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“闇の印を授かりし青年”
“生き残った男の子”
彼ら二人は似たような肩書きを持ちながらも似ても似つかない存在だった。
狡猾さを持った”闇の印を授かりし青年”
勇敢さを持った”生き残った男の子”
自他ともに認める不仲でもどうやら未来は変わるらしい。
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︎ ︎︎︎︎︎ old story
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「今日から派遣としてやって来たお前の相棒がいる。」
「相棒……?」
闇祓い局に所属して数年、唐突に上司からそんなことを告げられた。相棒なんて考えたことも無かった。前まではロンが相棒的存在だったが彼は今WWWで働いている。過重労働に耐えられなかったらしい。
「まぁ、君も知っている人だ。」
「……は、はぁ…?」
「入ってきたまえ。」
こんこんっ、と上司が机を叩くと扉が開いて確かに見覚えのある人物が入って来た。
プラチナブロンドできっちり整えられた髪にキリッとした眉、アイスグレーの瞳に尖った顎、そして青白い肌。
昔と何ら変わりない姿で黒いスーツを身に纏っているこの人物は紛れもない、ドラコ・マルフォイだった。
「な?知っていただろう。」
「知っ…てますけど……」
「なんでマルフォイが……?」
「君にはドラコがピッタリだと思ったからな。」
「え……えぇ?」
どう足掻こうとも宿敵であるドラコ・マルフォイがすぐそこにいる。学生時代、この距離に立っていればきっと口喧嘩が勃発していた最中だっただろう。
「確かに君たちは学生時代犬猿の仲だったことはよく知っている。だが喧嘩するほど仲がいいとも言うだろう?」
「……局長、それはこじつけでは?」
「ということで今から君たちにはとある事件を解決してもらう。」
おいおい、話逸らしたぞ。
ちらり、とマルフォイに視線をやると特に何を見るわけでもなく目を伏せていた。
相変わらずのプラチナブロンドの髪に色白なのか体調不良なのか分からない青白い肌。尖った顎に小さい唇、アイスグレーの瞳を隠すように生えた長い睫毛・・・。
って、自分は何をこんなに見詰めているんだ。一瞥するつもりが彼に魅入ってしまっていた事に少し顔を熱くした。
「事件についてはこれだ。」
「無差別強姦・・・?」
「あぁ、記事を読めばすぐにわかるだろうが……、元死喰い人達が魔法使いや魔女を無差別に襲っているという事件だ。」
「ッ、これ…は……」
思わず再びマルフォイに目を向ける。相も変わらずアイスグレーの瞳を隠すように睫毛が伏せられており細かな表情を窺うことは出来なかった。ざっくりと読み取るなれば・・・、まるで被害にあったのかのような、その現場を見たかのような哀傷を含んだ表情だった。
「彼が、担当したいと言ったんだ。」
「えっ、マルフォイが!?」
「…ほら、ドラコ、理由を話してみなさい。」
「……私は…元、なんて言われるが死喰い人だ。そんな中私と同じ死喰い人達が事件を起こしているなんて、そんな事はあってはならないと思った。それこそ…私まで同じように見られてしまうからだ。全ては私のプライドのため。積上げて来たキャリアを崩さないためだ。その他に理由なんてない。自分のために手を挙げた迄だ。」
ようやく瞳を顕にしたと思えば冷酷な視線を虚空に向け淡々と話した。口調自体に懐かしさを感じるものの一人称が変わっていることに驚きを隠せなかったし、伸びたプラチナブロンドの髪も一層大人の雰囲気を醸し出していた。
「さて、そこでハリー。君の出番だ。」
「っえ、私?」
「ドラコが囮になるからその隙に犯人を捕まえる、という作戦をドラコ自身が建てた。」
「それは…、!あまりにも危険すぎる、!」
