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こんな事を言えば可笑しくなったと思われるのは重々理解している為、
誰にも相談出来ていない悩み事がある。
其れは、
「だから、何なんだお前は、」
思い人の死んだ筈の元恋人が見える様になったことだ
「いえ、貴方には興味ありませんよ?コーリャに逢う為です。」
私はこの男に一切心を許していない。
それに此奴はゴーゴリに暴行を振るっていた筈だ。
なのに何故気になるんだ、?
「お前は、ゴーゴリに暴行を加えて居たのだろう?なのに何故そこまで執着するんだ、」
不可解に思い問い掛けると、
珍しくフョードルが解答につまる
「彼は、不特定多数の男に嬲られ暴行を加えられました、しかし、愛情を知らない彼は其れを受け入れていた、
いや、寧ろ悦楽を覚えていました。なので、救えなかった、何も出来なかった代わりに、見守りたいんです。
どうか、彼が幸せに成れるように」
「そう、か、、、、、」
其れを聞いた私は、立ち上がり玄関へと向かった。
「あれ、何処行くんです?」
そう首を傾げるヒョードルに大きな溜息を付く
「見守りたいんだろ?ほら、行くぞ」
私はフョードルに手を差し出した。
理由等無いが、只、少し同情した、其れだけだった
「、、、、ありがとうございます」
「勘違いするなよ?私はただ、ゴーゴリの幸せの為に動いて居るだけだ。
所で、フョードル。ゴーゴリはどんなスイーツが好きか知ってるか?」
「嗚呼、今日はバレンタインでしたね。あれ、もしかして?」
ヒョードルがニヤニヤと口角を上げながら私を見つめる
「、、、、、、、案内しないぞ」
「ふふ、冗談ですよ。
ドーナッツなんてどうです?
彼、よく好んで食べていましたよ」
「ありがとうな」
早速アドバイス通りに彼の好きそうなチョコレートのかかった季節限定の洒落たドーナッツを一つ購入し、
病院へと向かった。
「ゴーゴリ、ドーナッツ買って来たぞ。」
彼は新しい玩具を目の前にした少年の様に目を輝かせ、はしゃぐ
その様子を二人で見守る様に眺めていた。
ヒョードルは無表情だが、何処か穏やかで、楽しそうだった
「え!!!!ほんと!?!?
わあ!!美味しそう!
あれ、シグマ君は食べないの?」
しばらく夢中だった彼の表情が曇るので
「私の分はいいから食べてくれ」
眉を下げて赤子を諭す様な口調でそう伝える
しかし彼は不満な様で、頬を膨らませそっぽをむく
「えー、ほら、一緒に食べよ?美味しいよ?」
遠慮し続ける私を見かねたのか、
残った半分をあーんといいながら差し出してきた
流石に断り続けるのも申し訳ない為、受け取り口にする。
「、、、、、、美味しいな」
「でしょ?」
心から楽しそうに、悪戯に微笑むゴーゴリを
ヒョードルは何処か神妙な面持ちで眺めていた
「コーリャ、、、」
案の定、御見舞いが終わってからも何か考え込んでいる様で、
返事がない
いつもの余裕ありげな笑みを浮かべる此奴からは想像すらできないだろう
「ヒョードル。
今度ゴーゴリに贈り物をしようと思うんだが、何がいいんだ?」
「、、、、、、、」
返答、なしか
深夜三時ごろ物音がしたと思えば
ベランダからヒョードルが満月を眺めていた。
「こんな時間に何しているんだ?」
そう問い掛けるがやっぱり返事はなかった為、
ずっと悩んでいたことを打ち明ける
「、、、、、、なあ、教えてくれ、お前にあって、私に無い物とは何なんだ、?」
その問いにはヒョードルは口を開いた
「そんなの、僕にも解りませんよ
ですが、貴方と居る時の彼は、僕と居る時よりも楽しそうでした
、、、、、、、、、、なので後は貴方に任せることにします」
