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メジロ家のとある一室。
今、その一室で締切に追われるウマ娘が居た。
カチカチ…カチカチ…
「違う…。」
ケシ…ケシ…
「もっとこう…いい感じに…。」
カチカチ…カチカチ…
「ん〜〜〜………。」
アタシは手を組んで、考え込む。
投稿する締切まであと3日しかないのに…。
「あ゛ー!!いい構図が浮かばないー!!!」
アタシは髪を思いっきりぐしゃぐしゃと掻き回す。
アタシ…どぼめじろうの漫画、
【 これって、禁断の恋って奴!?トレーナーとのドキドキ学園生活!? 】
の最新作を今書いてる。
今回は少しエッッ!な感じにしようと考え、今はその丁度山場の所、トレーナーが主人公のウマ娘を押し倒してキスをするってシーンなんだけど…。
トレーナーとこんな経験した事がないから思いつかない。
あのトレーナーに押し倒される?無理無理無理!!しかも、もし「押し倒してくれない?」なんて言ったらアタシがエッチなウマ娘だと勘違いされる…!!
「あ゛ー!!どうすれ___」
「あら〜?ドーベル、まだ寝てなかったんですわね〜♪」
アタシは背筋が凍る。
聞き覚えのあるゆったりとした声、
ほんのり香る優しくて甘い匂い、
「ま…まさか…。」
アタシはゆっくりと後ろを振り向く。
「うふふ〜♪」
あ…終わった…。
「ひゃあああ!?!?」
アタシは思わず変な声が出た。
そして、椅子から落ちた。
「ドーベル!?大丈夫ですか〜!?」
椅子から落ちたドーベルを見てあたふたするブライト、それを見て「大丈夫だから!」と話すアタシ。
椅子から落ちたという事より、今、ブライトにあの原稿が見られてないかの方が1番心配だった。
⏱
「ありがと、ブライト…てか、部屋入る時はノックしてよね…。」
ブライトに支えられながらアタシは立ち上がる。
「あら〜、そうなのですね〜。申し訳ありませんですわぁ〜…」
ブライトの耳が垂れる。
「反省してるならいいよ、次から気をつけてね!」
そうアタシが話すと「はい〜!」と手を合わせる。その裏でアタシは大急ぎで原稿を束ねる。
「そ、それよりさ…ブライト。」
「ドーベル…どうかなさいまして?」
アタシはすーはーとゆっくり深呼吸した後、キョトンとした顔をしているブライトに話す。
「___アタシの机にあった紙、見た?」
ブライトは自身の頬に人差し指を当て、考える仕草をする。そして、ブライトは答える。
「___いいえ、見ていませんわぁ〜。」
それを聞いて、ほっとする。
「そっか、ならいいんだ!もう夜も遅いし、ブライトも部屋に帰ったら?」
机にあるデジタル時計を見ると夜11時、他のメジロのウマ娘は全員寝ている時間だ。
「あら〜?もうそんな時間でしたのね。早寝早起きは体に得ですものね〜♪ドーベルは優しいですわね〜♪」
そう言いながら、部屋に帰ろうとする。
( よし…見られなくて済んだ…。ブライトが部屋から出たら続きを…。 )
そう思いながら再び椅子に座ろうとした時だった。
「ドーベルも、『締切が〜…』とか『構図が〜…』とか仰ってないで、早めに寝た方がいいですわよ〜?【 どぼめじろう先生 】〜♪それじゃあ 、わたくしはこの辺で〜♪」
___いや、待って。
ブライトが部屋の外に出ようとする。
「待って!待って!ブライト!絶対見てたでしょ!?アタシの原稿!!」
「あら〜?何も聞いてませんですわよ〜?決して『トレーナーとそんな経験した事がないのに〜!』なんて聞いてないですわよ?」
はうっ…。
「それに、わたくしは『原稿を見た』なんて一言も仰ってないですわぁ〜。」
はううっ…!
