夜が更け、俺とすまいるはいつものようにリビングで過ごしていた。
落ち着いた空気が流れる中、すまいるはスマホをいじりながら、何気なくソファに寄りかかっている。
俺は髪が少し邪魔だと感じ、そろそろ縛ろうかなと思い立ち上がる。
「ねぇ、ゴム取ってくれない?」
ソファの反対側にあるバッグを指さしながら、軽くお願いする。
「ん、いいよ」
彼は相変わらずの無表情。
少し眠そうな目をしながらも、淡々とした動きでバッグを探し始めた。
何気ない日常の一コ…のはずだったが、ふと彼が戻ってくると、手にはコンドームが握られていた。
「ん」
無言でそれを手渡してくるすまいる。
いつものように飄々としていて、表情ひとつ変えない。俺は一瞬、彼の差し出す物を見つめ、次の瞬間、思わず声を上げてしまった。
「えっ、ちょっ、すまいる?それじゃないってば!」
「…え?」
彼は淡々と首をかしげ、俺の方を見る。
そこでようやく、何を渡したのかに気づいたらしい。眉を少し動かしながらも、表情は特に変わらない。
「俺、髪ゴム、って言ったの。そっちのゴムじゃないよ」
必死に笑いをこらえながら説明するが、すまいるは特に動揺する様子もなく、ふーんと軽く息を吐いた。
「そっか、ま、どっちもゴムだしな」
飄々とした声で返すその態度に、さらに笑いがこみ上げる。
何でそんなに平然としていられるのか、さすがすまいるというか…
「いやいや、普通間違えないでしょ!何考えてたの!」
笑いながら突っ込むと、彼は肩を軽くすくめてから、少しだけ口元を緩めた。
「なかむが『ゴム』って言うから、そっちかなと思った。ま、すぐには使わないけど、いずれ必要になるかもなって思って」
そう言って、どこか悪戯っぽく笑うすまいる。
まるで冗談半分で言っているようで、そんな親々とした態度がますます俺を笑わせる。
「俺は髪ゴムだけで十分だって!」
俺はお腹を抱えて笑いながら、今度こそ正しい髪ゴムを受け取り、髪をまとめる。
彼はその様子をちらりと見ながら、少しだけニヤリと笑っているのを感じた。
「…まあ、後で役に立つかもね。」
ふとぼそっとつぶやいたその一言に、俺はまた笑ってしまうのだった。
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