「いいんだ。ポッター。私は今死喰い人達からも世間からも恨まれている。私がしたことはどう償おうとも償いきれない。だからこそ私が囮となるのだ。」
いつもなら自分に対して嫌味をポンポン吐くような口が穏やかに、冷静に自分を宥めた。その時に胸がざわめいたのはまた別のお話だろう…そう言い聞かせては反論のため口を開いた。
「死喰い人達から恨まれているのなら尚更だ!最悪殺されてしまうかもしれないんだぞ!もっと自分の体を大切にしたらどうなんだ、!」
「……ポッター、頼む。私に全てを償わせてくれ。」
その時初めてマルフォイと目が合った。
アイスグレーの奥に哀しみを秘めた瞳で此方をじっと見詰めてはそう渇望した。
「…身に危険を感じたら私の名前を呼ぶこと。いいね?」
「……分かった。」
あの日から作戦を練りに練って当日になった。
作戦は至ってシンプルだが、マルフォイが囮として死喰い人が集まるバーに1人で入る、そしてマルフォイが誘拐される。(恐らく死喰い人達はマルフォイを見てすぐにでも行動に出るという予想だ)そこで彼らの隠れ家にマルフォイは連れて行かれるので、ポッターの名前を呼ぶ。ポッターの名前に呪いをかけておいたので呼べば彼の居場所が分かるという算段だ。
「焦っちゃダメだよ。」
「君が言うか?」
マルフォイは強がっているのかそれとも本当に自分を落ち着かせようとしているのか片眉を上げて自分に問い返した。分かってるよ、なんて半ば呆れながら返してはマルフォイは満足気にそれならいい。と前に向き直った。
作戦決行。
マルフォイはバーに入って行った。中で何が起こっているのかは局長が監視しているので恐らく後ほど情報が回ってくるはずだ。それよりもマルフォイがいつ自分の名前を呼ぶのかに精神を集中させた。
数時間が経った頃…
「ポッター……」
微かにマルフォイの声が聞こえた。
どくん、と心臓が大きく跳ねた様な気がしたのも束の間、 彼の居場所がサーモグラフィーのように浮かび上がっては居場所が露になる。
気を紛らわす為にも後輩たちを連れてその場所へ走り始めた。
ガンッ!!
扉を蹴り開ければ5人の男と真ん中にぐったりと倒れ込む男。5人の男は呆気なく後輩たちに捉えられ魔法省へ連れていかれた。自分は一目散に倒れ込む男の元へ駆け寄った。
「大丈夫か!?マルフォイ!!」
「ぁ…、ぽっ…た……」
か弱い声で自分の名前を呼んだ。
細く華奢な躯体には夥しい数の鬱血痕や打たれた痕、咬傷が沢山あった。長時間嬲られて居たのか瘢痕も幾つか見られた。
髪は汗と精液でベタベタだし顔は殴られたりしたのか腫れ上がったり血を流していたり、唇は切れた跡があった。腹も内出血やら鬱血痕やらが酷かったし腕や手首には縛られたような跡と切り付けられたのか擦過傷も多く見られた。
下半身に関しては目を背けたくなるほどだった。太腿に伝う精液や真っ赤に染る臀部、そして臀部の窄まりからも垂れる精液……。
床に目を落とせば血で出来た潦や彼らの精液で出来た泥濘が広がっていた。
マルフォイの身体にそっと触れるとびく、と身体が跳ねる。
「みないで…くれ…」
「マルフォイ……」
「いいから…見るな…」
マルフォイは両手で顔を覆った。噦りあげるような呼吸と啜り上げる音で泣いているのだとわかった。
「……」
ぐちゃぐちゃになった髪を撫でる。
淫らな姿で動くこともままならないマルフォイに不本意ながら興奮したし加虐心を覚えた。
「私は…償えたのだろうか……」
彼の言葉にハッとした。
彼はやたらと償いやらなんやらと口にする。
「償えてないよ。君がした事は償えることじゃない。」
「……そう、だよな。」
「私も償えないことをしたし。君とは仲間だと思ってるよ。」
「……君のは仕方がない犠牲だっただろう?」
「君だって家族と自分の命のために動いただけじゃないか。」
「……」
マルフォイが黙りこくった。
