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深い闇が降りる教会の中、まどかは静かに歩いていた。石の床が足音を吸い込む中、目は鋭く、何かを探すように周囲を見渡している。
教会の中には、温かみのある空気はもう存在しない。血の跡が床を飾るのみだ。誰かの息遣いも、足音も、何も聞こえない。それでもまどかは、足を止めることなく進んだ。
そして、教会の中央に差し掛かったとき、彼女はそれを見た。
「……レイス。」
レイス・ワイルが、ひっそりと佇んでいた。赤い目はまるで、気づいていたかのように光っていた。まどかの足音が響くと、彼はゆっくりと顔を上げ、まどかを見つめる。
「まどか。何の用だ?」
その言葉には、少しの興味もなさそうな冷ややかな響きがあった。まどかは一歩踏み出し、ゆっくりとその距離を縮めた。
「あなたがここにいるって聞いて、ちょっと気になってね。」
まどかの口元には、軽い笑みが浮かんでいる。しかし、その目はどこか決意に満ちていた。レイスの存在は、彼女にとっても一つの大きな謎であり、危険でもある。しかし、彼女は今、確かに感じていた。彼には、まだ彼女と話すべき何かがあるはずだと。
「気になった? それで?」
レイスの声音は、まるで何も求めていないかのようだ。だがまどかは、その冷たい態度に何かを感じ取る。彼もまた、誰かに対して何かを求めているのではないか。それがわかる気がした。
「私はあなたがどうしてここにいるのか、知りたかった。貴族の末裔が、なぜこんな場所に? そして、何を求めている?」
まどかの問いかけに、レイスはしばらく黙った。彼の赤い目が、まどかの顔をじっと見つめる。
「求めているものがあるとすれば、力だ。それがあれば、何でも手に入る。すべてを操ることができる。」
その言葉には、どこか呆れたような響きがあった。まどかは、その言葉をしばらく考えてから、静かに頷いた。
「それなら、力を求めることは理解できるけど。あなたはそれを使って何をするつもり?」
レイスは目を細め、少しだけ微笑んだ。その笑顔には計算された冷徹さがあり、まどかには一瞬、彼の真意が見えないように感じられた。
「私の過去には、戦と裏切しかなかった。それを繰り返す気はない。ただ、私は――」
その時、教会の扉が開く音が響いた。振り向くと、萌香が立っていた。彼女の目はまどかとレイスを交互に見つめ、そして静かに歩み寄る。
「まどか、レイス……。」
萌香は少し息を切らしていたが、その表情には決意が浮かんでいた。
「私たち、やらなきゃいけないことがあるのよ。」
まどかはその言葉に軽く頷き、レイスの方に視線を戻した。レイスも萌香の存在に気づき、少しの間沈黙が続く。
「どうやら、私に協力しなければならない時が来たようだな。」
レイスは冷ややかに言った。それはまどかにとって予想外だった。協力を申し出るとは思わなかったからだ。その瞬間、まどかは何か新しい力が芽生えたような気がした。
「協力? どういうこと?」
まどかは少し驚きながら尋ねたが、レイスはそのまま淡々と答えた。
「私は争いを繰り返したくない。だが、王国には問題が山積みだ。それを解決するためには、私たちが手を組む必要がある。」
レイスは少しの間まどかを見つめた後、言った。冷徹な目には、少しの決意も感じられた。