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やがて花は世界に還る

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やがて花は世界に還る

3 - episode 3 化学の空に、柔らかな風を

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55

2025年06月09日

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Dr.STONE  夢小説

















パンの香ばしい匂いが、ほのかに立ち上る。椎名は1人、村の片隅でフランソワのパンを頬張っていた。

「んー、やっぱうめぇな……流石だよ、フランソワさん」


その時だった。


「ここ、空いてるかな?」


澄んだ声がして、ふと顔を上げれば、羽京が立っていた。

やわらかく微笑む彼に、椎名は少し驚いて背筋を伸ばした。


「あっ……ど、どうぞ! どうぞ!あたし1人なんで!」


椎名があわてて腰を浮かせて言うと、羽京はくすりと笑って、彼女の隣に腰を下ろす。


「ありがとう。パン、美味しいよね。あまり騒がしくない場所で食べるのが好きなんだ」


「は、はい……なんか、わかります……」


(……なんでこんなに落ち着くんだろ)


椎名は思った。

翠と千空のゼロ距離に振り回されっぱなしだった彼女にとって、

羽京の絶妙な“間”は、妙に心地良かった。


近すぎず、遠すぎず。

あたしが“あたし”のままでいられる、ちょうどいい距離。


羽京は、横目で彼女の手元を見た。


「それ、ナイフで切ってるの?器用だね」


「あ、コレ?ちょっと道具持ってて。…あたし、そういうの得意なんですよ。もの作ったり、組み立てたり」


「そうなんだ。君にぴったりの役割が、たくさんありそうだ」


その何気ない言葉に、椎名は気づかぬうちに顔をほころばせていた。


「……へへ、ありがとうございます」


(……なんか、変だな。敬語も自然に出るし、隣にいるのに落ち着いて話せるなんて)


不思議と、心が静かだった。


椎名はまだ知らなかった。

この日、静かに動き出した感情が――

後に、飛行機と同じくらい高く遠く、羽ばたくことになることを。

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