糸師凛の犬

犬は、退屈でした。

犬は、サッカーを誰よりも愛していると思っていました。

周りの奴らが、自分より弱かったからです。

サッカーを始めたのは、３歳の頃。

元サッカーの日本代表の父から勧められ、サッカーをやり始めすっかりサッカーの虜になってしまったのです。

犬は、父からサッカーの基礎やルール、シュートやドリブルの仕方などを教えてもらい、もっとサッカーが好きになりました。

ですが、その父も病気で亡くなり、母も犬が生まれて数カ月後事故で亡くなり、犬には頼る人が一人もいなくなったのです。

親戚同士が言い争いをしている様子を見て、犬は涙を一粒溢しサッカーボールをギュッと抱きしめました。

「助けて」とでも言うように。

すると、犬の体がふわりと浮き、温かい何かに包み込まれました。

「預ける宛が無いのなら、俺が預かろう」

犬が顔を上げるとそこには、自分を抱き上げている、たくましい男がいた。

『・・・お父さん？』

彼の雰囲気が、少しですが父に似ている気がしたのです。

「お前は、サッカーが好きか？」

男は、犬の方に目を向け１つ質問しました。

犬は、サッカーボールを抱きしめ答える

『うん、大好き。だって、お父さんが言ってた。人は裏切っても、サッカーは裏切らないって』

男は、フッと口元を緩ませ犬を抱きしめた。

「俺と一緒に来い。お前をお前の父のような素晴らしいサッカープレイヤーにしてやる」

そして、犬はその日からある男と家族になったのです。

その男の名は＿＿＿＿＿＿。