「待て、まだ聞きたいことが、」
「コーリャをどうか。幸せにしてください。」
ヒョードルの身体は眩い光に包まれ、次第に見えなくなった
これが、成仏というのだろうか
私はまだゴーゴリの事を全く知らないのに、
此れからどうしたら、、、
「シグマ君、どうしたの?元気ないよ?」
「?ああ、大丈夫だ。」
ゴーゴリは納得しない様で、訝しげに押し黙る
「ほら、元気出して?」
いきなり服の袖を掴まれ、引き寄せられたと思えば、控えめな口づけされる
「あ、ありがとうな」
「照れてるの〜?」
小悪魔的な笑みを浮かべて悪戯に笑い掛ける。彼に
たまには少し位仕返ししてやろうと画策し、口付けを返す
「ん、♡はッ、」
「ふふ、お返しだ」
二人で笑い合った。
他愛もない有り触れた只の日常。其れが何よりも尊い物だった。
なのに、
「誰?何なの、?怖いよ」
ごめんな、
「嫌だ!助け、、やめ、痛ッッ、」
助けてやれなくて、、
「あ”、ぐ”、ぁ”、なん、れ”、?な”、んれ”?た”、ず”げ、で”ぐれな”いの”、?」
私が直ぐに駆け付けていられたら、こんな事には、、、、、
「き”、ら、い”、、、、、、き”ら”、い、し”ぐまく”んも、みん”なだい”きらい、、き”えち”ゃえ”、、ぜん”ぶ、ぜんぶ”、こわれちゃえ、!!」
、、、、、、、、、、、嗚呼、
「シグマさん何で、、、此処にいるんですか、?、、、、、まさか、」
「え、?
しぐまく”んがし”んだだ、なん”て”うそ、だ”よ、ね、?」
「ぼくのせい、?いやだ、やだ、いかないで、なんで?もう、だれも僕を置いて行かないでよ、!」
すっかり廃人と化した彼には、
まるで恒星の様に明るく、私達の手を引っ張って行ってくれた面影など一つもなく
ただ来ることの無い恋人を待ち続けては、現実に打ち拉がれ、
薬物と性の快楽に頼らずには生きられない身体になっていた
何処の誰かも解らない男に身体を売って、
その場凌ぎで快楽に呑まれていく、そんな彼を只々見つめる事しか、出来ない、のか
「こんなの、あんまりじゃないか、」
「此れはきっと、罰、何でしょう。」
一人の青年は、明るく眩しい過去に縋り続けた
そうでもしないと、今にも壊れてしまいそうだから
寧ろ、
「そうだ、お前みたいに逢いに行くことは出来ないのか?」
「出来ますけど、良いんですね?」
「嗚呼、それでも良いんだ」
フョードルは、顔を伏せた
「シグマ、くん?なんで!?何処にいたの?ぼく、ずっと、」
「ごめんな、」
私は彼を強く、強く、痛いくらいに抱き締めた。
この行動が、どんな結末を指し示すのか、最初から解っていた。
それでも、最後になっても逢いたかった人だから
「ひとりでどんな気持ちで生きてきたと思ってるの、?謝るくらいなら、あんな事、しないでよ、」
「ごめんな、、、、、ごめんな、」
あの時のフョードルの様に、私の身体が光に包まれてゆく
「嫌だ、もう行かないでよ、」
「、、、、、、、、私は行かなければならないんだ」
私は、彼を引き寄せ、まるで硝子の伝統工芸品を扱う様に
そっと彼の唇に、接吻をした
「ほら、元気を出して、どうか、どうか、幸せに生きてくれ、
其れが、私の、私達の願いだ」
ゴーゴリは大きな瞳を潤ませて、
まるで光り輝く宝石の様な大粒の涙をぽろぽろと零す
そんな顔をしないでくれ
あの日、
私達を引っ張ってくれた時の様に私は笑えて居るだろうか
「ずるいよ、そんなの、
シグマ君もドス君もいないのに、、、、僕はどう生きて行けば良いの、、、、、?」
敢えてその問い掛けには答えずに、例え貴方を縛りつける呪いだとしても
いや、この感情に名前なんて要らないな
此の世に一人しかいない最も愛おしい貴方へお返しに
最初で最後の言葉を贈ろうか
「愛してる」