甲斐田side
母「さっさと出て行きなさい!」
そう言われ、強制的に家を追い出された。
薄々勘づいていた。甲斐田家の跡取りとして何としても男の子を産まなければならなかったのに女の子が産まれ、力も体も人並みより少し弱かった。
あの家では毎日愛情と言われながら殴る蹴る無視のオンパレード。一つ問題を間違えれば問答無用でご飯抜きだった。
だから追い出してくれて良かった。
ポツポツ
あぁ、雨が降り始めたな。何処か雨宿りできる場所って無いかな。
「近くの神社なら、、、雨宿りできるかな?」
そう呟き、神社へ向かった。
今までは5分くらいで着いていたのが10分にも感じて、やっとのことで神社に辿り着いた頃にはもう体力が残っていなかった。
神社の階段の近くに座り込むと同時に眠気が襲ってきた。
(ちょっとくらいなら、いいよね?)
そう思い、目を閉じようとすると、首に鱗が生えたお兄さんが僕と視線を合わせる位置まで座った。
?「大丈夫?」
?「それ、媚び判定じゃないんすね」
?「ロリには優しくします、というか今はそんなことどうでもいいでしょ」
2人分の話し声が聞こえてきた。びっくりして目を開けると目の前で角が生えたお兄さんと鱗が首辺りにあるお兄さんが話し合っていた。
「えっと、、その、何を話してるんですか?」
戸惑いながら僕がそう聞くと、鱗の方の兄さんが慌ててこっちを向いた。
?「いや、何でもないよ。それより君はどうしたの?親御さんは何処に居るか分かる?」
「、、、」
その質問に何で答えるのが正解なのかもわからず、焦っていると
?「あー、じゃあ、親御さんが来るまでここで待つか」
角が生えたお兄さんがそう言ってきた。
?「にしても目、綺麗やな。俺でも見入ってしまう」
そう言って、僕の頭を〝撫でてくれた″
「、、、え?」
?「もしかして、撫でられた事が無い?」
「……はい、、、すみません。」
そう言うと少しだけ鱗の方の兄さんが目を開いたまま固まった。
「お兄さん、大丈夫?」
そうやって聞くとハッとして、そしてこっちを見て笑った。
?「うん、大丈夫だよ。、、もし良かったら僕等の家に来ない?」
そう言ってくれた。僕はあの家の子では無くなったし、何より2人が温かい。あの冷えていて怖い家には戻りたくない、、、
「うん。行きたい」
そう言うと、2人は笑顔を浮かべてくれた。
不思議とその笑顔はきつくなかった。
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