「おい 」
「……なんだ」
「お前がやったのか。この手錠」
「誰が好き好んでお前と引っつこうとするんだ。早く離れろ、蕁麻疹がでる」
「…不愉快だ((ボソ」
なにかの手違いか、俺と聖司は手錠で繋がれている。もはや手違いを通り越して悪ふざけだろう。お互い離れようとも手錠が邪魔だ。
「警察だろ何とかしろ」
「なんとかなったらとっくにしてる。お前こそ何とかなんないのか」
「…何も」
「つかえな」
「黙れ…殺すぞ!」
「できるものならな」
「…」
身動きが取れない。片手の身動きを支配されてれば意外となにも出来ないのだ。いくら足が使えようと、もう片方の手が使えようとも、できるのは口喧嘩。いや、殴りあうくらいならできるな…蹴り合いもできる。だが、体力の消耗があるだろう。この先何があるかも分からない状況で無闇に殴り合うこともできないことに気づいた。
あと何分。いや、あと何時間で離れられる。
「腹が減った…」
「何を言うかと思えばなんだ」
「うるせー、朝から食ってねーんだよ」
「まさか…盛る気じゃ、(引」
「何考えてんだ…育ちがいいと頭がお花畑なのか?」
愛想のない会話が続く中、既に30分は過ぎていた。
暇を持て余すにも、この部屋は何も無いし密室だ。正直どうやってここに入り、監視するのか、分からない。見たところカメラも警備やらセンサーやらも何も無いのだ。真っ白な壁だが、どうも目がチカチカするほど眩しい。だが、シングルベッドが1つ置かれており、ここで思いついた結果、
「俺は寝るぞ。なんかあったら起こせ 」
「……こんな状況でか?」
「……」
邪魔をするなと言わんばかりの圧をかけた。
「……面倒くさいやつめ。理解不能だ」
もはや考えることすら面倒くさくなってきたので、寝た。
〜1時間後〜
「六美六美六美六美六美六美六美六美六美…ブツブツ 」
一方は禁断症状が止まらなかった。
どこか落ち着きもなく、震えている。姿勢や作法などに口うるさい凶一郎ですら貧乏ゆすりをしていた。
隣ですやすやと眠る仏山聖司は疲れが溜まっていたのか、死んだように眠っている。
「… 」
今更ではあるがこいつになにかしてやった方がいいだろうか…。
聖司を見つめ、改めて思う。警察たるもの仕事はわんさかとあり、休む暇もない事が多いだろう。タフな男だが、奴も人間だ。疲れ知らずという程の馬鹿でもない。
手のマッサージでもしてやろうか。灰に教えてもらったことがあったのでそれなりに理解はしている方だ。
手錠で繋がれた手を持ち上げ、親指の腹でツボを押す。力加減は知らんが、押した時の聖司の反応があまりなかったので問題はないだろう。
暇つぶしにしかならんが、黙々とツボを押した。
(何やってんだ…?)
聖司は起きていた。ツボを押された瞬間から。
だが、ツボの効果からか、別に嫌な気はしないのだ。むしろ心地いい。
だが、こいつにやられているのが引っかかる。
「おい」
「!!」
つい声をかけてしまった。話すことなんてないのに。
「…いや、特に何も無いが………………………続けてくれ。別に悪い気とかはしないからな 」
本音もポロリとこぼれた。
「…分かった 」
手のひらをギュッギュッとリズム良く押されていく。
あいつが何を思ったかは知らないが押される手を俺も眺めるしかなかった。
今思えば、こいつとなんで付き合ってんだ…?女でもない、男で。別にとてもという程好きでもない。大体こいつから告白してきたんだ。俺じゃない。俺のどこに魅力を感じた…?
聞くか?
「…」
この空気を変えてくれる者はいない。ただ俺の手を揉まれている。
今は それだけだ。
「…はぁ」
「、?どうし…」
うなじにもう片方の手を伸ばし、自分のほうに引き寄せた。
そして触れ合う唇は熱を帯びていた。
「!?!?!?ッ」
「お前は聞きたい事がわんさかある。ちゃんと全部応えろよ」
普段顔を赤らめないやつの赤面を見るのは面白い。
さて、何から聞こう。
立場は一転。始めの互いの反抗的な態度はどこへやら。
後編に続く
コメント
7件
「「「「「「凶一郎の赤面」」」」」」
最高ですか何なんですかその頭の良さ髪の毛分けてください