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さの×すえありきの、こじま⇒すえです。
よろしくお願いします。
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桜の花びらが、頭の上をはらはらと舞っている。
掴めそうで掴めない。
こんなに綺麗で目の前に大きく存在しているのに、自分の手には入らない。
こじまは、ぼんやり立ち止まり頭上を眺めていた。
夜の街中。
道路の端に等間隔で並ぶ桜の木は、少し散り始めている。
桜はなぜこんなにも、心に訴えかけてくるのか。
「これが日本の心かぁ」
こじまは、口に出してから「何言うてるねん」と心の中で突っ込んだ。
しかし、1人で泣くには丁度良いかも知れない。
今までに知らない程の、感情だった。
「⋯始まる前に終わってもうたな⋯⋯⋯」
あんなに一緒に居たのに。
気付くのが遅かった。
「⋯でも、ええねん」
はら、と涙が流れる。
あいつで良かった。と、思った。
初めはわからなかった。
この感情が、恋だなんて知らなかった。
いつでも目で追っていたし、目が合えば嬉しくて笑ってしまった。
小さい背も、筋肉の付いた身体も。猫のような目も、流れる髪も。
子供みたいにじゃれてくるところも。
いじっぱりなところも。
全部全部好きだった。
「⋯好き⋯やった」
嘘だ。
今も、好きだ。
「あれ⋯」
それは突然だった。
今まで気づかなかったが、急に違和感を覚えた。
まさやとせーやが、2人で居る時の雰囲気が違う。
皆と居る時は、前と変わらないのに。
⋯⋯視線と空気。
知ってる。この感じ。
こじまも人並みに恋愛はしてきたし、まわりもそうだったのを見てきた。
ピンときた。
それと同時に、酷くショックだった。
自分の知らないところで、自分のしらないせーやがいる事。
今まで知らなかった自分の感情。
まさやの前だけで、どんな顔をするんだ?
そう思うと、止まらなかった。
あのせーやくんも、まさやの前では⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
いや、最低だ。
考えてはいけない。
しかし、妄想は止まらない。
あの目で、見上げられたら。
あの顔が快楽で歪んだら。
あの身体が、興奮で色付いたら。
「嫌や」
考えたくない。
自分の汚さに絶望する。
「まさや!!」
「なーにー?」
いつもの声。
こんな子供みたいな無邪気なやつに。
「仕事終わったら2人でカラオケいこーや!」
密室に、連れ出した。
「2人でカラオケとか久しぶりやなぁ」
まさやは、メニューを見ながら「なんか食べる?」と目線を落とした。
「うん⋯」
「あ、ポテチ盛り合わせとかあるで?色んな味入ってる」
「なあまさや」
「⋯うん?」
こじまのいつもと違う声色に、まさやは不思議そうに顔をあげた。
「せーやくんと付き合ってるやろ」
「⋯⋯⋯え⋯⋯」
耳元でそっと囁かれた言葉に、まさやは本当に不意をつかれた顔をしていた。
そりゃそうだろう。
「怒ってんちゃうで?」
「え⋯あ⋯、あの」
「まさや?」
「あ⋯、えと⋯⋯⋯うん⋯」
まさやは観念したように、頷いた。
「なんで⋯わかったん?」
気を付けてたのに、と困惑した顔で呟いた。
「大丈夫や。ほかは気付いてないやろ。誰にも言わんて」
「⋯⋯ほんま?」
こんなに焦った顔のまさやは初めて見た。それ程せーやの事が大切なのだろう。
少しホッとすると同時に、悔しい気持ちが溢れ出す。
「⋯大丈夫。2人ともいつもとかわらんよ。⋯わかったんは、おれはリーダーやからな!」
バカみたいな理由だが、あながち間違いでは無い。
「⋯なあまさや、おれ、お前もせーやくんもグループも大事やねん。」
「うん」
「せーやくんを悲しませたら許さへんし、グループを崩しても許さへんからな」
「うん」
まさやの目は真剣だ。
「外でデートすんな、ラブホも行くな、カメラのある所はどこでも気ぃ抜くな。隠しカメラがあるかもしらん所もや。
仕事やめるまで隠し通せ!ええな?おれはリーダーやから嫌な事も言う!」
こじまも真剣だ。
「⋯うん⋯ありがとう。嫌な事やないよ。お陰で気ぃ引き締まった」
お互い、顔を寄せあって頷いた。
しばらく、肩を寄せあって座っていた。
お互い、なにを言えば良いかわからない。
沈黙の中、カラオケのCMだけが大きな音で流れていた。
「⋯おれ、帰るわ」
「⋯うん」
こじまが立ち上がると、まさやは少し不安そうに返事した。
「おれらは何もかわらんで」
そう笑ってまさやの髪をくしゃくしゃにした。
まさやは、幾分ホッとしたように笑った。
「あれー?けんちゃん?」
「え」
濡れた視界のまま振り向くと、汗だくで駆け寄るまさかどがいた。
「カラオケ行ったんちゃうの?」
「やめた。てかなんやねんその汗」
「散歩してたら、暑なって」
はははと笑いながら、シャツで汗を拭った。
「あれ?涙でてんで?今日花粉キツイもんなぁ」
こいつほんまポヤやな⋯と、こじまは思った。
「なぁまっさん、今から部屋飲み付き合ってーや」
「えー?急やな。ええけど、どうしたん?」
「ちょっとおれのヤケ酒に付き合ってぇや」
「え!なにそれなにそれ。」
2人はやいやい言いながら、コンビニへ向かう。
掴めなかった桜は、足元へたくさん落ちていった。
それでも、桜は綺麗だし、この綺麗さは忘れない。
来年になっても、再来年になっても、きっと忘れない。
《おわり》