彼からすれば自分の命のために動いた事が恥ずべき過去になってしまっているのだろうと不思議と察する事が出来た。
歪な痣をなぞっては顔を隠したままのマルフォイに問うた。
「君さ…学生時代もこんな事されてたの?」
「ッ…何を、いきなり……!」
マルフォイはガバッ、と起き上がっては自分の手を弾いて顔を歪めた。きっと無理やり動いた痛みも含まれた表情なのだろう。
「今回の事件にしては古すぎる痣があってね。」
「っ、あまり人の体を見るな。」
「いやでも目に入るし。不可抗力だよ。」
「……それなら、少し話を聞いてくれないか?」
珍しくマルフォイが頼み事をしてきた。
あまりにも珍しい出来事だったし断る理由も何も無かったので自分は羽織っていた物をマルフォイに掛けては隣に腰を下ろした。
「…私が死喰い人になった時、彼らは私の家を住処にした。私は彼らと関わる事が嫌だったから部屋に閉じ篭っていたんだ。」
ゆっくりと口を開いたマルフォイから紡がれる言葉は震えていた。
「激務だったのか苛立った死喰い人達は私の部屋に押し入ってきて…それで……それで…」
マルフォイは掛けられた服をぎゅっと握りしめた。
何故か自分はマルフォイの肩を寄せていた。落ち着かせるように、慰撫するように…。
「……彼らのすることは酷かった。君が見た痣の通り殴る蹴るは当たり前、性行為を無理強いして半レイプのような行為だったよ。私が意識を飛ばしかけると私の頬を殴って意識を保たせようとするし、私の口に彼らの陰茎を突っ込んで窒息するほど腰を振られるし、腹が膨れるほど彼らの射精を体内に受けた。私の体に傷を付けて流れる血を飲んだり傷口に精子を塗りたくられたり…魔法で甚振ったり……」
逡巡した後、マルフォイの口から出た言葉たちは呼吸をするのも難しくなるほど悲惨なものだった。
学生の頃から闇の印を受け取り、同じ死喰い人達から酷い仕打ちを受け、自分の命のために無理な仕事を任され、ホグワーツからも追放され……。彼の居場所なんて無いに等しいものだった事を思い知らされた。かつては自分のことだけを考え平和だの安寧だの謳っていたがマルフォイにとっての平和とはなんだったのだろう、一人の時間なのか、両親と何も無く穏やかに幸せに暮らすことだったのか…。自分のことでは無いのに泣きたくなった。記憶を無くしてあげたくなった。自分で埋めれるのならそれが本望だった。
「…魔法省に戻ろう……」
「待って、君、そのままで戻れる?」
「魔法省のシャワーを借りる。」
「……シャワーに直行だからね?」
「分かっているさ。」
私達は姿あらわしで魔法省まで戻った。動くことが出来なかったマルフォイを急いでシャワー室まで運んだ。
「改めて見ると酷いな…」
「ポッター…頼み事がある。」
「何?できることならなんでもする。」
「…私を……抱いてくれないか?」
「……え?」
「私を、抱いて欲しいんだ。」
「彼らを…悲惨な過去を忘れ去りたい。」
「……」
「…すまない、君に言うことではなかったな。忘れてくれ。」
「本当に、いいの?私で…いいの?」
「私は…ポッターがいい……。」
細く長い指が頬に当たった。すり、と撫でられる。唇を指が撫でた。ゆっくりと、いやらしく。その手に重ねるように手を置いてはマルフォイが目を細める。ゆっくりと顔を近付けた。優しく軽い口付けを交わす。遊び程度の口付けを何度も交わした後に我慢できなくなった欲情を発散するかのようにマルフォイの唇に貪り付いた。細かく漏れる声と息に煽られながらも舌を絡めて口蓋をなぞった。ぴくりと跳ねる肩を抱いては歯列を舌でなぞって顔を離す。
「愛おしいよ、マルフォイ。」
「私もだ…君のことをもっと知りたい。」
「嫌味といい、誘い言葉といい…上手い言い回しだね?」
「御生憎様何方もポッター限定だ。」
「……君って最高。」
首元に顔を埋めては首筋に沿って口付けを落とした。何度も何度も口付けをして時折鬱血痕を残した。痣だらけの身体を優しく撫でながら臀部の窄まりに指を持っていく。
