「おい」
………
「おい!」
………………
「いつまで寝てるんだよ!」
………はっ!
「はい!」
「あ?やっと起きたか…。お前寝すぎなんだよ。もう6時間目終わって掃除の時間だぞ。お前が邪魔で掃除出来ないんだよ。さっさと帰る用意して帰れ。」
うわぁー、寝すぎた。最悪だーーー!!!!
夜更かししたせいかな?なんでだろう。いや、そもそも2時間目終わった時点で1回起きたな、3.4時間目はちゃんと授業受けたし、昼休憩でご飯食べたらまた眠くなって、5時間目の国語で寝落ちしたような…?
「おい、聞いてるのか?はやく帰れ。掃除の班が困ってるだろ」
はっとして、周りを見てみると、掃除の班の子達がこちらを見ている。嘲笑ってる子もいれば、仲間と雑談をしている子もいる。窓を見れば夕日が差していて、簡単に言うとエモい。
「すみません。今から帰ります。」
帰る用意をして、教室を出た。教室の前の廊下には、今日の朝連絡を繋げた前園さんがいる。
「一緒に帰ろう?」
「い、いいけど…。待っててくれたの?」
「うん。しょうがなく。」
「そっか、ありがとう」
やばいやばいやばい。内心バックバクだ!
女子と帰ったことがない僕が、僕が!今日ついに女子とご帰宅か!?
まじか!やばいしか出てこない頭よ!落ち着け!
「ところでさ、前園さんって私の事呼んでるよね?それやめてみない?」
「っていうことは唯華さん?」
「いや、なんでだよ。唯華でいいよ。呼び捨てで。」
「わ、わかった。でも馴れ馴れしくない?」
「うーん、そんなことない!」
「そっか。」
なにこれ。え。付き合ってたっけ〜?なんか嬉しいな〜。うふふふふ〜。
「まって、澄夏いる。別のルートで帰っていい?」
「いいけど…」
「ありがとう」
え、まってくれ、澄夏ちゃん?がいるのか?
仲いいのに避ける必要無いような気がするんだが…。もしかして、僕が言ってもいいのか分からないけども、こ、恋のライバルなのか〜!?
これは三角関係というやつか?怖いぞ。
やばいな。大丈夫か?途端に汗が。。。
「ごめんね。急に一緒に帰ろなんて。迷惑だよね。でも今日だけ一緒に帰って欲しい」
「わ、わかった」
なんだこれ、恋してるのか?もしかしてこの唯華に恋してるのか?たしかに、唯華は可愛いし、性格も悪くない。ただ、僕の苦手な鈴木 優梨 と友達なところが欠点だと思っている。
「あのさ、今日の夜、電話してもいい?」
「いいけど、もしかしたら寝てるかも」
「じゃあ、電話する時間決めたら連絡する」
「あ、ああ。連絡待ってる」
ん?これ、僕が唯華を好きだったら両思いじゃないか?まじか。とりあえずさっきの三角関係が気になりすぎる!あれはほんとによくある恋のライバル的なやつなのか?それとも喧嘩して仲が悪いだけとか…。考えれば考えるほど色んな可能性が出てくる!
「ねぇ、碧くんの住んでるとこの最寄り駅ってどっち?」
「僕?僕は、あっち方面」
そういって右側を指さした。
「そっか…。私はこっちなの」
そう言って唯華は左側を指さした。
「そろそろ電車来るって、電光掲示板に書いてるから、ここでお別れだね」
「そうか、じゃあまたな。」
「うん!」
そう言ってお互い手を振って電車に乗った。
待てよ、もう駅まで…というか電車まで乗っているのか。早いな。せっかく一緒に帰ったのに僕の考え事とコミュ力が無いせいでつまらなく感じさせたんじゃないか??唯華ちゃんがせっかく誘ってくれたのに、一緒に帰っても面白くないからこれからは一緒に帰らない…。なんてことも有り得るよな…。そういえば、誘ってくれた時も『今日だけ』って言ってなかったか?いや、確か言ってたような…。ということは、やっぱり初めからあまり乗り気じゃなかったということなのかもしれない…。じゃあなんで僕をわざわざ待ってくれたのか、そこまでして一緒に帰りたかったのかが疑問に浮かぶが…。そこはまあいいか。
心の中でも早口が出てしまって自分でも自分が気持ち悪いと思った。でも、そんなことを思っていたらいつの間にか最寄駅まで着いていた。
ここから家に帰ろうと、駅を出る。さっきまで夕日が差していたのに、もう辺りは暗くなっている。そして、家やお店の明かりが点々と付いていて、一日の終わりを感じるのと同時に生きていることを実感する。僕はなんのために生きているのだろうか。ふと、こんなことを思う時がある。夢や目標、なりたい人物像なんてないこの僕が、この世に地に足をつけて生きているのは何故なのだろうか。神様は僕になにかの可能性を感じたのだろうか。才能なんて見当たらない、開花さえもしない僕という花。それは綺麗な花なのだろうか?
ん〜〜。
考えると疲れるな。もうや〜めた!考え事はこれでおしまい!さてさて、家にも着いたし一旦スマホ見るか〜!
あれ?3時間前に朱音のSNSが更新されている。
〈恋する乙女って可愛いよね〜。そんな可愛い乙女の恋心に気づかない男がいるんだよな〜。早く気づけよぉ……。〉
これは僕が今まで澄夏ちゃんの恋心に気づかなかったから言っているのか???朱音はあまりSNSをやる人ではないから、珍しすぎて沢山の人に見られている。これは誰に向かって言っているのだろう。本人に聞きたいが…。
ここは時の流れに任せて聞かないことにした。いや、聞いたらだめな気がした。
ーーーーー朱音目線ーーーーーーーーーーーー
なんで気づかないんだよ。やっぱり友達止まりかな…。本当は、ずっと好きなのに。好きなんて言えない。碧くん…。なんで私がずっと”くん”を付けて呼んでいるのか、それは友達から恋人関係になっても友達だった頃と同じような…、今と同じような関係のままがいいからだ。
碧くんは、すごく優しくて、背も高くて、顔も悪くない。おまけに私服がおしゃれ。私が呼んだらすぐに来てくれるし、小さい時に私がコケて泣いてた時、碧くんはハンカチをもって来てくれた。思いやりもあるし、モテない理由なんてない。なのになぜ碧くんに今まで彼女がいなかったのか…。それは、女子で言う高嶺の花的な存在だから。
去年、中学生だった時に同じクラスになったことがある。碧くんが好きだと言っていた子がいた。その子に〔告白はしないの?〕と聞いたことがある。その子はこう言っていた。〔碧くんはかっこいいからきっと彼女がいるんだよ。言ってないだけで彼女がいるかもしれない。彼女がいたとして、私が告白したら迷惑でしょ?だから、私は叶わない恋をしてるんだ。自分でも分かってる。〕と。
その時、私は碧くんとの距離を感じた。でも友達なのは変わりない。幼なじみだから、彼女が居るのかを聞くのは容易だ。でも聞いたら終わりな気がして聞けなかった。でも、この間公園に呼び出して、純夏ちゃんのことを話すと喜んでいた。だからきっと今は彼女がいない状態なんだ。正直、私の気持ちを言ったら今の関係が無くなってしまうかもしれない。でも、今しかない。そう思った。少しでも私の気持ちに気づいて欲しくてSNSに投稿してみたけど、碧くんから3時間も反応がないから、気づいていないのだろう。少し寂しいような気がしたが、私の気持ちをもうすぐ言う。だからこれはあまり気にしない事にした。
ーーーーー朱音目線①.endーーーーーーーーー
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!