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Day5
「あっちぃ~~!!」
「今年の夏はきついねぇ」
涼しく過ごせた春はあっという間に過ぎていき、夏は山場を迎えようとしていた。
「こんな中部活とか普通に死ぬだろ…」
「葛葉は太陽大丈夫なの?」
「そんな…だいじょばなかったら今ここを歩けてないだろ…」
「確かに…w…あのさ…」
くだらない談笑をしてる中急に叶は暗い顔をして口を開いた
「ん?」
「葛葉って…その…」
叶は下を向きもごもごと喋る。
「吸血鬼じゃん…」
「そんな…今更なん…」
「大丈夫なのかな…って…」
俺の言葉をさえぎって話しかけてくる。今までそんなことなかった俺は驚いた。
「大丈夫って…なにが…」
「ほっほら!家族とか…その…」
「そんなことかよ、毎年行くようなもんじゃねぇし大丈夫だろ。」
「会いたい人..とか…その..」
「そんないねぇし。俺は今を満喫する!!」
「そっか…でも、もし僕に会いたくなったら言ってね。」
「僕は絶対行くから。信じててね。」
「奇跡は信じれば叶うから…」
「…奇跡…ねぇ…」
「うん…」
俺たちは海辺に向かって足を進めた…
...
「うわ~~もう真っ暗じゃん!こんな時間たってたとは思わなかったな…」
「ま、夏だから日の沈みが遅いしな。」
「どうする…って見て葛葉!月めっちゃ綺麗だよ!!」
「ん..?あぁ…満月か…」
「月の下の吸血鬼…いいねぇ…」
「はぁ?」
「ねぇ葛葉!空飛ぼうよ!」
「はぁ…?やだよ、魔力使うし…」
「血なら僕のあるからさ!!」
「いや…別に、大丈夫。」
「えぇ…ほんとに…?」
「ほら行くぞ…」
海の近くにある使われてないのに綺麗なカフェに来てゲームをしていた俺たちは外に出た。そして俺は、叶に手を差し伸べ空に飛び立った。
「うんっ!」
…
「やばっ!めっちゃ月が綺麗!!」
「暴れんなって…」
「いやガチで!綺麗!でかい!まんまる!!」
「……」
前を向けば、目の前に息を忘れるぐらい大きく輝いた月が写っていた。
「月って自ら光出してないんでしょ?なんかいいよね~そういうの。」
「はぁ…?」
「お子様葛葉には分からないよね~~」
「んなことねぇし、」
叶の言ってることに俺は理解できなかった。何が言いたいのか。叶の心の奥には何が隠れてるのか。叶は俺のこと全部お見通しなのに…
「そろそろ帰ろーぜ…」
叶に声をかける。
「うん、そうだね…」
と、少し寂しそうに答えた。
…
「あ~~なんか今日めっちゃ疲れたわ…」
「え?そんな魔力しょぼいの?」
「しょぼくねぇし!」
「あ、見て葛葉向日葵!」
「もう夏も本番になるのか…」
「そうだねぇ…今年受験生だよ僕ら…」
「え?叶大学目指すの?」
「うんん、分かんない。これからのことも、自分のことも全然分かんない。」
「…?」
俺の頭は疑問で埋め尽くされてる。それが顔に出てたのか叶は、
「ま、分かんないか…w」
なんて笑いながら言ってきた。
「分かろうとはしてる。」
「うんwありがとね。」
叶は嬉しそうな笑顔で答えた。それだけは確実に俺は叶の心が分かった気がした。
「てか、葛葉は一回魔界に帰りなさい。」
「えぇ…」
「いいから。」
「なんで…」
「…」
「わかったよ…」
何で叶がそこまで本気で言ってるのか俺には分からなかった。
…
「すごっ~~!!めっちゃかっこいいよ!!葛葉!!」
「…ぅぅ…」
「照れてるのも可愛いよ葛葉!!」
「だあああ!うるさいっ!!!」
「てか、魔界はそんな姿で行くんだね。かっこいい。」
「うるせ…てかこれがルールみたいなもんなんだよ。」
あの後叶は俺の家で泊まることになった。俺が帰ってる間。叶は俺の家にいるらしい。
「僕さ、家分かんないし、ちょうどいい」
なんてアホみたいなこと言って、なんて思ってたけど。ガチだったと知ったのはさっき。
「波の音効いて寝るのはいいよ~~」
なんて軽々しく言ったけど。あのカフェ冬は絶対寒いはずは…
「すげーよな、叶って…」
俺は小さな声で呟いた。
「何か言った葛葉――?」
「いいや、なんでも。じゃあ行ってくるわ。」
「うん。行ってらっしゃい。」
俺は魔界へと飛び立った。
…
「ッ…」
飛び立って数日。魔界についた俺の視界には、真っ白な百合が一面に咲いていた。
「なん…だ…これ…」
何か大切な。気がする。よく分からないけど。
「…」
叶のそばにいなきゃいけない…
理由は分からない…けど、、
・・・
気づいたときには…帰ってきた時には…
「遅かった…のか?」
叶はベットの上で息を切らしていた。
「あっ…くず…は?」
「かな、え?」
「なんだ…ろうね…僕…」
「叶っっ!!」
目から涙が零れ出てくる。
「…なんで…葛葉が泣くの…」
俺の姿を見た叶の目からは涙が出ていた。
「病院…っ」
「…だい…じょうぶ…」
俺は戸惑っていた。どうして叶が…
「っ…」
「魔界にさ…連れて行ってよ…葛葉の見た世界…僕も見てみたいなぁ…」
「どこにでもっ連れて行くからっっ!!叶っ!」
「んふ…ありがと…くずは…」
「叶っっ!!」
・・・
叶には持病があったらしい。記憶がなかった叶はそのことには気づけなかった。叶はありがとなんて言ったけど、何倍も俺はありがとうでは収まらないほど叶に助けられて来た。叶は百合の楽園で眠っている。あそこは昔に魔族と人間が暮らした場所の微かな残りらしい。あそこにたどり着けるのは、少しの者だけ。
「叶は導いてくれたんだな…」
俺は奇跡を信じます。あなたは奇跡を信じていますか?
「ありがとな、叶。またいつか会おうな…」
俺の手には一輪の百合の花が固く握られていた。
また、君の声が聴けるように…
これにて一応、小連載「また、君の声が聞こえる」を終了させていただきます。このセリフ、誰か分かんないというのがありましたら、コメントなどで教えていただけると幸いです。