「…もう解かされているが?」
「そんなに煽らないでよ。優しく出来ない。」
「君に壊されたい。彼奴らを忘れるほどに。」
「私のことしか考えられなくなってしまうかもね?」
「…本望だ。」
マルフォイを抱えあげては窄まりに自身のを仕舞った。すぐに収まったのでどれだけやられていたんだとまた胸が痛むのを感じた。マルフォイの腕が首元に回った。ぎゅ、と抱きしめ離れることを拒むかのように絡み付いた。
初めは優しく揺らした。それだけで漏れる甘い声に理性を保つのに必死だった。
「ぽった……、もっと、ついて…ほしい、」
「…私の理性を壊すのが上手だね。」
「ぽったーの…すべてが……ほしいんだ。」
「なら仕切り直そう。ほら、壁に手をついて?」
マルフォイを降ろしては壁に手を付かせお尻を此方に曝け出すような体勢にさせた。
細い腰を砕けぬよう優しく持っては奥まで一突きしてやった。
「あ゙っ~~~~!?!?」
勢いよく腰を反らせ視界を点滅させるマルフォイの姿に口角が上がる。
回数も分からなくなるくらい奥を突いてマルフォイも何度も果てた頃、彼が口を開いた。
「君のを…ポッターのを…私にくれ。」
「…身体、大丈夫?」
「君のなら大丈夫だ、彼奴らの上書きをして欲しい。」
「…私しか考えないでね。」
「私はずっと君しか考えていないが?」
「もう…君には勝てないなぁ。」
ちゅ、と優しく口付けをすればその優しさを裏切るかのように激しく腰を動かした。そろそろ果てそうなのか腰の疼きが酷くなった頃、彼の奥に自身のを押付けそのまま果てた。
「マルフォイ、!大丈夫!?」
「あ、あぁ…私は平気だ。君のが此処にある…」
力無く笑ってはお腹を擦る。
痣だらけのお腹に視線を落としては心が蟠った。
「随分と遅かったな、心配したぞ、!」
「すみません局長。彼のメンタルケアを少し……」
「…酷い傷だな。薬はある、ハリー処置をしてやれ。」
「分かりました。マルフォイ、おいで。」
「……。」
局長や魔法省の人たちを前にすると口数を減らし従順な役目に徹するマルフォイを心配に思いながらもマルフォイの前を歩き別室に誘導した。
「ここに座って。」
「服、脱いだ方がいいか?」
「……そうだね、脱いでもらおうか。」
整った綺麗な指が釦を1つずつ外して行く。
段々と露になる身体に釘付けになっていればマルフォイが口を挟んだ。
「そんなに眺めているのなら薬の準備でもすればどうだ?」
「あっ…と……ごめん。」
確かにマルフォイの身体を見過ぎていたかもな…なんて彼の顔を窺えば耳を赤く染めていた。
勘違いをしないように必死に薬を探した。無事に見つかれば薬を手に取りだした。
「ほら、マルフォイ、これ。」
「塗ってくれないのか?」
「え……?」
「ほら、塗ってくれ。どうも身体が痛むんだ。」
マルフォイははだけたシャツのままソファに寝転がった。両腕を開き自分を待っているかのように見詰めた。
「…染みたら、言ってね。」
「わかった。」
彼についた痣やら 鬱血痕、傷やらに薬を塗って行った。魔法とは偉大なものだ、塗れば直ぐに身体に染み込み傷をなかったように消し去る。顔に残った瘢痕も首筋に残った鬱血痕も全て消し去った。自分が付けたものも…何もかも。下半身は彼が塗る、と言ったので見ないように後ろを向いた。
結局は彼が忘れ去る為の行為だった。そこに愛だのなんだのは無かった。ただ彼のために、身近な私が駆出されただけだ。それに期待して彼を抱いたのは確かだ。調子に乗った自分も自分だった、彼が自分に好意を持っていると勝手に勘違いして…自分は……。
「終わったぞ。」
彼の声に現実に引き戻される。
「…戻ろうか。」
彼の方に振り向くことなくそういえば出口に向かった。
「…ポッター、」
自分の名前を呼ぶ声がした。また勘違いしそうになる自分に頭を抱えては振り向いた。
