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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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東京・渋谷区

毎年この季節になるとイルミネーションをよく目にする。何色にも綺麗に光りその前を行き交う若者の男女や家族連れで見に来たりと色々な人達が夜に1層とこの街に集まる。

「もうクリスマスだね」

「サンタさん今年も来るかな!」

私の隣で飛び跳ねながら歩いている咲希は目を輝かせながらイルミネーションを見ていた。可愛らしい暖色のマフラーを首元に巻いているはずなのに耳も鼻もトナカイさんみたく赤かった。

「何を頼むの?」

咲希の隣で静かに歩いていた志歩は呆れながら言った。志歩は咲希とは対照的に何も巻かずに暖かそうなパーカーを着ていた。

「うーん、食べ物?スナック菓子1年分とか!」

「ふふ、サンタさん来てくれるといいね」

私の横で歩いていた穂波は鈴を転がすように笑っていた。穂波も志歩と同じく何も巻いていなかったが上にコートを羽織っていた。

最近は渋谷も寒暖差が激しくいつ路上ライブが出来るか分からない状態だった。今日出来るかな。といざ楽器を手に持つと指が冷たくて動かない。歌ってみようとしても出るのは白い息のみ。寒くて喉の調子も悪く高音も上手く出せないのだ。なにより冬場でもあり夕方は以前と比べ人も少なかった。万が一路上ライブができたとしても足を止めるお客さんは少ないのだろう。

私はふと足を止めた。私の目の前にはいつも路上ライブをしている場所があった。そこには今別のアーティストが路上ライブをしているが声も震えていて聞いている側も寒くなりそうだった。それでもイルミネーションの前で楽しそうに弾き語っているその姿は目の前を歩いている人達が釘付けになってしまうほど輝いていた。私もその内の1人で私よりも先に前を歩く3人も忘れてしまうほどだ。

「いっちゃん?大丈夫?」

「寒さでぼーっとしてる?」

「温かい飲み物でも飲む?」

咲希を初めとして3人はすぐに私の心配をしてくれた。本当に温かい幼なじみだ。

「大丈夫だよ。…最近路上ライブできなくて」

「確かに最近寒いもんね。」

志歩もアーティストの方を見てそう呟いた。私は「行こ」と歩を進めた。

今でも雪が降りそうな空。冬の空は不思議とほかの季節と違って静かで落ち着く空。そんな気がする。私はふと冬の空で歌詞が出来そうだなと歌詞癖も無意識についてきていた。

「1年ももう終わるけどせめてあと1回はらライブしたいね!」

咲希は飛びっきりの笑顔で私と目を合わせてくれた。

「そうだね。事務所に入ってから自由にライブ…っていうのももう厳しいだろうし」

「うん」

「あれっ?ねえねえ、皆上見て!」

咲希は1人明るく声を上げて黄昏に染まっている空を指さした。私は空を見る前に咲希が言いたい事がすぐに分かった。肌に何かが触れる感触。冷たくて、触れたらすぐに無くなっちゃいそうな雪。周りの人々も空を見上げて静かに声を上げていた。私達の横を通り過ぎる男の子は「パパ!」と嬉しそうに父親の元に走っていたり、少し先にいる犬は嬉しそうに飼い主の周りを走り回ったり先程の静かな空気とはもう真逆に今は多くの人々が渋谷の雪景色に感動をしていた。私も冬に雪が降るのは幼い頃からとても好きで。

「よく小さい頃雪合戦とか雪だるま作ってたなぁ…!」

咲希は手で雪を受け止めようと手を空にかざしては昔の事を思い出していた。

「そんな事あったね。」

「司先輩にも手伝ってもらってたな。」

「うん」

この景色を4人で見る時がまた来れるのはセカイとミクのおかげなんだろう。私はポケットから自分のスマートフォンを取り出しこの景色を動画におさめた。

「今度ミクに見せてあげよう」

「なんなら今見せてあげたいなぁ!」

「じゃあ呼ぶ?」

「うん!」

今年最後のレオニードには相応しい景色なのかもしれないこの冬をあともう少しだけ満喫しよう。

「ミク、見て」

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