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香山睡の爪が、岳山優の肌に沈む。優は少し顔をしかめたが、抵抗はしなかった。
「ねえ、優……どうしてそんな顔をするの?」
暗い部屋の中、微かに揺れるランプの光が、睡の表情を浮かび上がらせる。いつもの妖艶な笑みはなく、その瞳には暗い炎が灯っていた。
「あなたが、私を選ぶ理由なんて、どこにもないのにね」
「睡……」
「だって、私はもう壊れてる。愛なんて信じてないし、綺麗なものも全部汚してしまいたいくらいなのに」
睡の声は、どこか泣いているようだった。
優はゆっくりと手を伸ばし、睡の頬に触れる。震えているのがわかった。
「それでも、私はあなたがいいの」
静かな沈黙が降りた。
睡は唇を噛みしめ、優の胸に顔をうずめた。その指先はまだ強張っている。
「……優も、壊れてくれる?」
その問いに、優は何も言わなかった。
ただ、睡の背中に腕を回し、ゆっくりと抱きしめた。