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ひ、ひばが…ひばが可愛すぎます!! 泣いてる感じを出すのもめっちゃ上手で私も泣きそうになっちゃいました… これからも応援してます!!
knhbです!!
ご本人様には関係ありません
nmmn作品です
hbr『』
knt「」
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『別れよ。』
「…は」
12月25日
クリスマス
イルミネーションがまるで僕達を照らすように
まぶしく光っていた。
幸せそうに通り過ぎるカップル達の姿も声も聞こえない。
僕の目の前に映るのは俯いてそう言葉を溢した雲雀だけ
雲雀の乾いた口からまた、言葉が発せられた
“ごめん”
「……雲雀は、僕と別れたいの、」
と、まあ自分でも意味が分からない言葉が口から滑り落ちた。
心臓が嫌なほどバクンバクンと鳴る
雲雀に聞こえそうなほど鳴っている
否定して欲しい、本当は気の迷いだったってて言ってくれないかな
『…うん、もう、無理。』
別れよう。奏斗
決定的に別れが切り出された
雲雀の声が僕の耳の中に滑り込んで
嫌なほどリプレイしている
_______別れる
別れる?雲雀と?
「僕は、嫌だ」
『ごめん』
なんだよ、僕の意見は必要ないのかよ
『…じゃあな。奏斗』
雲雀は僕の顔も見ず、そんな言葉だけを残して
僕の前から消えた
本当は、最高のクリスマスになる予定だった。
この後、オシャレなお店に入って
雲雀と一緒に夜景を見ながらご飯を食べて
帰り道にお揃いのペンダントを渡して
それから、
それから_____________________
つぅ、と生暖かいものが僕の頬を滑り落ちるのを感じた
なんだ、
「…俺、泣いてるんだ、」
すっかり肌寒くなった冬の季節
サンタさんなんてものは存在しなく
もうすぐ、シンデレラの魔法が解けようとしている。
幸せそうに笑う誰かの声も
遠くで聞こえる楽しそうな音楽も
全てが鬱陶しかった。
_____________________
あれから1週間
雲雀には、会っていない
会っていないというか一方的に避けられている。
LINEもブロックされているし
電話も出てもらえない。
このまま自然消滅か、
「…何が、悪かったんだ」
ギシッ…と椅子が軋む音を立てる。
今更考えても遅い。
もう何もかも手遅れだ。
僕を好きだと言ってくれていた雲雀はもういない
夜になると甘えるように擦り寄ってくる体温も
家に帰ると微かに匂う夕食の香りも『おかえり!』といって笑う彼の姿も
この部屋には一ミリたりとも残っていなかった。
_______ピコンッ
携帯の通知が鳴る
雲雀が配信を始めたそうだ。
Liveの文字が表示されていた
ポチッとサムネを押す
『”わっ!びっくりした?”』
お決まりの台詞から、雲雀はどんどんとゲームの説明をし始める
いつもの笑い声が
虚しく部屋に響いた。
結局、雲雀は何も変わらない
悲しむことも後悔することもなく
いつも通り過ごしている
僕が後悔してる間にも雲雀はどんどんと離れていく
僕のことを勝手に過去にして
どんどんと進んでいくのだ
僕だけを置いて。
「…馬鹿みたい…」
じわりと視界が歪む
ダッセー、僕
こんなんだから振られんのかな
『”…「クリスマスに、彼女から振られました。慰めてください。30代おじさんです。」…え、マジ!?大丈夫!?”』
なにが大丈夫だ。
『”えー、そっか…いい人見つかるよ!きっと!!”』
なにがいい人見つかるだ。
『”いーなー、俺も恋人欲しいなー、”』
なにが恋人欲しいだ。
ふざけんなよ。
『”あ、そうそう!このステージさ______ブチッ_“』
乱暴に電源を切り
ベットに顔を埋めた
「…くっそ、…っ」
別れたくせに未練タラタラな僕も
僕と別れたいくせに平気な雲雀も
全部が全部イラついた
雲雀なんて、好きにならなきゃ良かった。
会わなければよかった
_____________________
「…ん”、…あれ」
顔を上げる
あのまま寝落ちしてしまったみたいだ
携帯を開き時刻を確認する
3:00
なかなか嫌な時間に目が覚めたものだ
雲雀も枠を閉じたようだ
Liveという文字はもう表示されていなかった
今頃、寝ているのだろう
_______ピコン
また、通知が鳴った。
今度はなんだ、
「…え、」
表示されている
誰かの名前を凝視する
いや、そんなはずないだろ。
_______雲雀、から、連絡が来るわけ
プルルルル
「っうわ、」
あまりの衝撃で携帯を落としてしまった。
すーはー、と深呼吸をし
今もまだ、コールが鳴っている携帯を持つ
画面には
“雲雀”
と、表示されていた。
どいういう、風の吹き回しだ?
