ぐつぐつぐつ・・・
料理を煮込む音が響き渡るリビング。
スプーンを取り出し、味噌汁を少しだけ掬った。
「うん、美味しい」
俺の名前は、葵 優。
男で料理を作るって、おかしいと思う人もいるでしょ?
でも、俺は家事をするのが趣味。
仕事も家政婦で、最近は忙しい芸能人からの依頼も多く来る。
ピロン♪
「あ、また、急用のメールかな?」
知名度も上がってきて、最近は何かと依頼メールが届くのだ。
スマホの画面をタップし、lines(メールアプリ)へ入る。
すると、上司の高嶺さんから1件のメールが届いていた。
【葵君
来週から、芸能人・七星 蘭様のご予約が入りました。
七星様は今や芸能界No.1俳優だから、丁寧にお仕事
よろしくお願いしますネ。
期間 7月1日〜7月30日(午前7時〜午後6時)
場所 七星様のお家(住所は後程電話で)
給料 1日30000円(住み込み)
急でごめんネ、高嶺より】
「な、七星 蘭!?」
驚きで、その場に立ち尽くした。
七星 蘭は、圧倒的な演技力と優しい声色、その人間離れした容姿で、芸能界を圧倒する俳優であり声優さんだ。
それ以前に、俺、七星 蘭の大ファン!!
「あの、七星蘭の家に、住み込み家政婦・・・?」
この俺が?
嬉しさと緊張が混じって、変な気分だ。
カレンダーをチェックすると、6月28日だった。
午後からは、家政婦の用事が入っているから、今のうちに準備しておこう。
ボストンバッグに、事前用意してあった服、掃除道具、レシピ、その他諸々を詰めていく。
これまでも色んな芸能人さんから依頼はあったけれど・・・
七星 蘭は、架空の人物だと思っていたから・・・。
その日の夜は、七星 蘭に会う事を考えて、よく眠れなかった。
(≧▽≦)
ピピピピ・・・。
アラームの音が鳴り響く。
「んん・・・」
まだ、眠い。
七星 蘭。19歳。職業:俳優、声優、タレント。趣味:寝る、ダラダラする、女遊び。
こんなクズな俺でも、外面貼っとけば芸能界で有名になれる。easy life、ってやつだ。
「あ、ドラマのクランクアップあるじゃねぇか」
大急ぎで、そこら辺にあったパーカーとズボンを適当に着る。
そのタイミングで、電話が掛かってきた。
「・・・やっと繋がった、クソが。」
その声色はとても怒っている。
「あー、多分寝てたわ。」
気軽にそう答える。
**「**随分、余裕を持ってるなぁ。あと30分で現場来れるか、おい。」
「今家出たから、走ってけば間に合うだろ」
「そうか。超有名若手俳優七星蘭様が、東京の道路を走るのか。」
「うっせ。パーカーで顔隠してっからばれねーよ!」
コイツは俺の元同級生であり、現マネージャー・城野 剣。
眼鏡に高い上背、毎度眉間に皺を寄せている。
それが、本当にストレスなんだよな。
つか、間に合わねー!
「はぁっ、はぁっ・・・」
時計を見る。7分遅刻。
まだ良い方か、そう思いながら現場に入る。
「やあ、蘭君!」
「七星君!」
現場は、時間など気にもせず、俺を囲んだ。
「・・・これ、差し入れです」
俺がバッグからクッキーを取り出す。
すると、皆が俺にお返しの菓子をくれたのだ。
「ありがとうございます」
笑顔でそう言うだけで、周りは騙された。
正直、easyだ。
「・・・おい、蘭?」
「?」
後ろを見ると、鬼の形相を浮かべた、剣がいた。
「あ」
「あ、じゃねぇ・・・コラ」
「お前なぁ、いつまでたってもそのつもりか?」
「・・・まーな」
「最近、益々痩せてるだろ。ちゃんと食ってるか?」
「めんどくせーから食ってない」
「じゃあ、そのしわしわの服は?」
「洗ってねぇ。別に臭くねぇだろ?」
そう言うと、剣が頭を抑えて溜息をついた。
「・・・それじゃ、体壊すだろ。」
「まだ壊してねぇから良いだろ」
「・・・体調には、気を使え!!」
「はぁ?」
「昨日も遅くまでバラエティやってただろ?顔色悪いぞ」
・・・図星。
「昔っから芸能界ばっかだったから何もできねーんだよ、仕方ねぇだろ」
親は放任主義だったし、幼稚園からずっとバラエティで忙しかったし。
「・・・そうか。あ、いい考えがある。」
「は?」
(≧▽≦)
コメント
2件
登場人物✨️表紙の真ん中→七星蘭 右→葵優 左→城野剣
読んでくれてありがとうございます💖✨️ 好評だったら続編だします☺