罵声、怒号。目の前にある壁から逃げるように後ろを向く。
足を前に前に
息を吸って吐いて
手を後ろに前に
走り出す。
嗚呼、なんて懐かしい。
彼奴は酒に酔ってるだけ。
昔の怒りがちょっとヒートアップしただけ。
酒で昔の記憶に酔ってるだけ。
もう、いないのに。嗚呼、なんて愚か。
さらさら、ひゅー、ひゅー、鼓膜を優しく撫でる音。
くるしい。
息を吐いても吐いても、くるしい。
周りの空気が綺麗すぎて、汚れている俺には吸えない。
もういっそ、死んでしまいたい。
それは駄目、王がいるから。王が死ぬまでは、いきていなきゃ。
やっぱり吸わないといけない。
でも、俺が死んでも王は悲しまない。
野良猫が、にゃあと鳴く。
何の考えもなしに、その猫を撃ってみた。
にゃあ、と鳴き真似をして__。
命の重さって、よく分からない。
あの猫だって、銃で一発撃てばすぐに亡く。
じゃあ、猫は軽い命なのか。
沢山の人を殺してきた。
じゃあ彼奴らは、軽い命だったのだろうか。
場地だって、ナイフで、ひとつ、ふたつ、刺したら死んでしまった。
真一郎君だって、嗚呼、なんだっけ。何かで殴ったらすぐに死んでしまったって。
__でも、2人の命は重かった。
死後、周りに与える影響が命の大きさとかを表しているのだとしたら、俺の命は軽くて小さいのだろう。
泣いてくれる人なんているのだろうか。
「……いなさそう」
その架空は心地良かった。
数え切れないほどの殺人を犯した俺相手に泣いてくれる人なんていらない。俺は価値がないから。
空き缶ばかりの汚い路地裏で、やっと呼吸ができるような気がした。
吸って、吐いた。その空気は体を冷やした。
口が寂しい。けど、生憎薬は持っていない。
有名な曲で、誰かがこう言っていた。
「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、みんなみんな生きているんだ友達なんだー……」
昆虫は人間よりも小さい。そして何故か殺す事に抵抗は無い。
軽くて小さくて、潰したって罪悪感のない命。
まるで俺の様。
「俺の事も、…誰か潰してくれないかな」
そうならばどれほど幸福な事か。
自分で死ぬ事はきっと許されない。王への裏切りに値するから。
何のために生きているのだろうか。王って言うのもただの生きる言い訳。
こうして何の意味も無い人生を、可笑しく歩いていく。
「あした幸せなあれ、…」
そう言って左足の靴を宙に投げた。
__靴は横向きに着地した。
コメント
21件
Loveyoustory 潰してくれないか?なんて言ったな?私の愛で潰してやるσ(♡∞♡)💕
好きです。 あと春ちゃん○んで悲しまない人いないよ!?居なかったら自分が泣く。 逆さじゃないから少しは幸せなんだろう。 春ちゃんは重い命だよ!
はああああすきです😻😻🫶🏻