ぼびーは、俺を溺愛してるみたいだった。
あいつから告白してきたのはとても意外だったし、俺はあいつのことを好きだったからとても嬉しかった。それでも、月日が経つ事にあいつへの愛が分からなくなった。俺は確かにあいつの事が好きだ。今も、昔も。
あいつとの行為を経験してから、どんな女を抱いてもどんな男と致しても何も思わなかった。きっと、俺が何をしてもあいつは許してくれると思ってた。だから朝帰りもしたし女も抱いた。この数ヶ月の間に沢山の好きを色んな女に振り撒いた。その度に、ぼびーの気持ちがわからなくなった。昔は、あいつが少し苦しそうならすぐにわかることが出来た。
慰めてあげられた。いつしか、あいつとは話さなくなって。毎日ある朝食。洗濯された俺の服。それらを見る度に酷い頭痛と罪悪感に襲われた。昔は俺が作っていた朝ご飯。ぼびーは料理が苦手だったから。俺が作らなくなって数週間。ぼびーは、大切にしていた手に傷を作ってまで俺の分と自分の朝食を作っている。それに手をつけるのがとても申し訳なくて、俺は毎朝その料理を食べなかった。俺の好物、好きな匂い。日を増す事に美味しそうになる料理。その度に罪悪感に殺されそうになった。だからまたその日も女を抱いた。毎日毎日、俺を玄関まで迎えに来て。
最初の2ヶ月くらいは、本当に毎回、玄関に来て、どんなに夜遅くに帰ってきてもぼびーは笑顔で俺に言った。「おかえり、遅かったやん。無事でよかった 。」その言葉に俺は、「うん」、そんな言葉しか口から出なかった。
ぼびーの隈は増えて、元々良くない目付きがさらに悪くなってしまっていた。昔は、強請らないと言ってくれなかった愛情の言葉や、行為の誘い。恥ずかしそうに、どこか気まずそうに。最近は言ってくる。俺がいつ帰宅してもあいつはいたし、俺の朝昼晩、毎食でてきた。怖くなった。俺は何をしているんだろうと。ただ素直に愛情を向けてくれるあいつから逃げるように、また女を抱いた。ぼびーが好きだと言ってくれた匂いも、きっとキツイ香水の匂いしかしないはずなのに。ぼびーは俺に抱きついたり、キスをしてくる。その度に、「好きやで。にき」なんて、愛の言葉も一緒に吐かれた。それでも俺があいつから避け続けたからだろうか、いつしか話さなくなって言った。深夜に帰ってきたら、いつもいるそいつがいなくて。部屋に近ずいたら苦しそうに泣く声が聞こえた。心臓が痛くなった、これまでにないほど。ぼびーを忘れるために、お揃いだったアクセも捨てた。ぼびーがくれた服も部屋に隠した。その度にあいつの顔は曇った。もう自分が、ぼびーと向き合えないことを今更知った。話せなくなった。1番近くにいたはずで、今もそうなはずなのに。あいつのことが分からない。怖かった。
好きなんだ、大好き。ぼびー。好きだよ。
でも、もう戻れないんだと察してしまった。ぼびーは俺を無条件で愛してくれるから大丈夫。心のどこかでそう思っていたのかもしれない。また、朝に帰ってきた。ぼびーの迎えはなく、部屋に行く気すら起きずに俺はリビングに座っていた。すると、目尻が赤いぼびーがいた。これは泣いたんじゃないと自分を落ち着かせ、ぼびーを見ないようにした。
しばらくして、あいつが泣き出した。ぞく、っと冷や汗が流れた。体が自分のモノじゃないような感覚に襲われるほど苦しくなった。だから俺は言った「何?泣くなら部屋で泣いて」絶望したような表情で涙を堪えるぼびーが、酷く新鮮で、酷く可哀想で。じ、っと見つめた。すると、切り替えたような顔でぼびーは言った。「すき、にき、」その言葉が、とても嬉しかった。まだ愛してくれているんだと感じた。だから俺は、声を出そうとした。俺も好き。その言葉が声に出なかった。結局出たのは「そっか」これだけだった。一輪の花を踏み潰されたような顔をして、ぼびーは声を絞り出したように発した
「告白、してごめん。 」
やめてよ。謝らなきゃ行けないのは俺なのに。愛してる愛してるよぼびー。
コメント
2件
めちゃめちゃ続きが気になる(*T^T)