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ふにゃふにゃ霊音くんがみたい
そんな時は自分で書くしかないのだ!!!!
銘→『』
その他→「」
目が覚めて時計を確認すると、時刻は午前8時
いつものように外からの明るさなんてものは分からないこの部屋で朝を迎える
隣にいない霊音の代わりにリビングには律儀に用意された朝食が置いてあった
今日は卵サンドウィッチらしい
ちまちまと朝食を口にしていると玄関の方からガチャッと扉が開く音が聞こえてきた
霊音が忘れ物を取りに来たのかと思い、サンドウィッチを片手に玄関へ向かうと、霊音ではなく吸傘がいた
しかも、なぜか後ろ姿で
何してんだと思いつつ行動を見守っていると、腰を低くして何かを引きずっているように歩いている
『…何してんだ?』
吸傘「お、丁度いいところに」
俺の声に気づいた吸傘がこちらを振り向くと、引きずっていた物の正体がわかった
霊音だ
だらんと力が抜けて引きずられている霊音だ
吸傘「此奴な、熱がある状態で仕事に来ておったのじゃ。で、ぶっ倒れたから連れてきた」
『何でここなんだよ。医務室とかあるだろ』
吸傘「1番近かったし、あと此奴を長時間運べるほど儂に力は無い」
『あっそ』
ずりずりと重たいものを運ぶ音を鳴らしつつ、吸傘が霊音を玄関に運び込む
こんなにも床に引きずられているのに何も反応しないという事は完全に眠っているようだ
いや、眠っていてもこれは起きる気がするが
吸傘「てことで後は頼んだ!儂、まだ仕事残っておるのじゃ」
『いや、ここに置いてかれても困る』
吸傘「儂も体調不良の此奴は要らん」
そう言うと吸傘は駆け足で部屋を出て行った
閉まる扉を見届けながらとりあえず手に持っていたサンドウィッチを口の中に押し込む
パンを咀嚼して、霊音の反応を確認する
突いても揺すっても起きない
額に手を当てると、本当に風邪のようで手が熱くなる
と言うかこいつって幽霊なのに風邪引くのか?
『ここで寝られても邪魔だしな…』
とりあえず、ベットに運ぼう
流石に床で寝てほしく無い
腕を持ち上げ肩組みの状態で霊音を運ぶ
こいつの方が身長が少しデカいからか足を引きずる形にはなったが、顔面と体をモロに引きずっていた吸傘よりはマシだと思うので気にしない
「ん……ぅ」
もうすぐベットに辿り着く、というところで耳元から声が聞こえてきた
どうやら霊音が目を覚ましたらしい
「ん、すぃか…?僕まだ、しごとできる… 」
『その状態でできるわけねぇだろ。さっさと寝ろ』
「う〜、できるの…!」
いつものへらへらした様子とは打って変わって駄々を捏ねる子供のよう
いくらいつも雑に扱っていても、流石に熱がある状態で仕事に行かせるほど鬼じゃない
というかどれだけ仕事したいんだこいつは…
普段なら「仕事嫌だ〜!」とか言ってるくせに
『とりあえずお前は寝てろ。おかゆ作ってきてやっから』
「おかゆ…」
おかゆに反応したって事はとりあえず食欲はあるみたいだ
嫌がる霊音をベットに押し込んで、おかゆを作りにキッチンへ向かう
準備するついでに冷えピタやら何やらも探しておく
ちゃちゃっと作ったおかゆと冷えピタ、スポドリをお盆に乗せ、寝ている霊音の元へ行く
いつも料理は霊音に任せているが、おかゆを作れないほど料理下手じゃないからな
霊音の元へ辿り着くと、ぼんやりとした目でこちらを見ている
「めぃ、くん?」
『そうだよ』
「あえ、すいかは…?」
『あいつはとっくに帰ったぞ』
さっきも吸傘の名前を口にしていたが、どうやら俺を吸傘と見間違えていたらしい
『俺と吸傘を見間違えるとか本当にお前かよ?』
「ごめんねぇ。もしかして、すねちゃった…?」
『バーカ。こんなんで拗ねるか』
この減らず口は間違いなく霊音だ
体調不良でぶっ倒れててもこういうところは変わんないんだな
『おかゆ作ってきたけど食べれるか?無理ならスポドリあるが』
「たべれるぅ」
『あっそ。じゃあさっさと食ってくれ』
「…めいくん、たべさせてくれないの?」
『は?』
思わず冷めた目で見ると、何故だか嬉しそうにクスクスと笑っている
「だってさぁ、ぼくいま病人だよぉ?あまやかしてくれないのぉ?」
風邪のせいなのかいつもと違い、語尾が伸びた喋り方で甘えてくる霊音
正直、気持ち悪さを感じるがそれは口にしないでおこう
呆れのため息をひと息ついて、おかゆをひと匙掬う
『……あーん』
「んえ?」
スプーンを差し出すと、ニヤニヤしていた霊音の顔から感情が抜け落ちる
『なに?食わねえの?』
「え、あ、食べる!」
戻そうとした時、慌てて霊音が口を開けたのでそのまま口元に近づけておかゆを食べさせる
咀嚼している間、ずっとこっちを見ていたが何も言わないので次々におかゆを口の中へ運び込む
数分経って皿の中が空になった所で、おかゆを飲み込んだのかようやく口をひらいた
「え、なんで?」
話し方がいつもの霊音に戻っている
あの話し方はわざとやっていたらしい
『なんでって、お前が食べさせて欲しいって言ったんだろうが』
「いや、でも………あ、これ夢か?」
『夢だと思うなら勝手にそう思っとけ』
現実だと理解していない霊音の頭を軽く叩くと、一回瞬きをしてこちらをまじまじと見つめる
見つめた数秒後に今度は自分の頬を抓っている
「…いひゃい」
これが現実だと分かってからは瞬きを繰り返している
どうしても現実だと認められないらしい
そんな霊音をベットに寝かせ、毛布を顔まで被せる
『おら、病人はさっさと寝ろ』
「え、ちょ、」
毛布から出てこようとする霊音と攻防していると、毛布の中から声が聞こえてきた
「あーもう、分かったから!寝るから!」
『じゃあ寝ろよ』
「その代わり!その代わり、ちゅーして」
『……は?』
「ちゅーしてくれたらちゃんと寝るから!」
言い方が子供が親に甘えるような感じなのは気のせいだろうか
これをウン百年、時代を過ごしてきた男が言ってるとなると気持ち悪い事この上ないのだが
喉まで出かけた言葉を飲み込んで、顔までかかった毛布を剥ぐと、軽く額にキスを落とす
すぐに毛布を被せ、一発頭を叩いて部屋を出ようとした時、ベットから声が聞こえてきた
「ありがとね、めいくん」
視線をやると顔を真っ赤にしてこちらに微笑む霊音がいた
『…さっさと治せよ』
「うん」
扉を静かに閉め、自分の頬に手を当てる
顔が熱いのは霊音のせいだ
そう自分に無理な言い訳をして部屋から離れた