「まさかドーベルがあんなに破廉恥な漫画を描いて___」
「もう…やめて…ブライト…アタシのメンタルが…粉々になりそうだから…。」
「ほわぁ〜?」
「『ほわぁ〜?』じゃないのよ…。」
という訳で、ブライトに原稿を見られました。これからアタシどうすればいいですか…。
「うふふ…♪」
⏱
「お願い!ブライト!みんなには絶対言わないで!メジロのみんなにも、同級生にも!!!」
アタシは全力でブライトに頭を下げる。
メジロのみんなならまだしも、同級生にバレたらって考えたら…特にアタシが居る寮の部屋で同室の『あの大型犬みたいな子』にバレたら………。
怖くて震えが止まらない。
「わかりましたわぁ〜、ぜっったいに言いませんわぁ〜!おくちちゃっく…ですわね〜♪」
そう言いながら、ブライトは口の前で手を動かす。
「ありがと…!ブライト…!」
ひとまず、これで安心だ。
「でも…締切まであと2日しかありませんわよ?間に合いますか?ドーベル。」
アタシは再びデジタル時計を見る、日を跨いで夜中の12時半になっていた。
「うーん…あのコマの絵が書けたらあとは簡単なんだけどなぁ…」
アタシはペンをくるくるさせながら話す。
「う〜ん…これは由々しき事態ですわね〜。」
ブライトが頷く。
「てか、なんでブライトは部屋に居るの!?自室に帰るんじゃなかったの!?」
「ほわぁ〜?」
「『ほわぁ〜?』じゃなくて!!」
ダメだ、ブライトと話すとブライトのペースに巻き込まれる。
「あ゛〜!!どうすれば〜!!!」
少しの間の沈黙の後、ブライトが話す。
「そうですわ〜!ドーベル、わたくし達で押し倒したり押し倒し返したりするのはいかがでしょう〜!」
ブライトは手を合わせた後そう話す。
「そうすれば、恥ずかしがり屋さんのドーベルでも簡単にできるはず…!」
詳しく説明すると、トレーナー役と主人公のウマ娘役で分け、押し倒したり押し倒し返したりする事で、トレーナー側の構図とウマ娘側の構図を考えよう…という事らしい。
「確かに…これなら大丈夫…かも。相手もブライトだしね!」
「それじゃあ、早速やってみましょ〜!」
こうして、ブライトとアタシの押し倒し合いごっこ(?)が始まった。
⏱
「まずは、わたくしがトレーナー役ですわね〜♪」
アタシとブライトはベッドに移動し、早速役ごとに分かれて試す事にした。
「それでは、失礼致します…とりゃあ〜!」
「___きゃっ!」
ドサッ…!
ブライトは掛け声と同時にアタシを押し倒し、体に跨る。
「大丈夫ですか〜?痛くないですかぁ〜?」
「まぁ…ベッドだしね…。」
ブライトの匂いがいつもより濃くなる。
なんでだろ…女の子同士なのに…ドキドキする…。
「も…もういいよ!ブライト!役変わろ…!」
そうアタシが話す。
でも、ブライトはアタシの体から動こうとしない。
ぎゅっ…♡
むしろ、手を優しく握ってきてるんだけど…。
「ぶ…ブライト…?」
「___ドーベル、まだキスしてないですよ?」
そう言い、ブライトは顔を近づける。
ブライトの幼い顔がいつもより艶やかに見える。
「待っ…待って!まだ準備が…!!」
「___キスシーンも実際に試さないといけませんわよ?」
ぎゅううう…♡♡
ブライトの手を握る力が強くなり、指先が僅かに熱くなっている。
「ブライト…!ストップ!ストップ…!!」
「んっ…♡」
ブライトとアタシの唇が重なった。
不思議な感覚だった。
なんだかふわふわとして、
頭が少しパチパチと刺激される。
( 何…これ…?気持ちいい…♡ )
2人は数分の間、唇を舐めたり、ひたすらキスを交わしたりを繰り返していた。
「ん…♡ドーベル…♡」
ブライトは自身の唇をアタシの唇から離す。
まだほんのり暖かい。
「ブライト…♡」
アタシは唇を少し舐めてみる。
ほんのりブライトの味がする。
「こ…今度は…アタシがトレーナー側だね…///」
「そう…ですわね…///」
アタシはブライトと場所を交代し、次はアタシがトレーナー側になった。
「………ねぇ、ブライト………///」
「な………なんですの………?///」
お互い顔が赤くなっている。
あんなに可愛い顔されたら…アタシ…アタシ…///
「アタシ…ブライトが好き。」
「えっ…ドーベル…?」
ぎゅっ…♡
ブライトが手を握ってくれたように、アタシはブライトの手を握る。
「ブライトの…その…幼い顔とか…ふわふわの髪とか…全部好き…。」
な…何言ってるのアタシ…!!
今の雰囲気に流されて…つい…!!///
「ごめん…!!今のなしなし!!女の子同士の恋愛なんて___」
「ドーベル…めっ!…ですわぁ〜。」
ブライトは握っていた手を離し、アタシの口に人差し指をそっと当てる。
「……………///」
思わずアタシは話すのを途中でやめてしまう。
指から伝わるブライトの体温。
指を当てられているだけなのに、妙にドキドキしてしまう。なんでなの…?