衣服も整えず上半身を曝け出したままのマルフォイがそこに座っていた。
「…君が付けてくれた”痕”も消えてしまった。」
「…良いよ、私と君はそんな関係じゃない。」
「私は…君の痕が欲しかったんだが……」
あぁ…もう…我慢出来ないかもしれない。
マルフォイを乱暴に押し倒しては無理矢理唇を奪った。口蓋をなぞっては跳ねる体を押さえ付ける。こんなの…こんなのレイプと変わりないじゃないか……、吹っ飛んだと思われた理性が返ってきたのか頭の中で語り掛けてきた。
我に返った自分はそっとマルフォイから口を離した。
「…」
マルフォイは息を荒らげ此方を見上げていた。
「ごめん、マルフォイ…私……」
「いや、構わない」
「え?」
「君のキスが…好きなんだ。」
「……」
「もう一度…乱暴にしてくれないか、?」
マルフォイが上目がちにそう問うてきた。
勘違いしてしまう自分を弄んでいるのか…?そう考えてしまうほど彼は蠱惑的で鄙陋された。
「もう…止まれないからね。」
「止まらなくていい。」
再び酷く愛し合った。もう夜が更けているというのにその部屋からは甘い声と言葉が聞こえ続けた。
「…ポッター、私は、君が…」
「待ってマルフォイ、私から言わせて欲しい。」
「…君から聞きたい。」
「私は…マルフォイの事が好きだ。大好きだ。」
「…私もだ。ポッターの事を好いている。」
「私と付き合ってほしい……」
「私も君の隣に立っていたい。」
「…信じられないよ、君が私だけの君になってくれるだなんて…」
「ポッターが随分と消極的なのには笑いかけたがな。」
「…ねぇ、折角ならファーストネームで呼んでよ。」
「えっ…、と……」
「ね?ドラコ。」
「…ハリー…。」
「……可愛い、すっごく可愛いよドラコ!」
「なっ…なんなんだ君は…」
「君が可愛いんだよ…」
「もう、わかったから…」
私はドラコに抱き着いた。二度と離すまいと隙間なく抱き寄せた。ドラコもそれに答えるかのように背中に手を回した。
「君のこの印にも嫉妬してしまいそうだ。」
左手に刻まれた闇の印をなぞった。
「それなら私は君の額の傷に嫉妬してしまうだろうな。」
ドラコが私の前髪を分けた。久々に顕にされた額の傷に眉をしかめる彼に思わず笑いがこぼれた。
「……何を笑ってるんだ。」
「君が可愛らしくてね。」
「…私も一応男なのだが。」
「男だろうと可愛らしい子はいるよ。私の目の前にね。」
ドラコが言葉を詰まらせては耳に紅を落としながら顔を背けた。
「ハリー、ドラコ。君たちに仕事だ。」
「何なりと。」
「ちょっとドラコ、それじゃあ忠犬と変わりないじゃないか、!」
「これくらい忠実な方が私達もやりやすいんだがな…なぁ?ハリー。」
「ゔっ……」
「なんだ?君はいつも悪態をついているのか?」
「そうなんだ、ドラコ。なんとか言ってやってくれないか?」
「はっ、みっともない。それでも私の相棒か?」
「…覚えてろよマルフォイ……!」
あの事件以降ドラコの口数が少し増えたような気がした。他人の前ではファミリーネームで呼び合うという約束だが正直言うと歯痒くて堪らない。私のドラコだと主張したいし何より局長だけが皆の前でドラコをファーストネームで呼んでいることに妬みを隠せなかった。
遂に堪忍袋の緒が切れかけた私は部屋と言うには小さいようなパントリーと言うには大きいような、そんな空間にドラコを押し入れて施錠をし、2人きりの空間を作った。
「私もドラコをファーストネームで呼びたいんだけど…」
「…?呼んでいるだろう?」
「違うよ。皆の前でも呼びたいんだ。」
「……駄目だ。」
「…どうして?」
「私はこの職に色恋沙汰を持ち込む気は無い。」
「……私は寂しいよ、このままだといつか局長に手が出てしまいそうだ。」
「…自分の感情くらい抑えろ。」
「せめて一緒にいる時間増やさない?」
「……と言うのは?仮に2人で物件を買ったとて帰る時間も無いだろう?」
