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冬の日にしりとりするfwak
少し先取りで冬のお話。
短めです。
口調は怪しいです。
*
「ふわっちやばいよ!雪冷たい!」
東京に雪が降った。
人は驚き慌て、犬は庭を駆け回り猫はこたつで丸くなり、明那は最高潮に興奮して、電車は止まった。
おかげで今、俺と明那は少し寂れた駅のホームから動けない。
寒いしタクシーが来るまですることもないし、正味、雪とかどうでもいい。
けれども明那と一緒にいられるし、寒さ理由にひっつけるし、楽しそうな明那が見られているのでこちらとしては万々歳だ。
雪をいじっていた明那がこちらに駆け寄り、俺の隣に勢いよく座る。
「ふわっち!しりとりしよう!」
「おー、雪はもうええんか」
「んー、一騒ぎしたからもういいわ!」
切り替え早いなー。そんな明那も好きだけども。
「いくでーふわっち!『しりとり』!」
「んやー、『リスナー』?」
「おぉー、…な、『ナイジェリア』!」
はは、おぉー、て。明那らしいわ。
そんでナイジェリアどっからきたんや。
明那、よくナイジェリアなんて知っとったなぁ。
「あー、『あったかい』で?俺の手」
先程雪をいじって冷たくなった、意外にも俺のものよりも男らしさのある明那の手を握る。
「ひょっ!?えっ、うぁ、け、形容詞は違うくないかあっ!?」
真っ赤になって動揺しちゃって、かわええなぁ。
「でも、あったかいしょ?」
なんて微笑んでみる。
明那が俺の顔好きなん、知ってるで。
「ーー〜っも”ー!『入れ歯』!!」
おいー、『入れ歯』て、空気ぃ。
流石明那すぎやって。
その時ふと遠くの道をバスが通り過ぎて行った。
「あ、『バス』」
「ほんとだー、そっか、バスも全然通ってたんか」
俺は全然、乗らなくてよかったと思うけど。
明那、次『す』かぁ。
あー、『好き』とか、言ってくれへん、かな。
握った手にきゅ、と力がこもる。
「………。」
「……………。」
二人の間に沈黙が流れる。
あかん、なんや手汗出てきた。
手を離そうとした時。
「すき」
小さな小さな声。
それでもその瞬間だけ明那以外の音が消えたように、はっきりと耳に届いた。
明那、明那。
その表情に期待していいものか。
その目は、信じていいものか。
「明那っ…」
息と息が触れ合う距離。
顔を赤らめた明那が、ゆっくりと目を閉じる。
ちゅ、と小さな音をこぼして一瞬触れ合った唇。
「…ん、は」
「、『キス』…」
「…すき、」
「うん、おれも、すき」
「うん、すき、…すきっ、」
抱きしめあって互いの温もりを確かめる。
まだタクシーは来ないようで。
もう少し、二人で。
二人きりで。