急に投稿します(笑)
時空おかしいけど気にしないでね、
冴潔メインです、短編です。
練習後、潔は一人、ボールを磨いていた。今日の冴のパスは、いつもより優しかった気がする。
「まだ、そんなところにいるのか」
声がして顔を上げると、そこに冴が立っていた。いつもは冷たい瞳が、今日は少しだけ和らいで見える。
「ああ、もうすぐ上がるよ」
冴はゆっくりと近づき、潔の隣に腰を下ろした。珍しい行動に、潔は少し戸惑う。
「今日の調子はどうだった」
「ああ、おかげでいい練習ができた」
潔はそう答えると、冴を見た。その横顔は、相変わらず美しい。
冴はふと、潔の手に触れた。その指は、少し冷たい。
「無理をするなよ」
潔はドキッとした。冴がこんなにも優しい言葉をかけるなんて。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
二人の間に、沈黙が流れる。しかし、それは気まずいものではなく、どこか温かいものだった。
「潔」
冴が低い声で呼んだ。
「…なに?」
冴は少し躊躇うように目を伏せた。
「お前を見ていると、心が安らぐ」
潔は顔が赤くなるのを感じた。まさか、冴からそんな言葉を聞くなんて。
「俺も…冴といると、落ち着くよ」
冴は顔を上げ、優しく微笑んだ。
「そうか」
その笑顔は、まるで雪解けのようだと潔は思った。
「少し、疲れたな」冴はそう言うと、潔の肩に頭を預けてきた。
潔は驚きで息を呑んだ。冴の髪が、自分の肩に触れている。
「…眠いのか?」
「少しだけ…」
冴の声は、微かに眠気を帯びている。
潔はそっと目を閉じた。冴の温もりが、じんわりと心に広がっていく。この時間が、いつまでも続けばいいのにと願った。
しばらくして、冴が小さく寝息を立て始めた。潔は、その規則的な呼吸を感じながら、そっと自分の手を冴の髪に添えた。さらさらとした感触が心地いい。普段はピリピリとした緊張感が漂う二人なのに、今は穏やかな空気に包まれている。
(こんな風に、隣にいられるなんて…)
潔は、冴の寝顔をそっと見下ろした。その顔には、普段の鋭さはなく、どこか幼いようなあどけなさが残っている。世界が認める天才も、こうして眠るんだと思うと、なんだか不思議な気持ちになった。
ふと、冴の睫毛が微かに震えた。潔は慌てて目を逸らす。
「…ん」
冴がゆっくりと顔を上げた。まだ少し眠そうなその瞳が、潔を捉える。
「…起こしたか?」
「ううん、大丈夫だよ」
冴は少しの間、ぼんやりとした表情をしていたが、やがて状況を理解したのか、少し照れたように顔を上げた。
「…すまない」
「別に、気にしないで」潔はそう言うと、少しだけ笑った
冴は立ち上がると、少し伸びをした。
「そろそろ行くか」
「うん」
二人は並んで更衣室を出た外はもうすっかり暗くなっている。
「今日は、ありがとうな」冴はふと足を止め、潔に向き直った。その瞳には、先ほどの優しさがまだ残っている。
「こちらこそ、ありがとう」
冴は小さく頷くと、ふいに潔の頬に手を伸ばし、そっと撫でた。その予想外な行動に、潔はまたドキッとする。
「また、近いうちに」
そう言って、冴は背を向けて歩き出した。潔は、しばらくその背中を見送っていた。頬に残る冴の感触が、いつまでも消えない。
(あれは…一体どういう意味だったんだろう…)
胸の奥が、 暖かい光で満たされているような気がした。冴の優しさに触れ、潔の心には、これまでとは違う感情が芽生え始めていた。
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