「魔法省に使われてない部屋があるんだ。」
「コンパートメントみたいなものだけどね。」
「…ほう?それを借りる許可が必要だな。」
「嘘、許可さえ取れたら一緒に住んでくれるの?」
「断る理由もない。私も君と居たいとは思っているし。」
「はぁ、君ってほんと私を狂わせる天才だよね。」
「早く許可が降りたという報告が聞けるのを待っておくよ。」
「任せて。」
局長には悪いが半分脅してコンパートメントを手に入れた。
・・・まぁ、ドラコと過ごすためなら仕方ないよね(♪)
このことがバレたらドラコはきっと1週間口を聞かないと思う。ドラコは事件が起こったあの日から自分絡みの問題を嫌っていたからだ。人に迷惑をかけたくない、後処理が面倒。そういった理由でしか無かったが私がよくドラコのためにと思って行動にしたことが全て空回ってドラコに恒常的に怒られていた。そして次怒らせたら1週間話さないし君との仕事も受けないしえっちもしない。と断言されてしまった。あの頃から伸びたプラチナブロンドの髪を私の手で乱すというあの至高の時間が1週間も味わえないのは酷でしかなかった。だからこそ差し出がましい行動は控え、比較的丸くなったと自分でも思う。局長からは案の定心配された。ドラコが丸めたのか?なんてブツブツ言いながら私が解決させた事件の書類を纏めていた。貼り付けた笑顔で書類を纏め終えるのを見つつも頭の中は気安くドラコを呼ぶなと言う怒りでいっぱいだった。そんな理由で局長を殴り付けたらきっと無職になるだろうしドラコから二度と関わってくるなと言われ兼ねないのでグッと堪える代わりに握り拳を作ったのはきっと誰にもバレていない。
「まーた局長が君の名前を気安く呼んでたよ……」
「ならその分今私の名前を呼べばいいだろう?」
「…ドラコ。」
「何だ?」
「ドーラコー」
「…あぁ。」
「ドーラーコー」
「気が済むまで呼んでくれ。」
「ドーラコッ!」
「ドラコ〜!」
「ドぉラぁコぉ〜」
「ドラコぉ〜」
反応を示さなくなって面白く無くなった私は唇を彼の耳元に持って行って低い声で囁いた。
「ドラコ。」
「っ、!」
ぴく、と肩を跳ねさせては耳を塞いで私と距離を置いた。
「なんで離れるのさ。」
「いきなりは…駄目だ。」
「私も人間なんだよ?」
「…何が言いたい。」
「君の願望ばかりを叶えられないってことだよ。」
にぃ、と口角を上げてはドラコに顔を近付けた。
目を見開いては顎を引く彼の顔を挟んでは口を重ねた。
「ッ、まて、まて、ぽった、あ…」
「何?ハリーじゃないの?」
「はりー、待ってくれ、」
「……なぁに?」
「…明日は仕事なんだ。」
「……聞いてないよ?」
コンパートメントで共に過ごすことになってからスケジュール共有は当たり前でカレンダーに記入するのがルールだった。カレンダーには緑と赤で件名と何時から何時までという記入がびっしり書いてあるが明日の欄にドラコは記入をしていなかった。
「…極秘……なんだ。」
「極秘?何をそんな…。」
「君にも言ってはいけない。局長と私だけの秘密なんだ。」
まただ、また局長の存在が出てきた。
そろそろ本当に局長を殺めてしまいそうになる。
「その極秘を漏らした今、言ってもらう他ないけど?」
「……ダメだ、ハリー、聞いてはいけない。」
「…じゃあいつ帰ってくるかくらいは聞かせてもらおうか。」
「不明…だ。その仕事がいつ終わるかも分からない。手古摺れば長引くだろうし上手く行けばすぐに終わる。」
「君ならすぐ終わらせられるよね。」
「…分からない。」
いつもは自信ありげに勿論だ、なんて鼻を鳴らす彼の姿はそこには無かった。怯えた様子で目を伏せてはそのまま顔を背けた。
「…そう、まぁ…極秘なら仕方が無いよね。行っておいで。すぐに帰って来てよ?」
「……善処する。」
そう言ってドラコはベットに潜り込んだ。布団からはみ出た肩は微かに震えていた。
そんなに怯える何かなのか…?
