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登場人物
遠藤 詠 (エンドウ ウタ)
高校3年生
山田 未来(ヤマダ ミライ)
高校3年生
詠side~~~
私は遠藤詠。今は部活中だ。こう見えて、バスケ部の部長をやっている。
「詠!パス!」
あの子は山田未来。私の親友で、副部長をやっている。未来にパスすると、力強いドリブルでゴールに向かっていき、華麗なレイアップシュートを決める。やっぱり未来は上手い。
「あ゛ぁ〜つっかれた〜」
「おつかれ。さっきのシュート、めっちゃ良かった!!」
「当たり前でしょ、この未来様なんだから!!」
2人でクスクス笑う帰り道。私は、この時間が1番幸せ。
「じゃあ、また明日」
未来と別れた後、私は最近ハマっている曲を聞こうとイヤホンを取り出した。
未来side~~~
「ただいまー」
「おかえり」
玄関に倒れる。
「はぁ〜…」
「ちょっと未来、先お風呂入ってよ」
「う〜ん…」
這ってお風呂に向かう。
「ちょっと、服汚れるでしょ!」
そう言われ、渋々立って歩く。
シャワーを済ませ、湯船に浸かる。部活で疲れた体に染み渡る〜。
今日はなんだか、いつもより外が騒がしかった。
詠side~~~
今日も私は部活に来ていた。
未来にボールをもらおうと声を出す。
しかし、ボールを取り損ね、後ろにいた相手チームの子がボールを取ってしまう。そのまま、シュートを決めてしまった。
「山田、調子悪いんだったら交代しろー」とコーチが言う。
私が取り損ねました、ごめんなさい。
と言っても、未来は「すいません、大丈夫です」と言うだけ。よく考えてみると、未来は朝から元気がない。私が話しかけても、聞こえてないのか返事がない。体調でも悪いのかな?
未来side~~~
私は朝から調子が悪かった。お母さんに「顔真っ青」って言われるくらいには。でも、学校には行った。部活を休みたくなかったから。もう少しで大きな大会がある。私たちはその大会で絶対優勝しなければいけない。絶対に。
でも、部活の時間になっても体調は回復しなかった。おかげで、パスミスをしてコーチに怒られた。あんなことがあったから仕方ない、なんて言ってられない。
詠side~~~
頭に鳴り響く救急車とパトカーのサイレンの音。何があったの?ねぇ、、。怖い。痛い。寒い。誰か、助けてよ。
「みら、ぃ…」
目が覚めると、自分の部屋だった。なぁんだ、夢だったんだ。それにしても、生々しくて、怖い夢だったな。
うちは母子家庭で、お母さんは朝早くから働いているから、もうとっくに家を出ている。寝坊したのか、珍しく朝ごはんは置いていなかったので、冷蔵庫にあったサンドイッチを出して食べる。大好物のサンドイッチは、いつもより味気なかった。
部活終了後の帰り道。やっぱり未来は元気がない。何となく話しかけにくくなってしまって、 無言で歩いていく。こんなことは初めてだ。
数分後、交差点に着いた。いつも未来と別れる場所。
急に、未来がしゃがみ込んだ。
どうしたの?お腹でも痛い?
と聞いても、反応がない。
「詠…」
私?
「詠…なんで…なんでッッ」
「約束したのにッ…」
未来は泣き出してしまった。私、なにかしただろうか?考えても、心当たりがない。未来とした約束…
あっ。
───────絶対、優勝しようね!みんな一緒に!絶対ね!約束だよ!───────
「詠ッ…なんで、死んじゃったのよぉっ!!!!!!」
え、、、、?
頭の中にたくさんのクエスチョンマークが浮かぶ。私が死んだ?どういうこと?
「みんなで大会優勝するって約束したじゃん!!」
「うたの、うそつき……」
未来、私はここにいるよ?どうしてそんなこと言うの?未来?ねぇ……
あの景色がフラッシュバックした。
怖い。痛い。寒い。誰か、助けてよ。
まさか、夢じゃなかった?そんなわけ……
考えてみると、みんな私が話しかけても応えてくれない。未来の元気がなかったのもそのせい…?
!?
身体が透けている。自覚してしまったからだろうか、私の身体は半透明になっていた。
もう長くない。そう悟った。
透けた手で、未来に触る。まるで空気かのように、触れることはできなかった。
それでも、今の私の最大限の力を振り絞って、未来に語りかける。
死んでごめんね。私もみんなと優勝したかった。だから、私の代わりに、絶対、勝って。空から、応援してるから!!
その後のことは、もう私には分からない。
未来side~~~
詠が亡くなってから、一ヶ月後。
私たちは、大会で優勝した。
詠が亡くなったことをみんなに話してプレーに影響があったら嫌なので、大会後改めて話した。みんな驚きと悲しみで、ぐちゃぐちゃだったよ。
私は知ってる。あの日、私が限界でしゃがみ込んでしまった時、あんたは私を励ましてくれた。そうでしょう?私には分かるんだから。
あぁ、もうやだなぁ。
あんたのことなんか忘れて、新しい友達作って、最後のJKライフ楽しんでやるーって言ったくせに、ここに立つと涙が溢れてくる。
もう、忘れてなんかやらないから。
そう半透明な君へ告げて、遠藤家之墓、と彫られた墓石に花を添え、線香を立て、手を合わせた。