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偽物。
僕は幼い頃、執事を亡くした。
小学校の帰り道、交通事故を頻繁に起こす場所が通学路だった。
他の生徒たちは他の場所を通り大回りする事が出来たが、この場所を通らなければ僕らは通学できなかった。
あの噂はデマじゃなかったのか、なんて疑うほどになってきた頃、「それ」は起こった。
僕の体が前方へと大きく弾き飛ばされる。
いや、押されたと言ったほうが適切か。
ドンッ__
背中を押される感覚と同時に感じたのは自身が顔面からアスファルトへ落ちるから怖い、とかの感情じゃなくて。
後ろにいた彼が、
「執事‼︎」
赤い鮮血が、目の前で飛び散る感覚が。
思いたくなかったことで、それで…
「執事‼︎執事‼︎‼︎」
何度揺らしても、どこから流れてくるとめどない血が地面に水たまりを作っていくばかりで。
「執事‼︎」
僕は、彼を助けれなかった。
数日後、彼が死んだのが分かり葬式が開かれた。
執事としての役割を与えた彼の両親は泣きながら僕へ責任転嫁を押し付けてきた。
「お前がやったのだ‼︎」と、
「お前のせいで‼︎」…と。
僕は、助けようとしたんだよ。
「…ごめん、なさい…ッ、」
けど、謝ることしか出来なかった。
「”人間”様。お召し物を交換いたしましょう」
僕は嬉しかった。
彼が目を覚ました、と聞いた時は…本当に。
けど、彼は僕を覚えていなかった。
「お前は誰なんだ」
「私は貴方様の”もの”です。」
機械のように繰り返し言う。
『はぁ?俺は…そうですね、』
言葉を濁らせる彼を、もう一度見たいと思った。
「お前は僕の執事じゃない」
悲しそうな顔をするから、言えないんだ。
アイツが悪いんだ。
「…変えましょうか。」
着替えさせる彼は、どんな表情をしてるのだろうか。
僕は、彼を見たいと思った。
「僕は…お前が嫌いだ」
「ええ。分かっています」
即答する彼は、「彼」じゃない。
「僕は…、お前に」
頬に何かが伝う。
お前に、幸せになって欲しかったのに。
「…私は、あなた様の元に。」
後ろから、あの時の優しい声が聞こえた。
振り返る。
「…何泣いてんだよ。馬鹿w」
執事とは思えない金髪の彼がそこには立っていた。
浮いていた執事服は、きちんとした風貌のある姿に着せられていた。
涙がボロボロと溢れてくる。
「なんで帰ってきたんだよ…、」
嬉しい。
「帰ってきちゃダメだったかぁ?」
頭を撫でる手が、冷たい。
「早く成仏しろよ…馬鹿ぁ、」
「…はいはいw」
優しい手つきは変わらない。
けど、とてつもなく嬉しかったんだ。
「お前は僕の執事…離れんなよ!、」
「はいはい…、」
ごめんな、と繰り返す彼。
本物の彼が帰ってきた日___。