私は無意識にトランクケースから透明マントを引っ張り出していた。
彼が任務だと言ったあの時から寝ることなんて出来なかった。いつ起きるのかも分からない現状彼を見張る他なかったのだ。
彼は鳩尾辺りを擦りながら局長の居る部屋をノックした。ガチャ、と開いた扉から滑り込むように侵入した。扉が開いてからというもの、彼はいつも通り落ち着いた雰囲気で局長と面晤した。部屋の隅でじっと息を潜めた。
「最近、調子はどうだ?」
「…変わりません。」
「ハリーとはどうだ?」
「……変わりません。」
「ちゃんと約束は守っているんだろうな?」
「…………はい。」
「偉いじゃないか、ドラコ。よくやった。」
局長がドラコの頭を優しく撫でた。
触れるな、私のドラコに。
「君が元死喰い人だということを通すのは大変だったよ。」
「…分かっています。」
「分かっているのならもっと私に感謝の意を示してもらわないとね。」
「…感謝の…意を……?」
「そうだ。ほら、私の膝に座ってみなさい。」
局長が革製の1人用ソファに偉そうに座った。ドラコは戸惑いながらも局長の膝に向かい合って座った。
「いつも思うんだが…ドラコっていい身体を持っているよな。」
「……ありがとう…ございます。」
局長がドラコの体を厭らしく触った。
腰辺りを擦るように手を滑らせた。
「っ…局長……、」
「なんだ?私に感謝をするんだろう?」
「…、はい、」
「ほら、私に口を付けてみなさい。」
局長がにやりと口角を上げた。
ドラコは目を大きく開け、瞳を泳がせた。
私ももう限界を迎えかけていた。
ドラコの白く細長い指が局長の頬に添えられる。そのままドラコが局長と顔を近付け……
させるわけが無い。
「縛れ!」
「っ、ポッター!?」
「…ドラコ、!嵌めたな!?」
「いえっ、私は……!」
「私が勝手に後をつけてきたんだ。局長、これはどういうことでしょうか?」
「っ……」
「話せないのなら無闇矢鱈にドラコに手を出すのを辞めて頂きたい所存です。」
「ハリー…お前……」
「ドラコ!早く上の人を呼んできてくれ。」
「あ、あぁ、分かった…」
ドラコは視線を右往左往させながらも部屋を出て行った。数分後には上の者が数名部屋に入ってきた。私は怒りのまま部下と不純行為を行おうとしていた事を話した。無論、後を着けた私も怒られはしたが局長よりはマシだったし、何よりドラコの薄い可愛らしい唇を守れたことに安堵を覚えた。
局長はそのまま諭旨解雇が決定した。
局長の座を受け継いだのは誰でもない、この私だった。ドラコを秘書に迎え入れ常に私の隣に居るようにした。
「ドラコ。」
「なんだ?ハリー。」
「さっき私と話してた部下…君のことをいやらしい目で見てたよね。」
「…たしかに少し気になった。」
「君の髪の毛と言い体つきと言い…本当に心配になる。」
「私の傍にはいつも君がいる。私に不安など一切ない。」
「もう…本当に君は狡いなぁ。」
「そうさせたのは誰でもないハリーだからな。」
いつもの自信ありげな表情で口端を上げながら私を見つめるアイスグレーの瞳には不安も恐れも哀しみも何も無く、ただただ私とのこの先の希望で輝いていた。
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