愛=毒
⚠️凛潔、創作、学園パロ、びーえる⚠️
記憶とは時に人生の妨げになる。
これは最愛の人を無くした少年と、素直に純粋な気持ちで愛そうと尽くす2人の少年の物語。
貴方はどちらの気持ちに同情しますか。
1.全く同じ空
「いってきまーす!!」
毎朝恒例の元気で挨拶を残すとゆっくりと家を出た。
すっかり着慣れた制服。
余りの暑さに着崩してしまうこの頃。
ワイシャツのボタンをいくつか空けると中に少しだけ開放感が生まれた気がした。
「ん〜っ!!」
誰もいないことを確認して空に向かって大きく毛伸びをする。
この朝の雰囲気が好きだ。
物音もなく、人もいないこの時間帯と場所。
…のはずだったんだけどな。
「おはよう…っえっと…」
前から歩いてきていた男子生徒に気づかなかったことを後悔する。
目線を合わせると思わず目を奪われた。
「…ごめんなさい、学校の場所が分からなくて。同じ学校っすよね?」
はっとしてよく見てみると確かに制服の感じは似ている。鞄も同じだし…
「1年生…?もう入学して1ヶ月経つよ?」
「…まぁ、私情で。」
彼の複雑な含みを持った表情に後悔した。
聞いてはダメだったのだと。
「取り敢えず行こっか…!えっと、学校に行くのは初めて、?」
「入学式以来です。なのでクラスの場所は分かります。」
淡々と話す彼。
長いまつ毛に綺麗な黒髪。
スラッとした体型に身長。俺とかなり差がある。
たしかにこんなのが居たら噂にもなるよな。
「そうだ!タメ口で話してるけど1年で合ってる?俺、2年なんだけど。」
「1年です。先に言うべきでしたね、糸師。糸師凛です。」
「凛くん!俺は潔世一。よろしく、凛くん。」
彼は少し躊躇いながらも微笑んで頷いてくれた。
「ここからは行けます。クラス分かりますし。ありがとうございました。助かりました。」
律儀に深く頭を下げて背中を向けて歩き出す。
その後ろ姿に軽く手を振りながら見つめていた。
どこかで彼を見た気がする。
他人の空似?
確証も記憶もないんじゃどうにもならない。
朝から人助けができたと温かい気持ちになっていたがすぐに後ろから背中を叩かれる。
「おっはよ〜!!さっきの子知り合い?」
「うん、凛くんって言うんだ。今日の朝…色々あって一緒に来たんだ。」
「へ〜、後輩にあんな奴いたっけ。今人数多いし分かんねぇ…。」
髪に黄色のインナーを入れた元気な方が蜂楽廻。入学式で会って今年も同じクラス。
2年で初めて仲良くなったのが赤髪の整った顔立ちのほう。千切豹馬だ。
「そーいえば、新入生とのリクリエーション。2人ペアだったよね?」
「来月だよな。潔、ワンチャンあるんじゃねーの?」
「いいよ、俺は。その日は丁度さ……」
俺の言葉に2人の雰囲気が変わった。
明らかに重たくなってしまう。
「ごめん、重くなって!笑
ほら、早く行こーぜ。靴履き替えねーと!」
「潔、無理してない…?」
蜂楽が上履きを手にしている俺の腕を握った。
「…うん、無理してない。無理してたら学校なんかこないよ。」
俺には今、大事な人がいる。
その人は同級生で同じクラス。今は病院で入院している。
週に1回、隣町の大学病院にお見舞いに行っているんだ。
守りたい。支えになってやりたい。
絶対に、救ってやりたい。
「蜂楽、千切。ほら、行こう。」
その為に俺はこんなにも明るく振舞っている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!