これが…【 恋 】…なのかしら。
「わたくしも、ドーベルが大好きですわ。凛とした顔、わたくしには無いサラサラのストレートヘア…まるでお人形さんみたいで…。」
ブライトはゆっくりと人差し指を離す。
「___女の子同士の恋愛も、悪くないかもしれませんわよ?」
ブライトはアタシの頬を優しく覆う。
そして、ブライトはアタシにゆっくりと近づき…。
キスを交わした。
「ドーベル…どうぞ来てくださいませ…わたくしの元に…。」
ブライトはゆっくりと手を広げ、アタシをハグに誘う。
「ブライト…いいの…?」
アタシはまだ躊躇っていた。
ほんとに、女の子同士の恋愛は許されるのか。
しかも、同じメジロのウマ娘と恋愛なんて。
世間からどう思われるだろう。
___怖い。
「___わたくしも、はっきり言って怖いですわ。」
そりゃ怖いよね。
まだ、女の子同士の恋愛が珍しいこの世界。
もし、アタシ達のせいでメジロ家に汚名がついてしまったら…。
アタシ達…どうしたら…。
「でも…わたくし、覚悟できましたわ。」
普段見せないようなブライトの真剣な顔。
アタシはそんなブライトの顔を見て、釣られて真剣な顔になる。
「___覚悟?」
「はい、わたくしはたとえ世間から冷たい目で見られようとも、どれほど罵詈雑言を吐かれても気にしませんわ。」
ブライト、強くなったね。
強くなれてないのはアタシの方だったね。
ごめんね、アタシの事、そんなに思ってくれてたのに、アタシは…。
「___わかった。」
アタシは、
「ドーベル…?」
アタシは…
《 強くなるから 》。
「ブライト…アタシ…もう周りの目線なんて気にしない。罵詈雑言も何もかも気にしない。」
アタシは覚悟を決めたような顔でブライトに話す。
「メジロに汚名が付きそうだったら、アタシが頭を下げる。マックイーンやライアン、他のメジロの子達にも被害を受けてほしくないし。」
ブライトは何か言いたげに口を開いていたが、アタシは話すのをやめない。
話すのをやめたら…ダメな気がするから…。
「だから、だから…!!」
アタシの目から涙が流れる。
その時、アタシを優しい匂いが包み込んだ。
「ドーベルだけに辛い思いをさせたくありませんわ。わたくしも頭を下げます。だから、もう1度、ドーベルの口から言ってほしいですわ。」
アタシの涙に釣られ、ブライトも涙を1粒流す。
「___何を言ったらいい?ブライト。」
少しの間が空いた後、ブライトはいつものような笑顔を見せ、ゆっくりと話す。
『もう1度、好きって言ってくださりませんか。』
この後、アタシは彼女に再びキスを交わした。
そして、そのまま愛を確かめ合った。
口や首筋、胸にたくさん愛し合った痕を付けた。
それがアタシの最大限の気持ち。
素直に『好き』って言える日は来るのかな。
今は、恥ずかしくて言えないけど、
いつか、絶対、直接気持ちを伝えてあげる。
それまで、ブライトらしく、【 のんびり 】しながら待っててね。
『愛してるよ、ブライト。』
🟣
おまけ
あれから何時間かが過ぎ…。
「それはそうと〜、肝心の漫画の方は…進んでいらっしゃるのでしょうか〜…」
ブライトはあの後のドーベルが気になり、ドーベルの部屋を訪れた。
コンコン…!
「ドーベル〜!原稿の方は進みましたか〜??」
部屋の中からドーベルの低い呻き声がする。
「ドーベル〜!失礼致しますね〜!」
部屋に入ると、げっそりしたドーベルがベッドに寝転んでいた。
「うへぇ…やっと終わった…。」
どうやらあの後、何とか徹夜で仕上げたらしい。腕は悲鳴を上げ、バッドステータスの【 夜更かし気味 】と【 肌荒れ 】を取得していた。
「あら〜!ドーベルが大変ですわぁ〜!」
ブライトはドーベルの変わり果てた姿を見てあたふたする。
「あ!そんな時はあれですわぁ〜!!」
ブライトがカバンから出したのは、今話題のバッドステータスが全て治る薬【 ナンデモナオール 】だ。
「ドーベル〜!これで大丈夫ですわぁ〜!」
「あ…ありがとう…ブライト…。」
だが、何故か使い方がおかしい。
ブライトはナンデモナオールを口に含み、ドーベルに近づく。
「えっ…待って…ブライト…それはそんな使い方じゃ…んっ…♡」
メジロドーベルの【 夜更かし気味 】が治った!
メジロドーベルの【 肌荒れ 】が治った!
メジロドーベルとメジロブライトの友情トレーニング(?)が発動した!
2人のやる気は絶好調だ!
メジロドーベルは掛かり気味になった!
おわり(?)