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……どこに行くつもりなんだろう。
もう、あの会社の近くのカフェとかお店屋さんが多い通りからそれ、住宅地が立ち並ぶ所まで歩いてきた。
しかも、Nakamuさんを置いてきたまま……
罪悪感に苛まれていく。
shk「ここだ。」
感情を遮るように発された低音は、アパートの一角の部屋(防音っぽそう)の扉を開けていた。
shk「いらっしゃい。」
yrn「ここは……?」
shk「俺の家。入って。」
急かされるままに部屋に入る。
そこには、そこまで使われていなさそうなキッチンや、デスク周りはきちんとしており、マイクや、モニター、キーボードなどがある、リビングのような、どこか活動者のような部屋だった。
でも、この活動者っぽすぎる部屋に、ピアノがぽつんとある。
この人、もしかして活動者だったのかな?
shk「はい。座って。」
テーブルにお茶が置かれて、座るように勧められている。
大人しく座っておこうかな。
yrn「あの……なんで、」
聞きたかった言葉。なんであそこで声をかけて、ここまでこさせたのか。
shk「……それはな、お前に自分の選択をして欲しかったからだ。」
yrn「なにそれw」
いきなりお前呼びだし、僕の選択って何?何様?どんなことをしたって僕の自由だし、僕が何をするっていう選択肢はないでしょ。
勝手に決めつけて来ないで。
shk「……(((ボソッ)」
yrn「ん?なにか言いました?」
この人はただでさえ低音で聞き取りずらいのに、これ以上小さい声で言われたらたまったもんじゃない。
ほんとに聞こえない。
shk「じゃあ俺が来てなかったら、あのままあそこに立ったままだったんですか?」
……イラついてきた。
こんな答えずらい質問ある?ほんとに言いづらいんだけど。
yrn「わかんない。」
shk「……」
shk「俺、ピアノが趣味なんですよね。」
急に何を言い出すの?
shk「俺話すの得意じゃないんで、ピアノ弾いてていいですか?」
ほんとに何を言いたいの?まじで分からない。
shk「好みだったら、歌い始めてもいいんですよ。」
ほんとに何してるんだろこの人は。何したいんだろう。
僕に何をして欲しいの。
こんな僕の言葉なんてスルーして、彼はピアノの前の椅子に座る。
でも、分からないけど、嘘はついてなさそう。
彼はその鍵盤の上に手を置き、弾き始めた。
始めはゆったりと、数音の旋律から、激しいものへ。
聞いた事のある旋律。
でも、聞いたことがある時よりも優しくて、どこか拙いけれど、滑らかで。
1音1音が丁寧に聞こえた。
サビが近づくにつれ、より一層なめらかになっていく指。たくさん練習したのだろうか。指が一連の流れのように動いていく。
歌いたいな。
純粋な気持ちが湧き上がってくる。
こんなこと柄じゃないのに。
なんでこんなこと思うんだろう。
「一緒にグループやらないか!?」
なんだこいつと思いながら、孤独だった僕に手を差し伸べてくれた彼。
ピアノを弾いている彼と、重なるところがたくさん出てくる。
彼が奏でているメロディーが、一緒に歌おと誘ってくる。
約3分間しかないはずなのに、想いが、メッセージが、溢れて、心に突き刺さる。
引き抜いたら、離れようとしたら、もっと酷くなるかのように。
酷く、心が掻き立てられる。
あの日のように。
なんで。なんで。
違う人なはずなのに、
いや、違う人だからか。
「一緒に歌いたい。」
いつも頑張っている、自分で傷つけてしまうことがあるのだから、こんな時くらい自分に甘えたっていいじゃないか。
ラスサビに入る箇所。
「天使」っぽいから、好きで聞いていた曲だからわかる。
大丈夫。途中で入っていいよとか言ってたから、歌っていいはず。
大丈夫。まだラスサビまでは時間がある。
1つ呼吸をして。
よし。入れる。
yrn「いつか見た夕焼けは〜🎶
あんなに綺麗だった〜のに🎶
恋なんて呼ぶには遠回りしすぎたよ🎶」
待ってましたとばかりにピアノの音がはねていく。
これでも僕は歌は上手いんだよ?可愛いんだよ?
見せつけてやるよ。
これがゆらねろの歌だと。
これが僕なんだと。
どんなことを思われてもいい。
ただこの一瞬だけでも、久しぶりに「楽しい」と思える時間を、空間を、
誰かといる、孤独ではない空間を
味わいたかっただけだから。
yrn「そして何もかもが🎶
手遅れの灰になった後で🎶
僕は今〜更🎶
君が好きだって🎶」
大丈夫。否定しないよと言わんばかりの優しい音色が聞こえる。
yrn「君が好きだって言えたよ。」
ピアノソロ。
最後まで丁寧で、柔らかな、でも弾んだ音が聞こえる。響く。
楽しかった。
こんなことを感じたのはいつぶりだろうか。
最後の1音さえ惜しい。
これがいつまでも続いたらいいのに。
1人じゃない、幸せな灰になったはずの空間にもう一度戻ってみたいと祈ってしまう。
こんな僕は悪い子なのかな?関係ないや。
shk「……」
終わってしまった。
shk「🎶、🎶🎶🎶」
と思っていたのに。
彼の指からはまた、音色が聞こえてくる。
shk「幽閉利口行く前に🎶」
shk「幽閉じゃ利口に難儀ダーリン🎶」
知っている曲だと思ったのも束の間。
話しかけてくれた時と同じような優しい低い声色の歌声が響く。
なんだ。歌えるし、歌上手いじゃん。
僕の方が上手いし、可愛いけど。
……あれ?
違和感を感じ、顔に手を当てる。
……笑ってる。
こんな無意識の笑いは初めてだし、そこまで安心してたのか……
shk「幽閉ストップ知ってないし🎶
勘弁にしといてなんて惨忍」
はっ歌えよと言わんばかりの顔に、乗ってやりたいと思ってしまった自分がいる。
いや。迷う必要はないよね。
yrn「人様願う欠片のアイロニ
誰もが願う無機質なような
一足先に始めてたいような
先が見えないヴァージンハッピーショー🎶」
shk「🎶🎶」
この人もピアノ弾きながら歌うだなんて器用だな。
まぁ、僕ほどでもないけどね!!
楽しいな。
歌が交互に、事前に合わせてもないのに、繋がれていく。
昔流行った以心伝心ゲームしたら上手くなるんじゃない?
「レフトサイドライトサイド🎶
歯をむきだしてパッパッパッ照れくさいね。」
「レフトサイドライトサイド歯を突き出して🎶
パッパッパッ」
yrn「ハハッ」
shk「you are King」
「you are King」
終わるのが惜しい…かもね?