ここ1週間
連絡ひとつも寄越さなかったくせに、
今更なんなんだ。
そう思ってるくせに
僕の心臓は”嬉しい”と言うように跳ねていた
期待するな。
どうせ、荷物を取りにくるとか
そんなこと。
今もまだ収まらない鼓動を抑えながら
応答ボタンを押した。
______________
「もしもし。なに。」
動揺しきっている頭の中とは裏腹に
自分の声はさっぱりと冷え切っていた。
『”……”』
「?」
応答は聞こえない
電波が悪いのだろうか
「…雲雀、?」
『”……”』
それに反応が返ってくることはなかった。
なんなんだ、嫌がらせか?
一向に喋る気配が無い
「……あの、もう切っていい?」
僅かながら期待をしてしまった自分が急に馬鹿らしくなり
はぁ、とため息をついて電話を切ろうとした。
『”…ぅッ、…”』
携帯越しから
泣いてるような声が
聞こえた
「…え、…ひばり?」
『”ぁ、……ぃ、”』
ボソボソと声が聞こえる
なにを言っているか、わからない
なに?と聞き返そうとした瞬間
また声がした
『”…あ、いたぃ…”』
______________
一瞬、時が止まった気がした。
僕は都合のいい夢を見ているのだろうか
雲雀が、こんなこと言うはずない。
言うはずないのに僕の心臓はさっきと比べ物にならないほど脈打っていた
『”…い、えに…ッ、……いる、から…ッ、”』
携帯越しの彼の声は弱々しくて
触れたら壊れそうなそんな雰囲気が漂っていた。
行かない。
そんな選択肢など僕の頭に存在していなかった
「今から行くから。待ってて」
そう一言。
今もまだ震えている手で電話を切った
_____________________
街を必死に駆け抜け
彼の家の前まで走る
泣いてる理由とか
なんで今更とか
聞きたいことも言いたいことも山ほどある
でも、僕の頭の中は雲雀に会うことしか考えられなかった。
______________
ピンポーン
控えめにチャイムを鳴らす
ゆっくりと息を整え
乱れた髪を直す
_______ガチャ
乱暴に開いた扉の先には
会いたいと何回も願っていた
彼がいた。
髪はボサボサで、
目は赤く腫れていた
今もまだボロボロと涙を流している
どこから聞くべきなのか、
僕の頭はまだそんなに冷静になれていなかった。
『…ッ、かな、と…ッ、ごめ、…ごめん、なさい…ッ』
僕の姿を捉えた瞬間
口を開いたと思えば”ごめん”
と言葉を紡ぐ雲雀
あの日の後悔と重なり
居た堪れない気持ちになるのを抑え
雲雀の家の中に入る。
_______ガチャン
扉が閉まる音を聞きながら
雲雀に目を向けた
僕と目が合った瞬間
怯えたように肩を震わせ
視線を逸らす
『ごめん、…本当はもう、会わないって、…きめてた、のに、…』
雲雀はたどたどしく言葉を紡ぐ
『…俺と、過ごさない方が、そのほうが…かな、とも…し、あわせだと、おもって…』
「…は?」
口を開いたと思えばこれ。
なんで雲雀が俺の幸せ勝手に決めつけんの
拳に力が入る
『…ッ、ごめ…、…かなとはモテるからさ、おれじゃ…だめだなぁって…、なったって、いうか…』
「…なんで?」
ダメなわけないだろ。
ダメだったら付き合ってない。
なんで雲雀は勝手に決めるんだよ。
『…、いつか、かなとが、だれか、と…むす、ばれるなら、…俺、からおわらせた、…方が、』
『きずつかないですむかもって、…おもった、…』
だから…俺から別れを切り出した、
そう雲雀は言った。
心底理解できない
振るなんてあり得ない。
雲雀以外の人を好きになるなんて有り得ないのに
僕がなにも言えないでいると雲雀はまた、言葉を続けた。
『会えなくなっても、平気だって…ッ、おもってたの、に…、』
その言葉を最後に
雲雀は我慢できなくなった涙をボロボロと零し始めた。
『ぅッ…あい、たかった、ッ…ご、め…じ、ぶん勝手で、ッ、でッ、も会いたかった…ッ、…っ』
乱暴に目元を擦りながらそう言葉を続ける雲雀を見つめる
なんて言えば分からなくて
ただただ、泣きそうで。
ギュッと口を結ぶ
今、口を開いたらきっと
泣いてしまう。
僕だって会いたかった。
この1週間生きた心地がしなかった
ただただずっと、雲雀に会いたかった
『……いま、さら…遅いよ、な。…ごめん、…ごめ_______』
「もういい。」
『え、』
「もういいよ。雲雀」
もう大丈夫だから泣かないで。
そんな意味を込め、雲雀を抱きしめた。
「…僕も、会いたかったよ。雲雀、…
また、またさ、…僕と付き合って、くれますか」
そう雲雀に言った瞬間
雲雀の顔が歪む
わんわんと大声を出して泣く彼を
またギュッと抱きしめた。
雲雀、やっぱりお前を好きになれて、良かったよ。