「⋯もう、えっちしたない」
すんすんと大きな体に似合わず、しくしく無いていた。
「えっ、ごめんごめんごめん!そんなに嫌やった?!」
流石に慌てて、まさやは今度こそ枕を奪い取った。
こじまは、恨めしそうに充血した目で宙を見つめている。もう目も合わせたく無いらしい。
これは、本格的に怒らせてしまったかもしれない。
「う⋯ごめんな。こじまくんに気持ち良くなって欲しかってんけど⋯。独りよがりやったなぁ⋯」
まさやはしゅんと項垂れて、こじまの肩をポンポンと撫でた。
こんなのは、本意では無い。
もしかして、いつも物足りなかったのではないかと思っての行動だったが、こんな結果になるとは。
「⋯⋯⋯気持ちは⋯めっちゃ良かった」
こじまはポツリと呟いた。
「⋯⋯でも、声⋯⋯出てまうから⋯⋯もう、したない⋯」
涙声でそう訴える。
は?声?⋯声?が、出てまうから⋯?したない?
「え?そんなに声出すん嫌やったん?なんで?!」
思いもよらぬ返答に、戸惑いながらも、疑問をぶつけた。
「⋯おれの声、可愛いないもん」
可愛ないもん⋯?!
「低いし。おっきい声出したら、気持ち悪いやろ⋯」
「は⋯?!おおおーーーーい!!!!」
思わず大声を出してしまった。
すれ違いも良いとこだ。
いや、これはおれも悪いとこあるかもしれんけど!
でもこれは、はっきり言っておかないと気が済まない。
「あんなぁ!!そんなん声なんか、おっきければおっきい程ええに決まってるやんか!おれ相手に感じてくれてるって事やろ?!そんなんなんぼでも聞きたいに決まってるやろ!声低いとかそんな話やないねん!!!」
「えっ、声でか⋯」
いきなりの事に、こじまは少々引き気味だ。
しかしまさやの演説は止まらない。
「さっきのかて、なんやの!こじまくん知らんやろーけど、めっちゃ色っぽかってんで!はじめてしっかり聞いて、めちゃくちゃ興奮したっちゅーねん!」
「お、おお⋯」
パチクリと見開いた瞳からは、もう涙は消えていた。
「普段あんま声出さへんのも、物足りへんかったんかなー思て、今日張り切ったらこれや!!おれはいつだって、こじまくんの声ききたいし、顔見たいし、可愛いと思ってんねんからな!!見くびらんとってくれへん?!」
一気に捲し立て、少々息切れしてしまった。
依然、びっくり顔のこじまだったが、まさやの言葉を少しづつ理解し、のみこんだようだ。
「⋯⋯こじまくん、わかってくれた?」
今度は落ち着いた声で、まさやが言った。
こじまは、こくんと頷いて
「⋯わかった。知らんかった」
と、目を見て言った。
「おれも、こじまくんがそんな風に思ってたん、知らんかった。」
お互い、頷き合って、相手の事を反芻する。
「あの、⋯ほんまは」
「うん」
「いっぱいすんのも、さっきみたいにすんのも⋯好きやから⋯」
恥ずかしそうに、口に手をあてて、しかししっかりとそう言った。
「あっ、あッ、あぁッ!」
こじまは、力強く揺さぶられる体を耐えながら、まさやを受け止めていた。
「⋯んっ、ふッ⋯、あっ」
お腹の中は、なんとも言えないゾクゾクとした感覚が駆け巡る。
まさやの熱が、こじまの中を打ち付ける度、幸福感と快感がないまぜになった。
「あっ、うぅ⋯ッ、 まさ、やっ」
こじまが両腕をのばし、まさやを抱き締めようと引き寄せた。
「⋯大丈夫?」
先程の事があるので、まさやも少し神経質になってしまっていた。
しかし、そんな心配は要らなかったようだ。
「うぅ、まさやぁ⋯気持ち良すぎて⋯もう、イきそう⋯」
ぎゅっ、と恥ずかしそうに肩に顔を埋めた。
か、かっっわい⋯!!
「何回でもいってええから!な?」
「ん⋯」
1度、あわせるだけのキスをして、再び力強く何度も突いた。
こじまは弱い場所を、何度も擦られ、背中を仰け反らせながら震えた。
「あっ、あっぁ!まさや!ゔぅ⋯ぃく!いく!」
そう言うや否や、まさやも快感に耐えられず、強く抱き締めた。
あの後も、貪るように体をあわせ、何度もお互いの熱を吐き出した。
すっかり疲れきってしまい、こじまは泥のように寝入っている。
一方まさやは、体は疲れているが、多幸感という興奮から、眠れないでいた。
あんなに性に乱れたこじまを、沢山見たのだ。心の中の反芻が止まらない。
それに、またひとつ、こじまが心を許してくれた事が嬉しくて仕方無かった。
きっと、こじまにとってもさらけ出すのは、勇気がいった事だろう。
「思いっきり語って良かった⋯」
しみじみと、己に親指を立てた。
「⋯くま凄いなあ⋯⋯」
アニメだと言っていたが、こじまの事だ。仕事の事や後輩の事、見えない所で色々な事を考えているんだろう。真面目ゆえに、抱え込む事も多そうだ。
⋯まあ、夜更かしに関しては勿論アニメも見ているだろうが。
「⋯起きたらアニメの話聞いたるか」
まさやは、そっとこじまの胸元に顔を寄せて目を閉じた。
《おわり》
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