世の中なんでこうなのだろうか
私はなにか悪いことをしたで あろうか
私のせいで 誰かが不幸になったのだろうか
でないとこの不幸に説明がつかないほど
私は不幸だ
何かがぶつかる音
壊れる音、鳴声 、怒声
これが日常
これが私が産まれてしまった家
あぁ私はこの人達に何かしたであろうか
勝手に産んだのはそちらであろうに
私の何が気に食わないのだろうか
私を巻き込んでいない喧嘩だとしても
苦痛なものでしかない
好きな物などない
目の前で弟が殴られていようと
母が殴られていようと
何とも思わない
きっと嫌いなのだろう
助けようなんて思わない
私はそんなお人好しでは無い
優しい人になんてなる気は無い
だから、私はいつもそこから逃げる
なにもなかったのかのように
見て見ぬふりをして
家という鬼畜から逃げるのだ
逃げた日の夜空は地獄のようなその光景さえなかったかのように輝き続ける
人間とはかけ離れた存在
あぁ、あの星たちはどれほど 遠くに いるの だろう
私はそれを知らない
だから追いつくことも出来ない
人がなんであろうと
この場に留まるしかない
それが私、哀れでしょうがない人間だ
下り坂を歩いていった
下り坂が終わったところにあるひとつの家
そこにひとつの人影があった
夏葵だ
少し進むと夏葵はこちらに気づいたようでこちらにぎこちなく進んでくる
「凪紗、こんな時間に出かけているなんて危ないわよ」
それをこんな真夜中に外に出ていた夏葵が言えるのだろうか
「夏葵こそ、危ないよ」
「確かにそうね」
ふふと柔らかく笑う夏葵
この子も不幸で哀れな子
暴力こそないものの、精神を削ってくる種類の親だと聞く
可哀想な子だ
「凪紗はなんでこんな時間に?」
「いつも通り、逃げてきただけ」
この子は安心する
全てを受け止めてくれるような、安心感
それについ甘えてしまう
「夏葵は?」
「、、、、」
ニコリと笑って夏葵は答えない
昔からそうだ、自分のことは語らない
それが夏葵
あぁ、なんと苦しそうなのだろう
「凪紗」
「なに」
「、、、、」
流れる沈黙
夏葵だって言いたいことがあるだろう
でも言えない
優しい人ほど、自分を語らない
苦しい世の中だ
「夏葵、私ね」
「優しい人ほど嫌いになるの」
「、え、?」
「優しい人ってね、人を魅了するの」
「だから周りに人が集まってくる」
「周りの人は優しい人のために何かをしたくなるの」
「その人に認めてもらいたい、って」
「だからね、何でも傷つけるの」
「私も、それに傷つけられてきた」
「だから、私は優しい人が嫌い」
「いつだって、優しい人を嫌いになるのはね」
「周りの人のせいなんだよ」
「そ、っか、」
夏葵は顔を伏せ動かない
しばらくまた沈黙が続く
今言ったのは間違いなく、私が思ってきたこと
夏葵はそれを受け止め切れるだろうか
優しくあろうと努力する夏葵には毒だろうか
でも、私は優しい夏葵が嫌い
甘えたくなってしまうから
夏葵を追い詰めることになるから
だから、嫌い
「凪紗、」
長く続いた沈黙を破ったのは夏葵だった
「なぁに」
「私が、優しい子になろうとしてるって言うと、嫌いになるかしら」
「、、、うん」
「やさしい夏葵は、私嫌い」
「そう、、」
「だから、優しくない夏葵でいて」
「、、でも」
私は夏葵の言葉を遮るかのように答える
「私のために、優しくない夏葵でいて」
「自分勝手に動いて」
「人の事いっぱい泣かせて」
「いっぱいの人に嫌われて」
「そして、夏葵を好きにさせて、、」
「、、、凪紗は、そんな私を嫌わない、?」
「うん、むしろ大好き」
「、なら、優しくなくなろう」
「世界から嫌われちゃおう、!」
そう笑う夏葵は、今まで見た笑顔の中で一番
汚らしく、自由だった
「一緒に世界から嫌われて」
「一緒に死のう」
「ざまあみろと世界を笑ってやろう」
「ふふ、それは心中のお誘い?」
「お誘いだったら悪い?」
「ううん、むしろ嬉しい」
「私、凪紗と一緒なら何も怖くないもの」
「一緒に死んでくれないと、許さないわ」
「約束だからね、夏葵」
「もちろん、破ったら許さないわ、凪紗」
そして私たちは、哀れな約束をした
哀れで汚らしく、惨めな
自由な約束を
夏葵、それは優しい女の子
自分の意見なんて言えない、可愛らしい女の子
世界で一番哀れで汚い女の子
そんな貴方が私は好き
一緒に、死んでください
皆様、ご無沙汰しております、はりょです
今回は一次創作です
登場人物は「夏葵」と「凪紗」
「なつき」と「なぎさ」と読みます
二人の哀れな物語です
貴方はこれを見てどう思いましたか?
何か、思うことがあるといいですね
では、人間様方、ごきげんよう
貴方が貴方らしく生きれることを祈って
コメント
2件
コメント 失礼 します 独自 の 世界観 , 雰囲気 が 素敵 過ぎました . 素敵 な 作品 を 有難うございます 🙌🏻 🎀