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大嫌いだった。自分の全てが反射してくる物の前で、0点を超えてマイナスの域に達している光景を見るのは。繰り返しても繰り返しても上手くならない。何時間何日何年やったとしても、同じ土俵から動かないんだろう。そんな想いで日々を消費して、今は夜の12時。どうしてもできなくて声を漏らして号泣しているのに、この地獄の空気の中で後ろのヨンボガは俺を見ていた。
ソファで寝そべっているのに、全然眠そうではない。できればやめてほしいけど、俺よりダンスが上手いヨンボガはたまにアドバイスをくれるから、恥を捨てれば上達する事に繋がることが多かった。
まぁ、恥ずかしいもんはどう足掻いたって恥ずかしいけど。
スピーカーから流れてくる音は、ゲシュタルト崩壊をおこてしまいそうな程に五月蝿く、同時に心地良い。
もう何時間こうしているかも忘れてしまった。
でもできないのだ。ずっとできない。俺である限りできない。どこができないんじゃなくて、もう根本から、俺という存在がダメだった。
やけくそで泣き声を上げて、繰り返し踊ろうとする。すると、爆音の中、気づけば何があたる触感があった。隣にいたヨンボグが俺の肩に手を置いて、ゆっくりと微笑む。
「ヒョンジナ、ダンスが上手くなる方法教えてあげようか」
ダンスっていうか、何でも。
ヨンボグは付け加えて、俺をじっと見つめていた。
「…うん…..」
俺は頷いた。藻がいて泣いた人の酷い顔をしているだろうけど、ちゃんと見つめ返して答えを待つ。
「それはね」
ヨンボガは世界一の笑顔の如く天使の様に笑いながら、ステップを踏むみたいに一歩離れて手を首に持っていく。
「絶望することだよ」
その手を思い切り引くと、ヨンボガはたくさんの血飛沫をあげてその場に倒れた。
一瞬、何かの演出だと思った。自分の汗が数滴垂れていただけのスタジオの床が、赤く染まっていく。その後、かけつけた警察やら関係者でじきにスタジオは賑わい始めたが、その時のことはあまり覚えていない。
俺の記憶は、横たわったヨンボガの手から顕になったナイフを見つめて、何もせずただそこへ突っ立っている所で終わっていた。
ただ一つわかるのは、俺がヨンボガを好きだと言う事を知られていた事。