れたくなかったもの”のすべてだ。」
レイスは剣を握り、ゆっくりと構えた。
「……さあ、続きといこうぜ。」
アザルの瞳が細められる。
「面白い……ならば見せてみろ。」
影と血。
記憶と忘却。
再び、親子の死闘が幕を開ける。