『 1度目の再開 』
桃瀬 さとみ side
まだ春になったばかりで、肌寒い季節の頃。
俺は窓から見える桜の木を見て、長い長い廊下を歩いていた。
その時、ふと声が聞こえた。かなり近い距離からだったが、俺は桜の木に気を取られていて、止まろうとはしなかった。
そして、角から出てきた俺よりも2、3回りくらい小さく、小柄な人影が出てきたのを確認した時には、体にぶつかった衝撃が伝わった。
「っうお …」
そんな声を出した頃には、前の小柄な人は床に尻もちをついていた。
「……ッ……っ …!!」
そいつの顔を見た瞬間、衝撃が走った。
それと同時にさっきの声はこいつの心の声だったことを察した。なぜならこいつは声が出せないと噂の1年生だったからだ。
「お前、声が出せないやつだっけ?」
「……!」
そう問いかけるとそいつはコクコクと首を縦に振った。おそらく声が出せないから謝ろうにも謝れないのだろう。そいつは何かを思い出したようにスマホに何かを打ち込んだ。
〈そうです。すみませんでした。〉
そのスマホを俺に見せてきて、必死に何度も頭を下げる。だが俺はそんな事どうでもよかった。俺はそいつの顔とそいつが持ってるものに驚いた。
「……なんでだよッ…」
そう呟いた頃には俺はそこから逃げ出していた。こんなに汗をかいたのは久しぶりというくらい、必死に、必死に、目の前に居たあいつから逃げるように。呼吸の仕方を忘れたように息切れをしながら。
学校の外に出ると、思うように息が吸えた。
なんでだよ、なんであいつが…もう二度と出会わないと決めたのに。もう二度とあいつの視界に、あいつの世界に入り込まないと決めたのに。
この時の俺は、またあいつと関わりを持つなんて、思ってもいなかった。
コメント
1件
短いですね〜……ノベルの方慣れてないんです…ごめんなさい